僕は過ちを正すため、過去に飛んだ。
一章EP14囚われし過去
「ふ、風魔」
   公園の入り口には、小鳥遊が先程までいじめていた標的である女の子がいた。
   隼人は黙ってその女の子を見ていた。
「あの、先程は助けていただき本当にありがとうございます。」
   風魔とかいった女の子は隼人に向けて軽く会釈する。
「あ、いえいえ」
   隼人も軽く会釈を返した。
   そして、少し隼人に頬を緩ませた後、表情を元に戻し、小鳥遊に向ける。
「あなたが私にしたこと、忘れません」
   隼人は彼女の頰が少し腫れていることが見て取れた。
   女子にとって、顔に傷というのは致命傷に近いと聞いたことがある。
   彼女にとって、それがどれほど重要なのかは分からないが、少なくとも、ショックを受けていることは表情からよく分かった。
「な、なんだ。そんなこと言いに来たのかよ」
   小鳥遊は風魔の言葉に表情を変えずに言った。
「私、ずっとここであなた方のやりとりを見てました。それを見た上で、あなたはひどい人だというイメージは変わりませんでした。」
「…」
   小鳥遊は黙って風魔の言っていることを聞いていた。
「ですが、私の中であなたをこれ以上責めようとは思いません。」
   周りにはピリピリとした空気感が漂っていた。
   その空気感に気づいてか気付かずか、風魔は話を続ける。
「運命ですか。私には、あなたの人生なんて分かりません。自分の運命だって分かってませんもの」
「何が言いたいんだよ」
   風魔は口を開ける。
「運命なんて分からないものだし、変わるものだと思っています。ですが、あなたは過去を決めつけ、運命は決まっているのだと思っている。私はそんなあなたが可哀想でなりません」
   彼女はまっすぐ小鳥遊の顔を見て話している。
   運命が変わるものであること、運命は決まっていないこと、隼人は身をもって知ってる。
    彼女の意見は的を得ていると感じた。
「…お前に何がわかるんだ」
   口を閉ざして、話を聞いていた小鳥遊が突如口を開ける。
「お前らに、俺の何が分かるんだ!」
   小鳥遊は大声で怒鳴る。
「何もしらねぇよ。」
   隼人は小鳥遊に向けてつめたく言った。
「なんで、何も知らない奴が!俺の過去の事情を知ったような風を装って俺に話すんだ!お前らはそんなに偉いのか?俺はそんな事情もわからないような奴らに説教してもらわなくちゃいけないような無様な奴に見えるっていうのか!」
   大粒の涙をこぼし、小鳥遊は隼人と風魔に言う。
「挙げ句の果てに可哀想だと言いやがって!何様のつもりなんだ!お前にそんなことを言ってもらう筋合いはない!」
   激昂する小鳥遊。そこに風魔が言った。
「何か勘違いをされていませんか?」
「か、勘違いだと!此の期に及んで何を!」
   怒りが静まらない様子の小鳥遊。そこに隼人が続きを話す。
「風魔さんが思ってることと俺が思ってることは違うかもしれないが、俺が思っていることは、少なくともお前の過去の出来事について同情しているつもりは一切ないと言うことだ」
「…」
   小鳥遊はフーフーと荒い呼吸をしているが、大人しく隼人の話を聞いてくれるようだった。
「俺がお前に同情していることはそんな過去の事じゃなくて、お前が過去に囚われていることに自覚していないことについてだ」
「な、なんだと?俺が本当は過去に囚われていると?」
「そうだ」
    隼人の即答に小鳥遊は少し驚いた表情を見せた。
「俺の何処が過去に囚われてるってんだ。言ってみろよ財布」
「理由は簡単だ。まず一つめの理由だが、俺がさっき、お前に何故人をいじめるのかという質問をした時のことなんだが」
「理由は言ったはずだ。俺が受けた苦しみを味あわせたいってな」
   小鳥遊は少し声のトーンを落として言った。
「いいや、違うね」
    隼人はそう断言した。
   小鳥遊の目が鋭くなる。
「どうして、そう思うんだ?」
「いじめの対象相手さ」
「対象相手?」
   小鳥遊は隼人の言葉を復唱すると、それを理解した。
「お前がいつもいじめの対象とする相手は共通して、女子、普段から静かで気の弱そうな人だけだ」
「そ、それがどうかしたのかよ?」
   小鳥遊が少し焦ったように言った。隼人はそれを見ると何かを確信したように頷いた。
「同じ目に合わせてやるという割にはお前よりはるかに弱い奴ばっかり狙う。それは、強い相手にケンカを売ること勇気がないからだ。だから弱い奴をいじめることで、無理矢理心を納得しようとしているんだ。まるで、昔の自分から背を向けるように」
    小鳥遊はさらに分かりやすく脂汗を垂らしながら反論する。
「い、いや、違うぞ。俺が女どもばかり狙うのは俺が喧嘩で負けたくないからだ。
負けたらいじめの対象になっちゃうからな」
「強がるな小鳥遊」
      隼人は落ち着いた声で言う。
「つ、強がってなんか、ねぇよ。これが俺だ。昔から何も変わっちゃいない。自分を守り続けているだけだ。」
    小鳥遊は顔を地面向けて伏せ、歪む顔を見せまいとする。
「俺、知ってるよ。お前が優しかったこと」
「は、はぁ? 何を言いだすかと思ったら、お前が昔の俺の何を知っんだか…」
    小鳥遊は半分ヤケクソのようにボソボソと言った。
    しかし、隼人はそのまま小鳥遊に向ける視線を絶対に崩さない。
    
「あの時、俺を助けてくれてありがとう修斗」
「…え」
    隼人の突然の感謝の言葉に小鳥遊は口をぽかんと開けて、呆気にとられていた。
