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僕は過ちを正すため、過去に飛んだ。

黒山羊

EP28 狂ってしまった逆回りの時計

浩二たちがいなくなって30分ほど立つと吹雪が乗ってきたヘリコプターや、銃声を聞きつけた警察などが屋上に集まってきた。そして、このホテルの屋上への階段は完全に封鎖された。

 事情徴収を受けた隼人は浩二たちのことを話したが現場には浩二たちの姿や拳銃どころか発泡されたはずの銃弾さえ見つからなかったため、まともには聞いてもらえなかった。
 後日、風魔 浩二に直接話を聞くということでこの場は収まった。

 そして吹雪のヘリコプターによって隼人達はそれぞれの自宅まで送還された。

 なぜ、浩二たちや拳銃の姿が消えたのか。隼人には想像なんて出来なかった。この不思議な謎が隼人の頭の中をグルグルと回る。また、最後の浩二の豹変は異常なものだった。まるで浩二ではない誰かが彼に乗り移ったのだとさえ思った程だ。
 謎なことはまだある。むしろ、こっちのほうが隼人にとっては重要だった。

「なんで、俺は秋田に来たんだ。あと、なんでこいつ(隼人)と一緒にヘリに乗んなきゃいけないんだよ、胸糞悪いな。」

 吹雪はイライラしながら言う。運転手は反応に困っているようだ。

 そう、吹雪のここでの出来事の記憶が綺麗さっぱりなくなったのだ。

~~その後大阪P,M9時にて~~

「はぁ、はぁ」

 隼人は大阪に着くとヘリコプターの運転手さんにお礼を言って不機嫌な吹雪に一瞥するとそのままその場を駆け足で去る。西峰総合病院へ急ぐためだ。

 病院についた隼人は裏口から中に入らせてもらう。そのまま看護婦さんに案内されて3階の“小鳥遊 修斗様”と書いてある部屋へ。
 中では担当医らしき人と院長の二人が神妙な面持ちで小鳥遊を見ていた。

「隼人くん。来てくれたか」

「はい。遅くなってしまい申し訳ありません。修斗くんの容態はどうでしょうか?」

 隼人は手短に挨拶するとすぐに本題に入る。

「まだ心臓は鼓動しているようだが、すごく弱々しくゆっくりだ。正直、このまま止まってもおかしくない。外傷も激しいがそれ以上に臓器へのダメージも大きい。あと、怪我の状態や特徴から、原因はパンチとか蹴り等による暴力行為にものだと思う」

 院長のその言葉を聞いた隼人はそのまま小鳥遊を見る。
 彼の顔は腫れ上がっており、もとの彼の顔の原型をとどめていなかった。そして、腕もアザだらけで、顔だけでなく体全体にも受けているようだった。

「修斗くん…」

 思わず、そんな弱々しい声が出てしまう隼人。

「君はやり返さなかったんだよね。俺には分かるよ。」

 きっと、改心した小鳥遊をもとから恨みを持っていた誰かが襲ったんだろう。小鳥遊は体格からも分かるように喧嘩に強いため、ちょっとやそこらではやられはしない。だからきっと、小鳥遊自体は反撃しなかったのだと思った。

 隼人はそのまま小鳥遊の近くで朝までいることにした。彼が死という峠を超えた先で彼を待っていたいからだ。
 せっかく、長かった因縁がなくなりこれからどんどん仲良くなっていくというのにこれでは無念すぎる。

「修斗くん。頑張ってくれ。」

 精一杯、彼の帰還を願う。隼人に出来るのはそれくらいだ。

 院長はその場を離れてこの場には担当医と隼人だけになる。
 しかし、時間は残酷なものでどんどん流れていく。2時間ほど経っていても体感としては30分程だ。

~~P,M3時~~

 さすがの隼人も少しだけ眠気という悪魔が近寄っていたその時だった。

「…来てくれてありがとう」

 そんな消えそうなほど小さな声が隼人の鼓膜を貫くように鮮明に聞こえた。隼人は声の聞こえた小鳥遊の顔を見る。

「しゅ、修斗くん?」

 隼人は彼の名前を呼ぶ、

「…」

 しかし、彼は返事をするわけでもなくその場で固まっていた。しかし、目からは一筋の涙が流れていた。
 隼人はナースコールを全力でプッシュする。その場にいた担当医はすぐに脈を測る。

 しかし、担当医は隼人を向き焦った顔をすると
 ピーピーという残酷な音がその場に流れたのだった。心電図は彼が峠を超えられなかったことを残酷なまでに大きな音で知らせる。

 担当医は急いで心臓マッサージを始め、ナースは電気ショックの準備。
 ばん!という大きな音ともに小鳥遊のからだは宙に浮く。心臓マッサージにこれの動作を数回繰り返すが心電図は止まることがなかった。

 検討してしばらくたった。担当医は悔しそうな顔をしながら隼人に伝える。

「すまない…」

 たった、これだけの言葉だった。

 担当医とナースはそのまま器具を片付け始める。隼人はクラクラとしながらも小鳥遊の近くにいく。そして、今一度彼の顔を見る。
 拭き取られているが涙の跡がまだ見えるようだった。

 きっと、小鳥遊は峠を超えることが出来たのだろう。しかし、超えたところで力尽きてしまったのだ。彼が隼人と担当医に向けていった【来てくれてありがとう】は幻聴なんかじゃなく本当に彼が言った言葉なのだ。

 隼人はその場で小鳥遊に見られないように泣いた。
 【人の世に失敗ちゅうは、ありゃせんぞってね】という彼の言葉が頭の中で木霊する。

 これは隼人が起こした。彼が、小鳥遊を巻き込み、殺したのだ。
 誰にも理解されることなく、永遠と彼は事故死と名を打たれる。隼人は生者として彼の友人名義でいるのだ。
 本当は殺人者であるのにもかかわらずに。

 もう後戻りすることは出来なかった。ここで後ろを振り返ってしまっては隼人はただの殺人者で終わってしまう。
 そうではなく、自分の犯した罪に意味を与え無くてはならない。

 壊れてしまった隼人にある選択肢は“前に進む”これ一択。

 狂っている。狂ってしまった。この逆回りしている時間という時計を止めないように

「絶対に遂げてみせる。東山財閥爆破事件を食い止め、早希 結衣を幸せな人生へ導いてみせるよ。修斗くん。それが君へのせめてもの贖罪だ」

 誰にも聞こえない声でボソッと隼人は呟いた。



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