僕は過ちを正すため、過去に飛んだ。
一章EP12思い込み
   作戦に失敗し、東山財閥を追い出された隼人は、そのまま帰り道を重い足取りでトボトボと歩いていた。
  あの時、なぜマスは件(くだん)のマスに止まらなかったのだろうか。
   隼人の頭の中にはこれしか無かった。歴史が変わった?それとも、本当に単なる偶然?
   いずれにしても、今の隼人に確かめる手段は無い。
   それにしても、吹雪はなんであんなものを持っていたのだろうか。
   今はそんな事ばかりだった。
   帰り道、大きく下る坂を転ばぬようにゆっくり降り、角を曲がる。そこから先は普段から薄暗く、夜ともなると真っ暗な街灯もない人が滅多によるつかないであろうところとなる。
   現在、ゆいとのデートに吹雪との件もあり、あたりはだいぶ暗くなっていた。
   
「やっぱり、この時間は流石に怖いわ」
   隼人は肩を震わせながら、お化けなんてないさーと軽く口ずさみながら歩く。別の道を通っても良かったのだが、この道が隼人の自宅までの近道になっているのだ。使わない手はない。
   その時だった。
「抵抗すんじゃぁねぇよ!怪我したいのか!」
   道の先にある裏路地の方から男の声が聞こえた。
 「この声は…小鳥遊! ?」
   隼人は嫌な予感がし、走ってその裏路地に飛び込む。
   「おい小鳥遊!また結衣をいじめてんのかぁ!」
   隼人は相手の顔を見るなり大声で威嚇するように言う。
 
「…誰だお前。あ、財布か」
   やはり、小鳥遊だった、その横にはドラ●もんでいう、スネ●の立ち位置である津田がいた。
 「財布じゃない!西峰だ!名前くらい覚えろ低脳!」
  隼人はこの時、初めて小鳥遊に抗っていた。なぜなら、前の人生の隼人にとって暴力事件は死活問題になると考えていたため、争いごとになるようなことを避けていたからだ。
   付け足すならば、この時の隼人はとても気が立っていた。このどうにもならないモヤモヤ感が彼にここまで言わせたのだと思う。
「ずいぶん偉くなったものじゃないか財布。悪いな。俺難聴でさ。もう一度言ってくれないか?」
   小鳥遊はニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべながら隼人を煽る。難聴というのは当然嘘だ。
「何度でも言ってやる!結衣をいじめんな!」
   隼人は勢いを止めずに言った。
   すると、
「あ、やっぱ聞き間違えじゃないな。」
   小鳥遊はそういうと女の子の方を振り向き、頰にパンチを加える。
「あ、てめぇ…あ」
   隼人は小鳥遊に殴りかかろうとしたがとあることに気づき、攻撃をやめた。
「…結衣じゃ、ない…?」
   そう、小鳥遊が殴っていたのは、早希結衣ではなく、隼人の知らない女の子であった。
「な?早希はいじめてないぞ?これなら良いだろう?あと、お前って早希の事を名前呼びするんだな。良い情報をもらったわ」
   小鳥遊は皮肉っぽく言って、女の子を再び殴る。
「や、やめ」
   固まった体に無理やり言わせ、動こうとすると、小鳥遊の横、津田から拳が飛んできた。
   バキィ
  激しい音ともに隼人の体は一歩後退する。
   そのまま津田に殴られ続ける。
「財布のくせに調子乗りやがって。身分わきまえろよカス」
   隼人は言われ放題だった。
   その時 、小鳥遊に殴られていた女の子が隼人に告げた。
   まるで、自分が今、殴られているとは思えないくらいに穏やかな声だった。
「私を、救って」
   その言葉に物理的には表すことの出来ない電流が隼人の体を回って発電した。
   誤ってたまるか!
【次は誤らないでね。私を、あの人を救ってね】
   俺はこれのために、この過ちを正すために!
