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僕は過ちを正すため、過去に飛んだ。

黒山羊

一章EP11勘違い

  何が自由ですか?幸せですか?

  君は自由だよね。妻もいて、子供もいて就職もよい。幸せじゃないか。

  そんなまやかし。もう聞き飽きた。
  
「君ならもっと上目指せるよ。うちなんかよりもずっと。」

  嘘だ。

「だから、これからもめげずに頑張ってほしい。」

  嘘だ。そんな事、微塵【みじん】も思ってないくせに。

「今までありがとう、えっと、とりあえずありがとう」

  名前は?俺の名前を忘れたのか?

「何をぼうっと突っ立ているんだ?私からは以上だ。私たちは忙しいから早く立ち退きなさい」

  そんな事。分かってる。分かってるさ。

  全く動こうとしない俺を社員の一人が蹴る。

「仕事の邪魔だ。部外者は早く立ち去ってくれ。」

「こら。椎名【しいな】君。口が悪いぞ」

  そう言った男もクスクスと笑っている。

「ッ!」

  俺はその場から走って逃げ去った。

   …ああ、悔いだらけの人生だった。

  燃え上がる業火の中、爆破事件の犯人は自らが設置した爆破に巻き込まれ、徐々に崩れていく建物の中、横たわっている。

  どの方向からも聞こえる叫び声。痛い痛いと嗚咽を漏らし泣く人。すぐ近くにはあの憎き東山森人の息子の死体。

  犯人の体もじわじわと痛くなっていく。息苦しい。でも、自分のしたことは間違っていないと思い、その信念は曲げるつもりなど毛頭なかった。

「は、ははは」

  彼のかすれた声は燃える音にかき消され、また、彼の息の根も火が消えたロウソクのようにフッと吹かれて消えた。

ーーーーーーーーーー

「証拠を見せてやる!!」

  隼人は声高らかにそう宣言する。

 「証拠だと?あんのかよそんなもん」

  吹雪は完全なる疑いの目を隼人に向ける。

 「ああ。よく聞いてろよ」

 「おう」

  吹雪は真顔を崩さず冷静に対応する。
  隼人は運命ゲームを指差し

「これの続きをやろう」

「…は?」

  吹雪はぽかんと口を開ける。

「それが、証拠?」

「ああ。そうだ。」

  吹雪は運命ゲームに目を向け、その後すぐに隼人に視線を戻す。

「俺はこのゲームをやったら必ず、このマスに止まる。」

  隼人は【新商品を発売し、爆売れして大成功かと思いきや、欠陥品が見つかり、株が大暴落。そのまま倒産。貴方はその後すぐに消息を断つ。よって、スタートに戻る】のマスを指差す。

「なぜなら、これは新しいこの人生を歩む前の人生での俺の最後だからだ。」

「…なんか、分かりづらいな」

  吹雪は最初はあまり理解していなかったようだが、すぐに隼人の話を理解する。

「要は、さっきお前が言ってた未来通りのマスに止まれば、お前の話は本当だったっていうことだろ?」

「そういうことだ。」

  吹雪は少し考えるそぶりを見せるがすぐに「よし、考えるよりやってみた方が早いか」といい、運命ゲームに向き直った。

 隼人が最後に止まったマスはチンピラに絡まれてお金を取られたってところだ。
 次に隼人に起こった身近な事件は6マス先の友達の自殺のマスだ。あそこに当たれば良い。

 まぁ、言うまでもなく、結衣の話だ。

  隼人はルーレットを勢いよく回す。

  …3.4.5と

  「お、あと1!」

 そう願う隼人。一度マスは6を指した。

  だが、

「針が、止まらない…」

  針はそのまま動きを止めず6マス目の次、である、1のマス目で止まった。

  な、なんで?過去が変わったのか?

 【偶然遊びからの帰り道にチンピラに絡まれる女の子を発見し、見事救出する。15万もらう】

  な、なんだこれ? !
  俺は前の人生ではこんな大それたことしてないぞ!

  隼人は自分のマスのイベントを口に出して言いながら、自分が遭遇しなかった虚偽の出来事を考えた。

「おい、何慌ててんだよ隼人。もしかして、その前の未来ってやつに止まれなかったのか?ああ、ざんねん!これでお前の嘘は決まったな」

  隼人が黙ってそのイベントを見ているのをみて隼人は煽るように言ってくる。

「い、いや待て。俺が覚えていないだけの可能性もある。」

「覚えてなかったら確認のしようがないじゃないか」

  これまた吹雪は煽るように言った。

「ま、まぁ、みておけ。さっき俺が言ったマスにハマればそれは引き続き俺の言ったことの証明になるはずだ。」

  隼人は少し冷静になって言った。

「まぁ。いいよ。見せてみろ。」

  隼人は再びサイコロをもち、投げた。



ーーーーーーーーー

  あれから20分後ほど経った。あれからサイコロで出たマスで、隼人の知っているイベントは無かった。
  そして、目的のマスまであと5マスというところになった。

「隼人。もうあと5マスだけど、調子どうっすか?」

  隼人の一人運命ゲームをとっくに見飽きた吹雪は完全にリラックスしながら言ってくる。

「黙ってみてろ。」

  隼人は落ち着いた表情で吹雪に言った。

 「行くぞ、」

  隼人はおそらくラストになるであろうサイコロに触れる。

  大丈夫だ。きっと俺が忙しくてただ、忘れていただけだ。前の人生で俺は色々あったんだ。
  だから、【あのマス】に泊まれるはずだ!

  隼人は覚悟を決め、サイコロを回した。

  サイコロはコロコロ周り、1、2、3、4、5、6と何度も回っていく。

  そして、

「…6?」

  サイコロはしっかりと6を出していた。

「こ、これは、どういう事だ。」

  隼人は理解できない目の前の出来事に驚きの声をあげる。

  不意に後ろから、気配を感じ、振り向く、

「…吹雪」

  吹雪の顔にはつい先ほど待ってあった笑顔は跡形も無くなっていた。

「それで、お前の目的とやらはなんなんだ?不審者さん?残念だけど、俺の信用は勝ち取れなかったな。」

  吹雪は冷酷な声で言った。

 「こ、こんなはずないんだ…。これは、何かの間違えで…」

  隼人の口からはそんな言葉しか出なかった。

「言い訳はいらないぜ。」

「言い訳なんかじゃ…」

  オドオドと返事をする隼人にしびれを切らし、吹雪は怒鳴り声を挙げる。

「俺の前から消えろ!不愉快だ!俺はそんな根も葉もない噂もする奴も大嫌いなんだ!」

  隼人は、下唇を噛みながらバックを持ってその場を後にした。

ーーーーーーーーー

  カチカチ。

  東山財閥の地下の駐車場にて、何やらそんな音が聞こえる。

「いよいよだ。これから、俺の復讐が始まるんだ。うんと苦しめ、そして泣きながら俺に懺悔しろ。」

  その駐車場にはその男の声が響いていたのだった。

  

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