僕は過ちを正すため、過去に飛んだ。
EP20 増える容疑者と謎の女
満を持して建物の中に入る。1年前から放置されていたと言うだけはあり、独特の匂いがする。なんかこう、ツンっとくるような匂いだった。
おそらく、この1年間でこの場所は不良のたまり場にでもなったのだろうか。壁にはスプレー缶での落書きに、そこら中に落ちているコンビニの袋とカップ麺のカラ。タバコの燃えカス等、内部の状態は決して良いとは言えないものだった。
しかし、建物が1階しかないし、ここで引き返すわけにも行かないのでこのまま捜索を続けることにした。
どこかに参考となる資料がないだろうかと隼人は必死に探すも、それらしきものは全く見当たらない。
建物内を探検しながら捜索すること20分。最深部となる【重要資料室】と大きくわかりやすい字で書かれている札のある部屋の前まで来た。ここに来るまでに給湯室や、トイレ、そしてコピー室と呼ばれる部屋が合ったが、給湯室やトイレはものすごい有様で見ることが出来なかった。そして、コピー室【重要資料室】と同じく札があり、その文字も濃くはっきりと書かれており、最近書き直されたように感じるほどだった。
この部屋は、大量の紙で床が埋もれている状態で落ちている紙はこの会社の宣伝になるポスターばかりで参考になりそうなものも見当たらなかった。
一つ一つの紙を精査することは時間が掛かるしリスクが合った。それは、紙を判別している間に風魔たちが戻ってくるかもしれないということだった。なので、この部屋はスルー。
敵と決まったわけではないが、会話を聞いた限り注意する人物に値すると隼人は判断した。
「資料室…なにか参考になるようなものがあればいいんだけど…」
隼人は少しの不安を抱えながらドアノブを撚る。
「うお、なんか良さそうな机と椅子があるな」
この部屋も紙が多少床に散らばっていたものの、コピー室ほどではなかった。
何よりも不審だなと思ったのは、部屋の中央に明らかにどの部屋にあった机や椅子よりも豪華なそれがあった。
「資料室なんかにこんなにいいものが普通置いてあるか?」
隼人は直感でそう感じた。
彼の経験上、大事なものを管理する部屋には誰であろうと長居をしてもらいたくないからゆっくりと腰をおろせるようなものを用意しない。
「とりあえず、もうこの部屋で最後だし、少し落ちている紙を見てみるか」
時間の関係上、この問題を一旦無視することにした。
隼人は屈んで落ちている紙を一枚見た。
「…ん?」
その紙には【桐谷 仁の失態】と呼ばれる紙があった。
気になって他の紙も漁って見る。すると大変なことに、落ちているすべての紙が先程の【桐谷 仁の失態】の紙だったのだ。
紙の中身を呼んでみたところ、基本的には隼人が集めた情報と変わりはなかった。しかし、違う点が1つ合った。
【桐谷 仁】という人物がリストラされた同じ日に、もうひとりの人物がリストラされていたのである。
原因は同じくパワハラらしい。
名前や詳細は載っていなかったが、どうやらテレビや雑誌等はパワハラ事件を【仁】だけの仕業だと思っていたようだが、実際にはもうひとりパワハラに対して加担していた人がいて、そのことはマスコミ等にバレていないということになる。
言い換えれば、もうひとりのパワハラの罪を【仁】という男が一人で背負ったことになる。
「誰なんだ。このもうひとりは…」
謎の人物に頭を悩ませていると建物入口の方から何やら物音が聞こえ、隼人は部屋の物陰に隠れ耳を澄ます。
「浩二さん。恵ちゃんをあそこにおいていっても良かったのですか?」
何やら若い声の女の人の声が聞こえてきた。どこかで聞いたことがある声だった。
「いいのさ。あの子には喫茶店で睡眠薬を飲ませていて意識がぼうっとしているはずだし、今頃何も考えずに寝ているんじゃないか?」
「あら、残忍なことをするのね」
女の人はクスっと笑う。
「あれは、さっきの風魔 恵のお父さんの方か」
