俺の許嫁は幼女!?

白狼

47話 花火がキレイに見えました

 花火の色とりどりの火花が飛び散った後、数秒置いて体をも揺らすような激しい音が轟く。
 俺は、静香を下ろして息を整える。


「はぁはぁ、なんとか間に合ったな。」
「………これが……花火………」
「はぁはぁ、キレイ……だね……」


 静香は、完全に花火に見とれていた。目をキラキラとさせて花火だけに夢中になってる。


「陽一君、大丈夫?」


 優奈は、俺の額についてる汗をハンカチで拭き取る。優奈も汗をかいているというのに自分のことはそっちのけで俺を優先してくれるなんてな。優奈らしいな。
 俺も持ってきたハンカチを取り出し優奈の額についてる汗を拭き取る。


「よ、陽一君!?」
「優奈、毎回言ってるが俺よりもまず自分のことをどうにかしろよ。汗、いっぱいかいるぞ?」
「う、うぅ……ありがとう、陽一君。でも、陽一君だっていっぱい汗かいてるよ。それに陽一君、静香ちゃんをおぶってきたから疲れてるかと思って。」
「それを言うなら優奈だって慣れない浴衣姿で走ったんだから疲れてんだろ?」
「う、ううん、私は、別に大丈夫だよ。」
「俺も別に大丈夫だよ。」
「………」
「………」


 俺と優奈は、お互い相手を優先してしまって話がどうも終わりが見えない。


「………ぷっ」
「………ぷっ」
「「あはは」」


 すると俺たちは、同時に笑いだした。何か面白いことがあったわけじゃないがつい笑ってしまったのだ。


「あはは、なんでだろう、笑いが止まらないや。」
「私も止まらないよ。ふふ……」
「…………あんたたち、いきなりどうしたのよ、急に笑い出して……」
「わっ!?」
「きゃっ!?」


 今さっきまで花火に夢中になっていた静香が急にこっちに話しかけてきた。


「ど、どうした、静香!?」
「どうしたって……それはこっちのセリフなんですけど?急に笑いだしてなんかあったの?」
「え?あ、いや、別に何も無いよ。」
「ふぅ〜ん……まぁ、別にいいけど……」
「それよりも静香、花火はどうだ?」
「キレイ……だと思うわ……」
「そりゃよかったな。あと30分くらいは続くと思うからゆっくりと見てみな。」
「うん、そうするつもり……あんたたちは、見ないの?」


 静香は、どことなく寂しそうに尋ねてきた。こんなしおらしい静香は、初めて見るな。
 俺は、そんな静香にニコッと笑って応えた。



「見るよ。ほら、あそこにベンチがあるからみんなで一緒に見ようぜ。」
「う、うん!行こっ!」


 静香は、俺の手を引っ張りベンチへと誘導する。その時の笑顔は歳相応の無邪気で可愛らしい笑顔だった。
 優奈もその後についてきて俺を真ん中にして左に静香、右に優奈というポジションで座った。
 そして、俺たちは、キラキラと輝く花火を見て楽しむ。正直に言うと俺は、今まで花火なんて興味がなかった。キレイだとか思ったことがなかった。祭りに来るのは花火が見たいからではなくみんなとバカなことをしてはしゃぎたかったからだ。
 だが、今日初めてしっかりと花火を見た。今までただ色とりどりな明るい火花を飛び散らかしとてつもない大きな爆発音をたてるだけのものだと思っていた花火が今日初めてキレイだと思えた。


「キレイだな……」
「………ええ、そうね。初めて見たけど……こんなにキレイなものを見たのはいつぶりかしら?」
「陽一君、毎年花火大会に一緒に来てるよね?どうしたの、急に?」
「い、いや、ちょっとなんだか今年だけはいつもよりもキレイに見えてな。」
「そうなんだ……それって静香ちゃんがいるから?」
「ははっ、まさか。静香がいるからって別に花火がキレイに見えるわけないだろ。」
「じゃあ、なんでなんだろうね?」
「ど、どうしたんだ、優奈?もしかして怒ってるのか?」
「どうしてそう思うの?」
「い、いや、優奈が怒ってる時って大体分かるんだけど……怒ってないのか?」
「うん!別に怒ってないよ!」