「過去に戻って来たんだぁ!」
   隼人は油断しきって殴る津田の拳をさっと避けると、そのまま右手で津田の腹部へフックを決める。
「ぐっ…」
   油断していて、不意に急所を突かれ、悶絶する津田。
   そのまま地面に寝転んでしまった。
   それを見た小鳥遊は女の子を殴るのをやめ、隼人の方に向く。
「財布のくせにやるじゃないか。ただ、どうやら、頭が悪いらしい。本気で俺に喧嘩売るってことはな」
「…」
   隼人は何も言わなかった。
  もちろん、中学生時代にボクシングで関東大会制覇を果たして、自分よりもはるかに体格のいい小鳥遊に隼人は勝てる気はしていなかった。
   今、重きを置いているのはどうやってあの女の子を逃すかだ。
   手段は一つしかなかった。あまり気は進まないが仕方がない。
   隼人は大きく息を吸って覚悟を決めた
「うるさい。しゃべるなホモゴリラ。口クセェんだよ。」
   隼人は精一杯の罵倒をする。これでブチ切れるのははっきり言って小学生以下だ。しかし、
「ほ、ホモゴリラだと!もういっぺん言ってみろ!」
   小鳥遊は顔を真っ赤にし、目を釣り上げて隼人の方へ近づく。
「来んじゃねぇよ、ホモゴリラ!」
   隼人はそう言って裏路地から逃げ出すように走り出す。
「ま、待てこの野郎!」
   小鳥遊も必死の剣幕で追いかけてくる。
   隼人は小鳥遊から逃げる中、ちょくちょく後ろを向き、女の子が裏路地から出るのを見ると、目で逃げろと合図する。
  女の子は首を縦に振りそのまま、隼人と小鳥遊のいる反対の方へ走っていった。
   隼人は女の子が逃げる時間を稼ぐため、近くにある公園の中にはいる。
   壁に覆われ、不審者が身を隠すのに最適なような公園だ。
「もう、逃げ道はないな。財布」
   隼人は、うまく小鳥遊を誘導することに成功した。
「よくも人の思い出したくない過去を思い出させやがって。絶対に許さないからな。」
  小鳥遊はものすごい剣幕で言った。
   実は、小鳥遊がここまで荒れている理由は、そのホモゴリラというあだ名にあった。
   体格も良く、ボクシングをやっていた彼は何故か男の友達がとても多かったらしい。そのことが原因でそのあだ名をつけられいじめられたからなのだ。
   今回ここまで怒っているのもそれが原因だ。
「なぁ、お前もいじめられてた側ならいじめられてる人の気持ちわかるだろ?なんでお前がこんなことすんだよ。」
「俺が受けた苦しみを味あわせてやるためさ。」
   小鳥遊は表情を変えずにいう。
   小鳥遊は過去にとらわれすぎいる。
   隼人はそう感じていた。自分が受けた苦しみが世の中で最も苦しいことだと勘違いしている。それゆえ、そのイジメを自分の中でなかったことにして、そのかわり自分が相手の役柄を演じているのだ。
   今だから言える。今の隼人だからこそ。
「過去から逃げるな小鳥遊!」
   隼人のその言葉をゴングに戦いの火蓋は切られたのである。
  あの時、なぜマスは件(くだん)のマスに止まらなかったのだろうか。
   隼人の頭の中にはこれしか無かった。歴史が変わった?それとも、本当に単なる偶然?
   いずれにしても、今の隼人に確かめる手段は無い。
   それにしても、吹雪はなんであんなものを持っていたのだろうか。
   今はそんな事ばかりだった。
   帰り道、大きく下る坂を転ばぬようにゆっくり降り、角を曲がる。そこから先は普段から薄暗く、夜ともなると真っ暗な街灯もない人が滅多によるつかないであろうところとなる。
   現在、ゆいとのデートに吹雪との件もあり、あたりはだいぶ暗くなっていた。
   
「やっぱり、この時間は流石に怖いわ」
   隼人は肩を震わせながら、お化けなんてないさーと軽く口ずさみながら歩く。別の道を通っても良かったのだが、この道が隼人の自宅までの近道になっているのだ。使わない手はない。
   その時だった。
「抵抗すんじゃぁねぇよ!怪我したいのか!」
   道の先にある裏路地の方から男の声が聞こえた。
 「この声は…小鳥遊! ?」
   隼人は嫌な予感がし、走ってその裏路地に飛び込む。
   「おい小鳥遊!また結衣をいじめてんのかぁ!」
   隼人は相手の顔を見るなり大声で威嚇するように言う。
 
「…誰だお前。あ、財布か」
   やはり、小鳥遊だった、その横にはドラ●もんでいう、スネ●の立ち位置である津田がいた。
 「財布じゃない!西峰だ!名前くらい覚えろ低脳!」
  隼人はこの時、初めて小鳥遊に抗っていた。なぜなら、前の人生の隼人にとって暴力事件は死活問題になると考えていたため、争いごとになるようなことを避けていたからだ。
   付け足すならば、この時の隼人はとても気が立っていた。このどうにもならないモヤモヤ感が彼にここまで言わせたのだと思う。
「ずいぶん偉くなったものじゃないか財布。悪いな。俺難聴でさ。もう一度言ってくれないか?」
   小鳥遊はニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべながら隼人を煽る。難聴というのは当然嘘だ。
「何度でも言ってやる!結衣をいじめんな!」
   隼人は勢いを止めずに言った。
   すると、
「あ、やっぱ聞き間違えじゃないな。」
   小鳥遊はそういうと女の子の方を振り向き、頰にパンチを加える。
「あ、てめぇ…あ」
   隼人は小鳥遊に殴りかかろうとしたがとあることに気づき、攻撃をやめた。
「…結衣じゃ、ない…?」
   そう、小鳥遊が殴っていたのは、早希結衣ではなく、隼人の知らない女の子であった。
「な?早希はいじめてないぞ?これなら良いだろう?あと、お前って早希の事を名前呼びするんだな。良い情報をもらったわ」
   小鳥遊は皮肉っぽく言って、女の子を再び殴る。
「や、やめ」
   固まった体に無理やり言わせ、動こうとすると、小鳥遊の横、津田から拳が飛んできた。
   バキィ
  激しい音ともに隼人の体は一歩後退する。
   そのまま津田に殴られ続ける。
「財布のくせに調子乗りやがって。身分わきまえろよカス」
   隼人は言われ放題だった。
   その時 、小鳥遊に殴られていた女の子が隼人に告げた。
   まるで、自分が今、殴られているとは思えないくらいに穏やかな声だった。
「私を、救って」
   その言葉に物理的には表すことの出来ない電流が隼人の体を回って発電した。
   誤ってたまるか!
