僕は過ちを正すため、過去に飛んだ。
EP27 増える謎
SPはそのまま2発目を撃とうと構える。それを見る隼人。吹雪は冷や汗がタラリと落ちる。
二人は互いに顔を合わせ、タイミングをはかってからダッと走り出し、ヘリコプターの後ろに隠れる。その際に銃声が聞こえたが、どうやら当たってはいないようだった。
「隼人、どうしようか?」
吹雪は隠しきれない動揺を出し切った焦りの顔で隼人に尋ねる。
じっさい、ヘリコプターというのは大きな盾だし、銃弾からは守ってくれるだろう。しかし、こっちには武器もなにもない。脅す道具を持っていない相手にこの盾は無力に近い。そんなことは吹雪にも分かっているようだ。
「西峰隼人。さっき録音したという音声はまだ送っていないよな?」
浩二はそんな事を言いながらSPとともに近づいてくる。
「ど、どうしよう!」
吹雪は死の予感を感じてより一層焦る。しかし、こんな時ほど冷静に物事を考えないといけない。さもないと、壊れた原因を見つけることは出来ない。物事を客観視することこそ、成功への近道なのだ。
「作戦を思いついた。吹雪にしてもらいたいことがあるんだ。」
隼人は落ち着いて吹雪にいう。
「ただし、リスクが大きい。俺の推測が正しければこの状況は打破出来るはずだし、推測が間違っていれば吹雪は最悪死ぬかもしれない。それでも乗るか?」
隼人はゆっくりと聞く。至って落ち着いた声のままで。
吹雪は考えるような素振りもなく即答する。
「乗るさ。どのみち、先に進まないといけない。」
「分かった。ありがとう。」
隼人はそう、感謝の言葉を言うと手短に作戦を話す。それを聞いた吹雪の目には迷いはかけらもなかった。
「何をヒソヒソと…」
浩二たちが後少しの距離まで来ている時、凛とした表情のまま吹雪が姿を見せる。
SP達は吹雪に拳銃を向けるが一向に撃とうとしない。
この時点で、隼人の作戦は成功することがほぼ確定していた。
吹雪はそのまま鋭い目つきを崩さず素早く浩二のもとに走り、顔面に懇親の一撃を食らわす。
「ぐわッ!」
浩二はそのままその場所に尻餅をつき、そのまま胸ぐらを掴む。
「き、貴様ぁ!風魔さんから手を離せ!」
SPの一人が怒鳴る。しかし、吹雪は浩二から手を話そうとしない。
「嫌だと言ったら?」
吹雪は挑発するように言った。
「このまま貴様を射殺する。」
SPは銃を吹雪に向ける。カチャッという物騒な音が短く聞こえる。
「いいだろう。撃ってみろ」
吹雪は高圧的な態度を崩さない。しかし、銃声は一向に聞こえない。隼人はそれを確認するとそっとSPの背後の方へ回る。
「今だ!」
隼人が合図すると吹雪は浩二から手をはなし、SP一人に殴りかかる。そして背後まで近寄った隼人がもうひとりに襲いかかる。不意打ちのおかげで銃口は隼人の方に向けられることもないまま抑え込むことに成功する。
どうやら吹雪も成功したようだった。
浩二達4人を縄で縛りその場に座らせる。もちろん拳銃も全部没収だ。
「なんとかなったな」
隼人は安堵のため息を漏らす。
「お前の作戦が成功したからだな隼人。見事だった。」
吹雪は隼人を称賛するようにパチパチを拍手した。
「しかし、どうして浩二達は俺を撃たないって断言できたんだよ?」
吹雪は不思議そうに尋ねる。
そう、隼人がたてた作戦は迷わずに浩二の殴り飛ばし、合図とともにSPも倒すといったものだった。もちろん、拳銃が使用されない前提で。
「あー。実は、申し訳ないけど根拠もないような俺の考え5割、勘5割って言った感じだったんだ。」
「へえ。んで、その根拠のないような考えってなんなんだよ?」
「それは、浩二の今回の標的は俺だけであるということだ。恐らく、俺が死んでも幾らでもアリバイが作れるように色々準備していたんだと思う。しかし、突然現れた吹雪をここで殺すことは浩二にとってリスクが大きい。そのことに関してやつ(浩二)はアリバイを用意していないだろうと踏んだ。」
「アリバイ?」
吹雪はまたも怪訝そうに首をかしげる。
「そうだ。例えば、吹雪をここで殺したとして警察がこのことについて調べ始めたとする。そうなれば吹雪がこんな夜にヘリコプターを使って秋田まで来たことを不思議に思うだろう。そんなときに真っ先に疑われるのが秋田旅行に来ている浩二だからだ。」
「でもそれって、隼人が殺されても浩二が疑われるんじゃないのか?お前もこのタイミングで秋田旅行に来ているわけだし。」
吹雪は疑問点を正直に聞いてくる。
