話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

僕は過ちを正すため、過去に飛んだ。

黒山羊

EP22 欺き

ガサッ

 どこからともなく聞こえた物音。

「!」

 隼人の心臓は一瞬にして飛び上がる

「ここか」

 浩二の顔が不気味に笑っていた。

 思わず隼人は両目を閉じて覚悟する。見つかったらまず終わりだろう。

 しかし、

「そんなところで何をしていたんだ?恵」

 その声で隼人は薄く目を開き、情報の確認を試みた。
 その光景に隼人は思わず声が出そうになった。

なんと、恵が茂みから出て浩二の前に立っていた。

 隼人は軽く情報の整理をする。浩二の体は隼人のいる茂みの方を向いている。恐らくこの茂みの方に手を入れて探そうとしていたのだろう。
 そこで隼人がバレてしまう事を阻止するために恵が出てくれた。と、そういう感じだろうか?

だが、少し引っかかる。なぜ、隼人が浩二にバレたくなかったことがわかったのか?
 今この時点で思いつく最悪の事態は、恵が最初から隼人のことを浩二に教えるつもりだったという事だ。

 隼人が秋田に来たことを浩二がどういうわけか知っていたと仮定する。そして、あえてグランドペアレンツケアの建物の前で接触を試みた。そこで恵が浩二の計画に積極的でないことを強調する。そして警戒心の薄れた隼人に公園で接触。
 こう考えればこっちの可能性も真実味を帯びてくる。あの建物からだいぶ離れたというのにすぐ浩二たちが追いついたことも納得だ。

 いずれにしてもこれらはすべて仮説でしかない。彼女の心理を理解するためにはこの状況を凝視し、後者ではないことを祈るしかない。

 しかし、彼女が発した言葉は

「彼がここに来ることはわかっていたので予め隠れてきました。そこに西峰 隼人がいます」

 だった。

「なるほど。ご苦労」

 どうやら、後者が当たっていたらしい。

 浩二はそのまま茂みの方に近づいて来るのが分かった。

 絶体絶命のピンチだ。このまま見つかれば…

【彼(西峰 隼人)はそこで始末しないで頂戴。あいつにはもっともっと苦しん死んでもらいたいの】

 このセリフが頭の中でフラッシュバックして思わず体が震える。その時だった。

「…あ」

 隼人の茂みの反対側が住宅街につながっていることに今更ながら気がついた。一か八かこれにかけるしかない。
 なるべく体を地面に擦り付けながら、音を立てないように茂みから抜けると、しゃがみながら浩二たちにバレないようゆっくりとその場から逃げ出した。
 あの遠くにいる浩二の仲間そうな女は隼人に気づいていそうだったが、それでも今更どうすることも出来ない。
 他にも、少し不可解な点はある。だが、今はそんなことよりこの場から逃げることが先決だ。そして、公園が見えなくなるところまで来るとそこから駅に向かって猛ダッシュした。

~公園にて~

「いないぞ。恵」

 浩二はいくら探しても隼人が見つからないことでイライラしながら私に言った。

「多分、逃げられたわね。ごめんなさい私の力不足で。」

 私が謝ると、まぁ仕方がない。と納得してくれる風魔。

 しかし、

「嘘が下手なのですね。風魔恵さん?」

 近くにいた女性が恵に反応した。

 その言葉に風魔の表情が一気に固くなる。

「どういう事なんだ。恵」

 浩二は声のトーンを何段階も落として聞いてくる。

「わ、私は嘘なんか…」

 少し慌てながらも私は必死に弁論しようとする。しかし、この女は全てわかっているかのように笑いながら言った。

「いや、貴方は嘘を言っている。証拠に貴方の示した場所に西峰隼人はいなかった」

「だ、だからそれはあのひとに逃げられたせいで…」

「そして、貴方が示した場所の真反対の方の茂みがゴソゴソと動いていましたよ?あれは何でしょうかね?」

「…!」

 核心を掴まれてしまった。

 彼女の言う通り、私は西峰隼人の場所を騙った。もちろん彼の正体がばれないように。

「動物か、何かではないのですか?」

 苦し紛れの反抗だった。

「動物ですか。その可能性は低いですね。揺れる茂みの範囲的に対象はかなり大きいことが伺えます。この辺にいる動物と言ったらネコか犬くらいでしょう。あそこまで大きい子はいません」

「で、でももし私が嘘言っているのが分かっていて隠れている場所まで分かっていたのならなぜ放置したのですか?」

 これ以上の弁明は意味がないと判断した私は捨て身で反撃することにした。
 私は基本的には父の味方だ。だが、この女に従う気にはなれない。この際だ、コイツのことについて少し探ってやろう。

「私は、まだあのひとにバレてしまうわけにはいかないんですよ。理由はただこれだけです。」

「バレてはいけない?それってどういう…そもそも貴方は何者…ッ!」

 どんどん反撃しようと思った私の体が硬直した。父のせいではない。この世のものではない何かが私の体を拘束したのだ。

「そこまでです。それ以上の詮索は許しません。」

 その言葉にはいくつもの見えない圧力を感じた。でもそれが私を拘束しているのか?それは違う。

「悪い子には罰を与えないと、ですね?」

 私の意識はどんどん薄れていく。きっと見えないあの力のせいだろう。

 この女は何者なんだ?少なくとも、この世のひとではないだろう。

「恵。西山財閥が如何に悪いことばかりをしてきたのか俺はたくさん教えたつもりだったのだが、あいつを庇うなんて。お前は恥でしかない。しっかりと制裁を受けてきなさい。」

 父のそんな私を突き放すような声が聞こえる。薄れていく意識の中にそれは木霊する。
 たった今、私は父から捨てられたのだろう。

 ああ。やっぱり、私に居場所はなかったんだ。

 あの小さな孤児院の中にも、この大きな現実のどこにも。風魔浩二さんが私を引き取ってくれたときは微かな希望が見えたっけ。

 でも結局、私は道具だったんだろうな。それでも、良かった。きっと作られた場所でも私は受け入れるしかなかったんだ。

 なんで、父を裏切ったんだろうな。あのひとに別に特別な感情があるわけではないのに。

 プッっと何故か聞こえた通話が切れる音が私に届いたあと私の意識は完全になくなった。

「僕は過ちを正すため、過去に飛んだ。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く