そう、あそこにいる浩二というのは先程この建物に入っていたと思われる男だ。
「しかし、あの女の人は誰だ?」
浩二の顔はよく見えるのだが、女の人は頭までフードをかぶっていて顔はよく見えなかった。
そして不思議なことに、彼女には影が見当たらなかった。浩二の影とかぶっているのだろうか。
「声はどこかで聞いたことがあるのだけど…」
そんなふうに思っていた隼人だが、すぐに恐ろしい言葉が隼人の耳に入ってくる。
「ところで浩二さん?東山財閥の爆破事件計画の進行度はどんなものなのかしら?」
「! ?」
な、なんだって…
隼人はその言葉に大きな衝撃を覚えた。やはり爆発事件が起きるのだという確証を持ったのと、その犯人かもしれない人物たちが自分のすぐ近くにいるという恐怖も感じた。
「順調だよ。彼のマインドコントロールもバッチリだし、このままならうまくいくはずだ。西峰隼人の操作もうまくいっている。」
そんな物騒なことを浩二が言う。しかし、女が男の発言の恐怖を上回るような事を言った。
「彼西峰 隼人はそこで始末しないで頂戴。あいつにはもっともっと苦しん死んでもらいたいの」
「…え」
その狂気じみた言葉からは恐ろしいほどの殺気が込められていると感じた。
ガサッ
「しまっ!」
隼人は恐怖のあまり物音を立ててしまった。
「誰だ?」
浩二は隼人のもとに叫びながら近寄ってきた。
周りをキョロキョロ見渡す。
どこかに逃げ道はないか?
そんなふうに探していると、逃げ道を発見する。本当に小さな天窓だ。
「あ、あれしかないか…」
隼人は持ち前の運動能力を活かし、この部屋にあった唯一の窓に飛んだ
隼人はその場にかがみ、強く大地を蹴る。その体は宙を舞い、伸ばした手は、窓に無事届いた。
限りなく天井に近いところに位置していて窓自体も非常に小さい。しかし、隼人の細い体は難なくそれを通ることが出来た。
窓から脱出することに成功した隼人は必死にその場から離れようと走った。
「西峰 隼人に逃げられましたね」
女の人はボソッと言った。
おそらく、この1年間でこの場所は不良のたまり場にでもなったのだろうか。壁にはスプレー缶での落書きに、そこら中に落ちているコンビニの袋とカップ麺のカラ。タバコの燃えカス等、内部の状態は決して良いとは言えないものだった。
しかし、建物が1階しかないし、ここで引き返すわけにも行かないのでこのまま捜索を続けることにした。
どこかに参考となる資料がないだろうかと隼人は必死に探すも、それらしきものは全く見当たらない。
建物内を探検しながら捜索すること20分。最深部となる【重要資料室】と大きくわかりやすい字で書かれている札のある部屋の前まで来た。ここに来るまでに給湯室や、トイレ、そしてコピー室と呼ばれる部屋が合ったが、給湯室やトイレはものすごい有様で見ることが出来なかった。そして、コピー室【重要資料室】と同じく札があり、その文字も濃くはっきりと書かれており、最近書き直されたように感じるほどだった。
この部屋は、大量の紙で床が埋もれている状態で落ちている紙はこの会社の宣伝になるポスターばかりで参考になりそうなものも見当たらなかった。
一つ一つの紙を精査することは時間が掛かるしリスクが合った。それは、紙を判別している間に風魔たちが戻ってくるかもしれないということだった。なので、この部屋はスルー。
敵と決まったわけではないが、会話を聞いた限り注意する人物に値すると隼人は判断した。
「資料室…なにか参考になるようなものがあればいいんだけど…」
隼人は少しの不安を抱えながらドアノブを撚る。
「うお、なんか良さそうな机と椅子があるな」
この部屋も紙が多少床に散らばっていたものの、コピー室ほどではなかった。
何よりも不審だなと思ったのは、部屋の中央に明らかにどの部屋にあった机や椅子よりも豪華なそれがあった。
「資料室なんかにこんなにいいものが普通置いてあるか?」
隼人は直感でそう感じた。