「俺はあらかじめ友人に秋田へ旅行に行っていると伝えている。だから、旅行中に運悪く殺されてしまった見せかけることもできるかもしれない。しかも、浩二には俺を殺す動機がない。会社も違うし、怨みを買うようなこともしていないしな。でも、お前に関してはいくらでもあるはずだ。会社内の地位についてとか。」
長々と説明する隼人、あと吹雪に直接は言えないのだが、理由はもう一つある。
【東山財閥の爆破事件計画の進行度はどんなものなのかしら?】
あの女が言っていたこのセリフだ。明らかに東山財閥に対しての恨みを持っていての犯行になるだろう。その対象に吹雪が入っているのだとしたらこの計画内で彼を殺したいはずだ。
この事を含めても、浩二がこの場で吹雪を殺すことは低いと予想できる。
「確かに、それだけだと全部お前の憶測の範疇って感じで終わりだな。根拠がないっていうのも納得した。」
吹雪の納得の後、ぐったりとしている浩二を隼人は見る。
「風魔浩二。さっき言っていた録音の話だが、このままお前を警察さんに預けるときに渡そうと思う。どうせ警察に言うんだったらここで少し聞かせてくれないか?今回のことについて。」
本当は取っていない録音の話を再び持ち出す。これでさらなる情報が得られるかもと期待した隼人だったが帰ってきた返事は彼の期待を裏切った。
「録音なんてしていませんよね?西峰隼人。そんなことは私には分かっています。そして、私達はまだ負けていないという事もね」
先ほどとは打って変わって丁寧な口調になった浩二に驚きを隠せない。しかも先程はバレていなかった録音のことまで。
「お前は誰だ。」
吹雪のその言葉に浩二は気持ちの悪い笑みを浮かべながら気が狂ったのかのように叫び始める。
「私は風魔浩二ですよ!無念の末に息絶えた我が娘の思いを背負っている!」
浩二の娘って恵のことだろうか?
浩二はそのまま血走った目をカッと開きながら続ける。
「西峰隼人ぉ!私はあなたを許しません!私が受けた屈辱、悲しみ、苦しみ憎しみに孤独。このすべてをあなたに合わせてあげましょう!」
そう、言い終わった途端、目の前が明るくなって思わず目を閉じる。
何かものすごい光が浩二から放たれたのだ。
「ぐッ!」
その後、目を開けた時、浩二たちの姿はなくなっていた。
二人は互いに顔を合わせ、タイミングをはかってからダッと走り出し、ヘリコプターの後ろに隠れる。その際に銃声が聞こえたが、どうやら当たってはいないようだった。
「隼人、どうしようか?」
吹雪は隠しきれない動揺を出し切った焦りの顔で隼人に尋ねる。
じっさい、ヘリコプターというのは大きな盾だし、銃弾からは守ってくれるだろう。しかし、こっちには武器もなにもない。脅す道具を持っていない相手にこの盾は無力に近い。そんなことは吹雪にも分かっているようだ。
「西峰隼人。さっき録音したという音声はまだ送っていないよな?」
浩二はそんな事を言いながらSPとともに近づいてくる。
「ど、どうしよう!」
吹雪は死の予感を感じてより一層焦る。しかし、こんな時ほど冷静に物事を考えないといけない。さもないと、壊れた原因を見つけることは出来ない。物事を客観視することこそ、成功への近道なのだ。
「作戦を思いついた。吹雪にしてもらいたいことがあるんだ。」
隼人は落ち着いて吹雪にいう。
「ただし、リスクが大きい。俺の推測が正しければこの状況は打破出来るはずだし、推測が間違っていれば吹雪は最悪死ぬかもしれない。それでも乗るか?」
隼人はゆっくりと聞く。至って落ち着いた声のままで。
吹雪は考えるような素振りもなく即答する。
「乗るさ。どのみち、先に進まないといけない。」
「分かった。ありがとう。」
隼人はそう、感謝の言葉を言うと手短に作戦を話す。それを聞いた吹雪の目には迷いはかけらもなかった。
「何をヒソヒソと…」
浩二たちが後少しの距離まで来ている時、凛とした表情のまま吹雪が姿を見せる。
SP達は吹雪に拳銃を向けるが一向に撃とうとしない。
この時点で、隼人の作戦は成功することがほぼ確定していた。
吹雪はそのまま鋭い目つきを崩さず素早く浩二のもとに走り、顔面に懇親の一撃を食らわす。
「ぐわッ!」
浩二はそのままその場所に尻餅をつき、そのまま胸ぐらを掴む。
「き、貴様ぁ!風魔さんから手を離せ!」
SPの一人が怒鳴る。しかし、吹雪は浩二から手を話そうとしない。
「嫌だと言ったら?」
吹雪は挑発するように言った。
「このまま貴様を射殺する。」
SPは銃を吹雪に向ける。カチャッという物騒な音が短く聞こえる。
