僕は過ちを正すため、過去に飛んだ。
1章EP09運命ゲーム
「入りまーす」
 隼人は軽いノックをしたのち、中に足を踏み入れる。
「おお!!来たか!!待ってたぜ」
キラキラと光る歯を見せ、ニコリと笑う男、東山吹雪が出迎えてくれた。
「ごめんね?アポなしでさ」
「あ、気にしないでくれ。俺も暇だったからいいんだわ」
吹雪はそう言うと、彼が手に持っていたものを見せた。
「…運命ゲーム?」
それは、有名なパーティーゲームである運命ゲームであった。
 運命ゲームとはスゴロクを少しややこしくしたもので、ルールはお互いにサイコロを振って出たマス分自分の駒を進め、数々のイベントこなすというもの。
最終的にゴール地点で持っているお金が一番高い人の勝ちというアレだ。
「そうだ!!俺、一度これがしたくてさ!!」
運命ゲームの箱は新品のようで傷一つ見当たらない。それどころか開けられた形跡もない。吹雪はした事がないのだろうか。
隼人自身も高校時代は友達がいなかったので、こう言ったパーティーゲームはメイドさんや執事とかとするゲームだった。
執事とやればいいのに。
と、隼人も思ったがすぐに納得できた。
「吹雪おぼっちゃまと、お客人様。お茶菓子をお持ちしました。」
少し低めの声がノックとともに聞こえた。
すると、隼人は血相を変えてドアに向かって怒鳴った。
「うっせぇーぞ仁!お前が持ってるものはドアの外に置いとけ!」
「かしこまりました。」
仁と呼ばれた男は声色を変えずに落ち着いて対応をした。
なるほど。仲が悪いのか。
「す、すまん。大きな声だして。あいつお節介なんだよ…」
吹雪はすこし声のトーンを落として言った。
「あ、ああ。大丈夫。それより早くやろうぜ!」
二人は運命ゲームを、組み立て始めた。お金を定位置にセットし、家も盤面に配置する。
そうこうと準備しながら、隼人はどのタイミングで自分の情報を話すか機会を疑っていた。
「よし、先行は俺だな?行くぞー!」
勢いよくルーレットを回す吹雪。
 出た目は4だった。
そのまま、吹雪は自分の駒を動かす。
「3、4と。えー、なになに?」
【おとうさんが起こした企業が成功し、家が裕福になる。10万もらう。】
「はぁ?!」
初回からの桁違いな数字に思わず隼人は驚きの声をあげる。
隼人が一度やったことがある運命ゲームではゲーム序盤でこれほどの額の交差は無かった。
終盤で少し見かける程度だ。
「なんだ。10万ぽっちか。」
吹雪はそんな金銭感覚が狂った人が言うような言葉を漏らし、10万円札を取る。
隼人は思惑そっちのけで、運命ゲームの箱の名前を確認する。
「運命ゲーム…だよな。」
そう言って、じっくりと見てみる。するとそこには
【運命ゲーム〜大企業のおぼっちゃま用〜】
と、書いてあった。
「…なんじゃこりゃぁ!!」
癇癪を起こした隼人であった。
「おい隼人。暴れんな。次お前の番だぞ。」
吹雪は運命ゲームの隼人の駒を指差し、急かす。
「…分かった。」
隼人は納得のいかないままルーレットを回す。」
出た目は…6だった。
「えっと、1、2…6と。」
【大企業の社長である父の仕事を継ぐために勉強に力を入れまくる。そのため、周りからハブられる。5万払う。】
「…はぁ!?」
満更でもないイベント内容と払う金額の二つに向けて隼人は言った。
「うっせーな。はよ払えや。」
吹雪は隼人に「はい」と手を差し出す。
しかし、隼人もここで講義に出る。
「いや、待て待て。そもそもスタート時点で3000円なのに初めのコマで5万って額がおかしいだろ??このゲームは常磐では約束手形を受け取らなくても良くなる特別措置とかないの?」
あまりにおかしいシステムのことを吹雪に告げ、同情をかわせようと試みる。
ちなみに、約束手形というのはいわゆる借金である。
しかし
「しらねぇ。細かいのはどーでもいいんだ。だから、はよ5万」
吹雪は説明書を見直そうとせず手も下げなかった。
「鬼か!?」
隼人は渋々約束手形を受け取る。
しかし、受け取った時にある事に気付く。
「次は俺だな?いくぜぇ!」
さっきの吹雪のイベントといい、隼人のイベントといい、
「お、また4か。」
もしかしてこれって
「1、2…4と」
【自分の企業本店で爆発事件が起き、あなたは死んでしまった。所持金を全て戻しスタートに戻る。】
やっぱりか!!
隼人は確信した。この運命ゲームは
「ち!!なんだよこのマス!あーぁ。俺の10万がぁ…」
運命を司るゲームなのだと。
自分の駒をスタート地点に戻す吹雪。
気のせいかもしれないが二人の近くで誰かが笑った気がした。
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