【次は誤らないでね。私を、あの人を救ってね】
   俺はこれのために、この過ちを正すために!
「過去に戻って来たんだぁ!」
   隼人は油断しきって殴る津田の拳をさっと避けると、そのまま右手で津田の腹部へフックを決める。
「ぐっ…」
   油断していて、不意に急所を突かれ、悶絶する津田。
   そのまま地面に寝転んでしまった。
   それを見た小鳥遊は女の子を殴るのをやめ、隼人の方に向く。
「財布のくせにやるじゃないか。ただ、どうやら、頭が悪いらしい。本気で俺に喧嘩売るってことはな」
「…」
   隼人は何も言わなかった。
  もちろん、中学生時代にボクシングで関東大会制覇を果たして、自分よりもはるかに体格のいい小鳥遊に隼人は勝てる気はしていなかった。
   今、重きを置いているのはどうやってあの女の子を逃すかだ。
   手段は一つしかなかった。あまり気は進まないが仕方がない。
   隼人は大きく息を吸って覚悟を決めた
「うるさい。しゃべるなホモゴリラ。口クセェんだよ。」
   隼人は精一杯の罵倒をする。これでブチ切れるのははっきり言って小学生以下だ。しかし、
「ほ、ホモゴリラだと!もういっぺん言ってみろ!」
   小鳥遊は顔を真っ赤にし、目を釣り上げて隼人の方へ近づく。
「来んじゃねぇよ、ホモゴリラ!」
   隼人はそう言って裏路地から逃げ出すように走り出す。
「ま、待てこの野郎!」
   小鳥遊も必死の剣幕で追いかけてくる。
   隼人は小鳥遊から逃げる中、ちょくちょく後ろを向き、女の子が裏路地から出るのを見ると、目で逃げろと合図する。
  女の子は首を縦に振りそのまま、隼人と小鳥遊のいる反対の方へ走っていった。
   隼人は女の子が逃げる時間を稼ぐため、近くにある公園の中にはいる。
   壁に覆われ、不審者が身を隠すのに最適なような公園だ。
「もう、逃げ道はないな。財布」
   隼人は、うまく小鳥遊を誘導することに成功した。
「よくも人の思い出したくない過去を思い出させやがって。絶対に許さないからな。」
  小鳥遊はものすごい剣幕で言った。
   実は、小鳥遊がここまで荒れている理由は、そのホモゴリラというあだ名にあった。
   体格も良く、ボクシングをやっていた彼は何故か男の友達がとても多かったらしい。そのことが原因でそのあだ名をつけられいじめられたからなのだ。
   今回ここまで怒っているのもそれが原因だ。
「なぁ、お前もいじめられてた側ならいじめられてる人の気持ちわかるだろ?なんでお前がこんなことすんだよ。」
「俺が受けた苦しみを味あわせてやるためさ。」
   小鳥遊は表情を変えずにいう。
   小鳥遊は過去にとらわれすぎいる。
   隼人はそう感じていた。自分が受けた苦しみが世の中で最も苦しいことだと勘違いしている。それゆえ、そのイジメを自分の中でなかったことにして、そのかわり自分が相手の役柄を演じているのだ。
   今だから言える。今の隼人だからこそ。
「過去から逃げるな小鳥遊!」
   隼人のその言葉をゴングに戦いの火蓋は切られたのである。
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