「いいだろう。撃ってみろ」
吹雪は高圧的な態度を崩さない。しかし、銃声は一向に聞こえない。隼人はそれを確認するとそっとSPの背後の方へ回る。
「今だ!」
隼人が合図すると吹雪は浩二から手をはなし、SP一人に殴りかかる。そして背後まで近寄った隼人がもうひとりに襲いかかる。不意打ちのおかげで銃口は隼人の方に向けられることもないまま抑え込むことに成功する。
どうやら吹雪も成功したようだった。
浩二達4人を縄で縛りその場に座らせる。もちろん拳銃も全部没収だ。
「なんとかなったな」
隼人は安堵のため息を漏らす。
「お前の作戦が成功したからだな隼人。見事だった。」
吹雪は隼人を称賛するようにパチパチを拍手した。
「しかし、どうして浩二達は俺を撃たないって断言できたんだよ?」
吹雪は不思議そうに尋ねる。
そう、隼人がたてた作戦は迷わずに浩二の殴り飛ばし、合図とともにSPも倒すといったものだった。もちろん、拳銃が使用されない前提で。
「あー。実は、申し訳ないけど根拠もないような俺の考え5割、勘5割って言った感じだったんだ。」
「へえ。んで、その根拠のないような考えってなんなんだよ?」
「それは、浩二の今回の標的は俺だけであるということだ。恐らく、俺が死んでも幾らでもアリバイが作れるように色々準備していたんだと思う。しかし、突然現れた吹雪をここで殺すことは浩二にとってリスクが大きい。そのことに関してやつ(浩二)はアリバイを用意していないだろうと踏んだ。」
「アリバイ?」
吹雪はまたも怪訝そうに首をかしげる。
「そうだ。例えば、吹雪をここで殺したとして警察がこのことについて調べ始めたとする。そうなれば吹雪がこんな夜にヘリコプターを使って秋田まで来たことを不思議に思うだろう。そんなときに真っ先に疑われるのが秋田旅行に来ている浩二だからだ。」
「でもそれって、隼人が殺されても浩二が疑われるんじゃないのか?お前もこのタイミングで秋田旅行に来ているわけだし。」
吹雪は疑問点を正直に聞いてくる。
「俺はあらかじめ友人に秋田へ旅行に行っていると伝えている。だから、旅行中に運悪く殺されてしまった見せかけることもできるかもしれない。しかも、浩二には俺を殺す動機がない。会社も違うし、怨みを買うようなこともしていないしな。でも、お前に関してはいくらでもあるはずだ。会社内の地位についてとか。」
長々と説明する隼人、あと吹雪に直接は言えないのだが、理由はもう一つある。
【東山財閥の爆破事件計画の進行度はどんなものなのかしら?】
あの女が言っていたこのセリフだ。明らかに東山財閥に対しての恨みを持っていての犯行になるだろう。その対象に吹雪が入っているのだとしたらこの計画内で彼を殺したいはずだ。
この事を含めても、浩二がこの場で吹雪を殺すことは低いと予想できる。
「確かに、それだけだと全部お前の憶測の範疇って感じで終わりだな。根拠がないっていうのも納得した。」
吹雪の納得の後、ぐったりとしている浩二を隼人は見る。
「風魔浩二。さっき言っていた録音の話だが、このままお前を警察さんに預けるときに渡そうと思う。どうせ警察に言うんだったらここで少し聞かせてくれないか?今回のことについて。」
本当は取っていない録音の話を再び持ち出す。これでさらなる情報が得られるかもと期待した隼人だったが帰ってきた返事は彼の期待を裏切った。
「録音なんてしていませんよね?西峰隼人。そんなことは私には分かっています。そして、私達はまだ負けていないという事もね」
先ほどとは打って変わって丁寧な口調になった浩二に驚きを隠せない。しかも先程はバレていなかった録音のことまで。
「お前は誰だ。」
吹雪のその言葉に浩二は気持ちの悪い笑みを浮かべながら気が狂ったのかのように叫び始める。
「私は風魔浩二ですよ!無念の末に息絶えた我が娘の思いを背負っている!」
浩二の娘って恵のことだろうか?
浩二はそのまま血走った目をカッと開きながら続ける。
「西峰隼人ぉ!私はあなたを許しません!私が受けた屈辱、悲しみ、苦しみ憎しみに孤独。このすべてをあなたに合わせてあげましょう!」
そう、言い終わった途端、目の前が明るくなって思わず目を閉じる。
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「ぐッ!」
その後、目を開けた時、浩二たちの姿はなくなっていた。
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