僕は過ちを正すため、過去に飛んだ。
EP31 いざ、戦場へ
真実とは虚言でしょうか?俺が勝手に見ていた妄言なのでしょうか。
願わくば、真実はそれを対象とした実現する事柄であってほしい。俺が勝手に望んだ妄言、虚言ではあってほしくない。
信じています。悪魔ドレカヴァク様。
あなたに縋り、額を地面に擦り付け擦り切れても信仰してまいります。
でも、一つだけ。
“俺はあなたが大嫌いです”
~5月27日~
隼人は吹雪とも仁とも接触も出来ないままこの日を迎えた。日々を悶々(もんもん)と過ごし、記憶を失っている吹雪になんと話すべきかを悩み続けていた。
「このままではまずい」と彼の心がそう叫ぶ。
そんな事は分かっている。分かっているんだ。
当然、このままでは解決されることもなくあの【悲劇】は繰り返されてしまう。そんな事態だけはなんとしても彼が阻止しなくてはならない。
行くしか無い。
隼人は臆病だ。心の殻がいつでも厚すぎるのだ。
それゆえ、物事が進行してしまうのを恐れてしまう。いま、自分が先に進んでいることが正しいのか、間違っていないか、他の道はないだろうかなど。
たくさんの逃げ道を用意して今まで彼は生き続けた。
しかし、そんな臆病で怠惰な心の殻は今、破られようとしている。
「俺に、逃げ道は無いから。俺にしか、出来ないことだから。」
隼人は自分に言い聞かせるようにつぶやく。
彼は自分の謝った過去を修正しなくてはならない。
早希のため、小鳥遊のため、附馬や従業員達のため、吹雪のため。
そして、俺が見捨てたすべての過ちにために。
「この謝った過去を正すため、俺は過去に飛ばされたのだから」
その思いが隼人の心を突き動かす。こんなところで屈服などしていられない。
「行こう。東京の東山財閥本部へ」
そう決めてからの行動は早かった。
まず、隼人は学校に電話をし、再び長期の休学を報告した。今の彼にとって、単位が取れなくて留年するなど、それほど気にすることではなかった。というよりも、そんな事を考える余裕がない。
そして、そのまま新幹線で、東京に向けて出発した。その際、とある作戦を達成させるために遊園地の貸し切りチケットを買った。
~新幹線の車内にて~
隼人は新幹線の中で、これから先の事を考える。
隼人の望む最高のシナリオとしては、吹雪と仁の二人共に接触出来すること。そして、仁にいくつかの質問をする事が出来るというものだ。
実はその反応次第でこの事件の真犯人がいるのかを隼人は決め打つつもりだった。
そもそも、東山財閥にいる【仁】という男の名字が“桐谷”でないと、色々崩壊してしまうが、ここはかけるしか無いのだ。
何より、隼人は落ち着いて考えると仁が犯人であるという可能性は低いのではないかと思い始めていた。
もし、別に黒幕がいるとして、隼人には犯人であるかもしれない仁ではない別の存在にも心当たりがあった。
それは、仁にだけ罪をなすりつけ同時期にリストラされたであろう人物だ。
その人物とは
「風魔 浩二」
もはや、コイツしか無い。
もっとも、風魔浩二が直接やるというよりは、洗脳に近いことを行い、第三者に犯行を行わせるという感じだろうと予想した。
この話は完全に隼人の中での憶測でしか無いが風魔浩二この、黒幕説は一応理由が存在していた。
昨日、彼の父に【風魔浩二について】知っていることをすべて聞いた際、その中に風魔が東山財閥の副社長になったのはここ最近のことであることがわかったのである。
父はそれ以前のことについてはよく知らないと答えていて、詳細はあまりわからないが、少なくとも隼人の父が目をつけるほど社会的に目立っていなかったことだけがわかる。
この空白の期間に、グランドペアレンツケアで目立たずに働いていた可能性も充分ある。
事実、この会社はパワハラ事件が起きて初めてメディアに取り上げられた会社のため知名度も、もともとはそこまで高くなかったことが伺えるのだ。
仁が犯人ではないと考えたこの考察を視野に入れた理由として、彼が犯人だとした時にどうしても納得のいかない点が2つあるからだった。
それは、仁自体が東山財閥の社長を恨む動機が見つからないということだ。しかも、パワハラでクビになっている仁を雇ってくれた東山財閥に恩を感じていてもおかしくない。
【彼のマインドコントロールもバッチリだし】
そもそも、浩二のこの発言を聞いた時点でこの可能性が浮かび上がっていたはずなのである。この“彼”という存在が仁であるとは限らないからだ。
そして、そうこうしているうちに新幹線は戦場となる“東京”に着いた。
「よし、行くぞ!」
隼人は一歩を進める。
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