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僕は過ちを正すため、過去に飛んだ。

黒山羊

EP21 風魔 恵

「はぁはぁ」

 隼人は一目散にその場から走って逃げた。

 建物の先の角を曲がり、バイパス通り沿いに出た。たくさんの車が行き来している。

 隼人は息を切らしながら走るのをやめない。自転車に乗っている人や、犬の散歩をしている人などのたくさんの人とすれ違いながらどんどんあの建物から離れる。

 10分ほど走り、あの場所からかなり離れて目に入った公園のベンチに隼人は腰掛ける。

「はぁ、本当に死ぬかと思った。」

 息を切らしながら一旦落ち着くために深呼吸する。

 今までにない恐怖を感じた隼人だった。小鳥遊との喧嘩など、子供同士のじゃれ合いに感じるレベルである。

 とにもかくにも、事件を引き起こそうとしている輩との接触が成功したことになる。これは事件の鍵を探している隼人にはいいヒントとなる。

【いいのさ。あの子には喫茶店で睡眠薬を飲ませていて意識がぼうっとしているはずだし、今頃何も考えずに寝ているんじゃないか?】

 隼人は携帯を取り出し、昨日恵と別れ際に撮ったツーショットを見た。

「恵がもしかしたら鍵(重要)になるかもな」

 浩二のこの発言から、恵は東山財閥爆破事件に関与していない可能性が浮上してきたからだ。
 この言葉以外にも、今日最初に風魔一家を見たとき、彼女はあまり関心がなさそうな態度を見せていた。というよりも秋田観光のほうが楽しみであるかのような印象だった。

「明日あたり、恵と会ってくるか」

 隼人はそう決心して携帯から目を話そうとしたその瞬間、

「そういえば、俺ツイッター始めたんだったな」

 ふと、そんなことを思い出し、気分転換も含めてツイッターを開く。

 そこには世界中の人々の膨大な情報が流れている。時には芸能人のスキャンダル、ネットでの旧友との再開、新たな友達、ネット恋愛等様々だ。
 フェイスブックも同じで、人との関わりが下手な隼人を含めた陰キャたちに居場所を与える素晴らしいものだ。

 元実業家の隼人にとって、フェイスブック創設者のマーク・ザッカーバーグやツイッター創設者のジャック・ドーシーら4人というのは憧れであり、目標であった。

「本当にすごいなこれ」

 ツイッターの凄さに感嘆のため息を漏らす。

 隼人がフォローしている数少ない友達、小鳥遊や早希たちのツイートを見る。

【いやあ、皆さん見てくださいこの肉。2キロですって】

 小鳥遊は大盛りな肉を激安で提供することで有名なお肉のお店で撮ったであろう2キロの肉を載せていた。

「すげぇ。いいね38か」

 いいねの数に驚かされる隼人。すると彼は少し気になり、彼は自分が昨日したツイートを覗く。

【ツイッター始めました】

「…いいね2件」

 もちろん、このいいねは小鳥遊と早希からだった。

「早希のも見るか」

【新宿ナウ】

 という一言に新宿駅の画像や、歌舞伎町の看板など、新宿ぶらり旅をたのしむツイートが乗っていた。

「楽しそうだな」

 いいねの数は小鳥遊にも及ばないが、26とたくさんされていた。

 そして隼人が携帯をポケットにしまい、立ち上がったその時、

「あれ、隼人くん?」

「…!」

 突然名前を呼ばれ、後ろを振り向くと、

「風魔…さん」

 金色の長い髪が風でなびき、少し派手目なパーカーを着て立っている少女。

風魔 恵がいた。

 彼女はとても驚いているような顔をしている。

「な、なんでここに隼人くんいるの?」

 少し、動揺気味に聞いてくる。

「え、えっと。なんというか…そうだ!か、観光にきたんだよ!」

 隼人の苦し紛れの嘘だ。しかし、

「あ、観光かぁ!同じだぁ。私もお父さんと観光に来たんだよ!」

「…え?」

 案外あっさりと納得したのだった。

「ん?なんか、反応が薄いなぁ。隼人くん眠いの?」

 恵って天然なのだろうか?

 いずれにしても、隼人の警戒が解かれることはない。

「あと、隼人くん!風魔さんじゃなくて、恵でいいよー」

 恵は屈託のない笑顔で隼人に言った。

「あ、ああ。ありがとう」

 可愛いなぁ。

 そう思ったのもつかの間

「この公園に娘をおいたままなんです」

「あら、そうなんですか?」

「ええ。呼んでくるのでここで待っていてください」

 耳に残って離れないあの声が聞こえてきた。

「!」

 隼人は秒速で状況を把握する。間違いない。浩二の声だ。あの女の声も聞こえる。

「ふ、風魔さん!ごめん!」

 隼人は恵みの口を自分の手で塞ぎそのまま二人で茂みに影に姿を隠す。

「あれ、恵がいない。恵ー?」

 浩二は突然姿を消した自分の娘を大声で呼びながらその周辺を探し始める。

 ど、どうか見つからないでくれ!

 隼人は心の中で強く願う。

 恵は隼人と密着する状態だった。

「ふ、風魔さん。少しだけでいいからこのままでいて。おねがい」

 隼人は小声で恵に頼む。

「め、恵」

「…え?」

 恵は少し膨れた顔で言った。

「恵って呼んでって言ったじゃん」

 そう言った恵みの顔はほんのりと赤くなっている。

「わ、わかったよ。め、恵。もう少しだけこのままで我慢して」

 恵は満足そうに頷く。

「分かった!後でわけを聞かせてね」

 そう言って、恵が自分を探している浩二の方に目線を戻したその時

ガサッ

 どこからともなく聞こえた物音。

「!」

 隼人の心臓は一瞬にして飛び上がる

「ここか」

 浩二の顔が不気味に笑っていた。

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