   公園の入り口には、小鳥遊が先程までいじめていた標的である女の子がいた。
   隼人は黙ってその女の子を見ていた。
「あの、先程は助けていただき本当にありがとうございます。」
   風魔とかいった女の子は隼人に向けて軽く会釈する。
「あ、いえいえ」
   隼人も軽く会釈を返した。
   そして、少し隼人に頬を緩ませた後、表情を元に戻し、小鳥遊に向ける。
「あなたが私にしたこと、忘れません」
   隼人は彼女の頰が少し腫れていることが見て取れた。
   女子にとって、顔に傷というのは致命傷に近いと聞いたことがある。
   彼女にとって、それがどれほど重要なのかは分からないが、少なくとも、ショックを受けていることは表情からよく分かった。
「な、なんだ。そんなこと言いに来たのかよ」
   小鳥遊は風魔の言葉に表情を変えずに言った。
「私、ずっとここであなた方のやりとりを見てました。それを見た上で、あなたはひどい人だというイメージは変わりませんでした。」
「…」
   小鳥遊は黙って風魔の言っていることを聞いていた。
「ですが、私の中であなたをこれ以上責めようとは思いません。」
   周りにはピリピリとした空気感が漂っていた。
   その空気感に気づいてか気付かずか、風魔は話を続ける。
「運命ですか。私には、あなたの人生なんて分かりません。自分の運命だって分かってませんもの」
「何が言いたいんだよ」
   風魔は口を開ける。
「運命なんて分からないものだし、変わるものだと思っています。ですが、あなたは過去を決めつけ、運命は決まっているのだと思っている。私はそんなあなたが可哀想でなりません」
   彼女はまっすぐ小鳥遊の顔を見て話している。
   運命が変わるものであること、運命は決まっていないこと、隼人は身をもって知ってる。
    彼女の意見は的を得ていると感じた。
「…お前に何がわかるんだ」
   口を閉ざして、話を聞いていた小鳥遊が突如口を開ける。
「お前らに、俺の何が分かるんだ!」
   小鳥遊は大声で怒鳴る。
「何もしらねぇよ。」
   隼人は小鳥遊に向けてつめたく言った。
「なんで、何も知らない奴が!俺の過去の事情を知ったような風を装って俺に話すんだ!お前らはそんなに偉いのか?俺はそんな事情もわからないような奴らに説教してもらわなくちゃいけないような無様な奴に見えるっていうのか!」
   大粒の涙をこぼし、小鳥遊は隼人と風魔に言う。
「挙げ句の果てに可哀想だと言いやがって!何様のつもりなんだ!お前にそんなことを言ってもらう筋合いはない!」
   激昂する小鳥遊。そこに風魔が言った。
「何か勘違いをされていませんか?」
「か、勘違いだと!此の期に及んで何を!」
   怒りが静まらない様子の小鳥遊。そこに隼人が続きを話す。
「風魔さんが思ってることと俺が思ってることは違うかもしれないが、俺が思っていることは、少なくともお前の過去の出来事について同情しているつもりは一切ないと言うことだ」
「…」
   小鳥遊はフーフーと荒い呼吸をしているが、大人しく隼人の話を聞いてくれるようだった。
「俺がお前に同情していることはそんな過去の事じゃなくて、お前が過去に囚われていることに自覚していないことについてだ」
「な、なんだと?俺が本当は過去に囚われていると?」
「そうだ」
    隼人の即答に小鳥遊は少し驚いた表情を見せた。
「俺の何処が過去に囚われてるってんだ。言ってみろよ財布」
「理由は簡単だ。まず一つめの理由だが、俺がさっき、お前に何故人をいじめるのかという質問をした時のことなんだが」
「理由は言ったはずだ。俺が受けた苦しみを味あわせたいってな」
   小鳥遊は少し声のトーンを落として言った。
「いいや、違うね」
    隼人はそう断言した。
   小鳥遊の目が鋭くなる。
「どうして、そう思うんだ?」
「いじめの対象相手さ」
「対象相手?」
   小鳥遊は隼人の言葉を復唱すると、それを理解した。
「お前がいつもいじめの対象とする相手は共通して、女子、普段から静かで気の弱そうな人だけだ」
「そ、それがどうかしたのかよ?」
   小鳥遊が少し焦ったように言った。隼人はそれを見ると何かを確信したように頷いた。
「同じ目に合わせてやるという割にはお前よりはるかに弱い奴ばっかり狙う。それは、強い相手にケンカを売ること勇気がないからだ。だから弱い奴をいじめることで、無理矢理心を納得しようとしているんだ。まるで、昔の自分から背を向けるように」
    小鳥遊はさらに分かりやすく脂汗を垂らしながら反論する。
「い、いや、違うぞ。俺が女どもばかり狙うのは俺が喧嘩で負けたくないからだ。
負けたらいじめの対象になっちゃうからな」
「強がるな小鳥遊」
      隼人は落ち着いた声で言う。
「つ、強がってなんか、ねぇよ。これが俺だ。昔から何も変わっちゃいない。自分を守り続けているだけだ。」
    小鳥遊は顔を地面向けて伏せ、歪む顔を見せまいとする。
「俺、知ってるよ。お前が優しかったこと」
「は、はぁ? 何を言いだすかと思ったら、お前が昔の俺の何を知っんだか…」
    小鳥遊は半分ヤケクソのようにボソボソと言った。
    しかし、隼人はそのまま小鳥遊に向ける視線を絶対に崩さない。
    
「あの時、俺を助けてくれてありがとう修斗」
「…え」
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