彼の経験上、大事なものを管理する部屋には誰であろうと長居をしてもらいたくないからゆっくりと腰をおろせるようなものを用意しない。
「とりあえず、もうこの部屋で最後だし、少し落ちている紙を見てみるか」
時間の関係上、この問題を一旦無視することにした。
隼人は屈んで落ちている紙を一枚見た。
「…ん?」
その紙には【桐谷 仁の失態】と呼ばれる紙があった。
気になって他の紙も漁って見る。すると大変なことに、落ちているすべての紙が先程の【桐谷 仁の失態】の紙だったのだ。
紙の中身を呼んでみたところ、基本的には隼人が集めた情報と変わりはなかった。しかし、違う点が1つ合った。
【桐谷 仁】という人物がリストラされた同じ日に、もうひとりの人物がリストラされていたのである。
原因は同じくパワハラらしい。
名前や詳細は載っていなかったが、どうやらテレビや雑誌等はパワハラ事件を【仁】だけの仕業だと思っていたようだが、実際にはもうひとりパワハラに対して加担していた人がいて、そのことはマスコミ等にバレていないということになる。
言い換えれば、もうひとりのパワハラの罪を【仁】という男が一人で背負ったことになる。
「誰なんだ。このもうひとりは…」
謎の人物に頭を悩ませていると建物入口の方から何やら物音が聞こえ、隼人は部屋の物陰に隠れ耳を澄ます。
「浩二さん。恵ちゃんをあそこにおいていっても良かったのですか?」
何やら若い声の女の人の声が聞こえてきた。どこかで聞いたことがある声だった。
「いいのさ。あの子には喫茶店で睡眠薬を飲ませていて意識がぼうっとしているはずだし、今頃何も考えずに寝ているんじゃないか?」
「あら、残忍なことをするのね」
女の人はクスっと笑う。
「あれは、さっきの風魔 恵のお父さんの方か」
そう、あそこにいる浩二というのは先程この建物に入っていたと思われる男だ。
「しかし、あの女の人は誰だ?」
浩二の顔はよく見えるのだが、女の人は頭までフードをかぶっていて顔はよく見えなかった。
そして不思議なことに、彼女には影が見当たらなかった。浩二の影とかぶっているのだろうか。
「声はどこかで聞いたことがあるのだけど…」
そんなふうに思っていた隼人だが、すぐに恐ろしい言葉が隼人の耳に入ってくる。
「ところで浩二さん?東山財閥の爆破事件計画の進行度はどんなものなのかしら?」
「! ?」
な、なんだって…
隼人はその言葉に大きな衝撃を覚えた。やはり爆発事件が起きるのだという確証を持ったのと、その犯人かもしれない人物たちが自分のすぐ近くにいるという恐怖も感じた。
「順調だよ。彼のマインドコントロールもバッチリだし、このままならうまくいくはずだ。西峰隼人の操作もうまくいっている。」
そんな物騒なことを浩二が言う。しかし、女が男の発言の恐怖を上回るような事を言った。
「彼西峰 隼人はそこで始末しないで頂戴。あいつにはもっともっと苦しん死んでもらいたいの」
「…え」
その狂気じみた言葉からは恐ろしいほどの殺気が込められていると感じた。
ガサッ
「しまっ!」
隼人は恐怖のあまり物音を立ててしまった。
「誰だ?」
浩二は隼人のもとに叫びながら近寄ってきた。
周りをキョロキョロ見渡す。
どこかに逃げ道はないか?
そんなふうに探していると、逃げ道を発見する。本当に小さな天窓だ。
「あ、あれしかないか…」
隼人は持ち前の運動能力を活かし、この部屋にあった唯一の窓に飛んだ
隼人はその場にかがみ、強く大地を蹴る。その体は宙を舞い、伸ばした手は、窓に無事届いた。
限りなく天井に近いところに位置していて窓自体も非常に小さい。しかし、隼人の細い体は難なくそれを通ることが出来た。
窓から脱出することに成功した隼人は必死にその場から離れようと走った。
「西峰 隼人に逃げられましたね」
女の人はボソッと言った。
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