 俺は、明らかに怒ってるように見えるんだが……本人が違うって言ってるから別にいいか。
 そして、花火を見ながら話をしていると時間はあっという間に過ぎてラストの花火が上がり花火大会は幕を閉じた。


「いやぁ〜、最後の花火はすごかったな。」
「うん!すっごいおっきかったわ!」
「だね!それに音もすごい大きかったから私、びっくりしちゃったよ。」
「ははっ、確かに優奈、最後ビクって体が動いてたな。」
「み、見てたの!?は、恥ずかしいから忘れて!」
「ははっ、どうしようかな?」
「も、もう!陽一君の意地悪!」


 優奈は、ポコポコと俺の胸を軽く殴ってくる。まぁ、全く痛くないので止めることはしない。と言うよりもそんなことを真っ赤な顔でしている優奈が可愛いので止めるのはもったいない。


「………そろそろみんなのところに行かないとな。」
「あっ、そうだったね。また、みんなを心配させちゃうかも。」
「ああ……ってか麻美に絶対に何か言われそうだ。」
「た、確かに麻美ちゃんなら絶対に何か言ってくるね。」
「そ、その時は助けてくれよ!?」
「ふふっ、どうしようかな?さっき私、意地悪されたからな〜。」
「うっ、ご、ごめん!さっきのことは謝るから!」
「ふふっ、仕方ないな〜。今回だけ特別だからね?」
「ありがとう!優奈!」


 それから俺たちは、太輔たちと約束した場所に向かった。
 その最中、優奈から袖を引っ張られた。


「どうした、優奈?まだ、今さっきのこと怒ってるのか?」
「ううん、そうじゃないよ。……約束、覚えてるかなって?」
「約束?」
「祭りのあとに一緒に散歩しようって言ったよね?覚えてない?」
「あ、ああ、確かに言ったな!忘れてたわ。」
「も、もう!し、しっかりしてよね?た、楽しみにしてるんだから……」
「………あ〜、でも、静香が一緒だけどいいか?」
「っ!そ、そうだった……あ!それなら一緒に静香ちゃんを送ってから散歩しない?」
「俺は、別にいいけど………七海さんとか心配しない?」
「多分大丈夫だと思うけど……一応連絡取ってみるね。」
「ああ。」


 そう言えば静香ってどうやって送っていけばいいんだろうか?俺の家から静香の家まで結構な距離あるぞ?
 俺は、優奈が七海さんに連絡をとっている間に静香に聞く。


「静香、今日ってどうやって帰るんだ?お迎えとか来るのか?それとも俺が連れて行ってあげた方がいいのか?」
「確かあなたの家まで迎えが来るはずよ。」
「そうなのか。なら、俺は、静香を俺ん家まで連れて行ってあげればいいんだな。」


 まっ、それなら優奈と散歩できる時間も出来そうだし良かった。
 優奈も七海さんに連絡が取れたのか俺の方を向いた。


「お母さんもお父さんも陽一君だったらOKだって。」
「俺だったらって。まぁ、いいや。なら、みんなを送って帰った後に少し散歩しようか。」
「うん!楽しみ!」


 その後、みんなと合流した。麻美にはめちゃくちゃ言われてしまったが優奈が仲裁に入ってくれたから助かった。
 それからみんなと別れて静香を俺の家まで送る。するともうお迎えは来ていたようで外で待機していた車に静香は乗る。


「じゃ、じゃあね。今日は……その……楽しかったわ。またね……」
「おう!またな!」
「じゃあね、静香ちゃん!」


 俺たちは、静香に別れを告げると車が動いだした。
 それから俺は、家帰らず約束通り優奈と散歩する。

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