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鬼の魔法使いは秘密主義

瀬戸暁斗

密談

 射撃場での銃の暴発事故から数時間前に遡る。
 とあるマンションの一室で3人の男が話し合っていた。


「なぁリーダー。本当にうまくいくんだろうな」


 人相の悪い金髪の男がそう尋ねた。


「ああ。必ず」


 リーダーと呼ばれた黒い大きなフードを被り、顔を隠している男が短く答えた。


「しかしあの方が捕まってしまったのは少々計算外だったのでありませんか?」


 眼鏡をかけた上品そうな男はフードの男の考えが知りたいようだ。


「あいつか。たかが学生をボコるだけで捕まっちまうとはバカな奴だぜ」


 金髪の男が鼻で笑った。


「魔法も使えない奴の力ではそれくらいのものだ。これからの計画に狂いはない」


 フードの男は淡々と言った。


「それもそうですね。で、次の計画はどのようなものなんです?」


「次の標的は東京魔法高校だ。すでに仕掛けをしてある」


 金髪の男は楽しそうに口笛を吹いた。


「あんたの仕掛けなら問題ないだろうが、どんな仕掛けなんだ?」


「魔法発動時にある一定の魔力がかかると爆発する。そんな魔法陣を様々な器具に仕掛けた。もちろん痕跡残らない。どんなに腕の良い魔法使いだろうとわからないだろう」


「手際がいいですね。でも一体どうやって?」


「新しい器具を校内に搬入する時に細工をした」


「さすがリーダー様だぜ」


「本当に」


 金髪の男と眼鏡の男が高笑いをした。しかし、フードの男だけは先程までと変わらず静かに座ったままだった。


「時がくれば作戦を決行する。いつになるかわからないが、いつでも動けるようにしておけ。そう遠くない話だ」


「手下どもを集めておけばいいって事だよな?」


「そうだ」


「我々の配下の者には非魔法使いが多いと思うのですが—」


「一応武装だけはさせておけ。動ける人数が多い方がいい。魔法使いが相手とはいえ、高校生だ。ちゃんと武装をしておけば非魔法使いでも使えるだろう」


 フードの男はそう言うと、ポケットから複数の包みを取り出した。


「これは?」


「持っているといい。役に立つことになるだろう」


 男の口元に、初めて笑みが浮かんでいるように見えた。








 そして現在、蒼真と澪は生徒会室まで来ていた。
 彼らが中へ入り、まず始めに目に付いたの大量の書類に囲まれ、ぐったりとした志乃の姿だった。


「おい、大丈夫か?」


「えっ、蒼真君来てたんだ。気づかなかったよ…」


 疲れ果てた彼女は周りが見えていないようだ。


「それより—」


「銃の事でしょう。こっちに置いてあるわよ」


 部屋の奥から恵の声が聞こえた。彼女の周りにも書類の山ができているが、志乃とは異なり、あまり苦にしていない様子である。


「ありがとうございます」


 澪が疲れ果てた志乃にお茶を渡しているので、蒼真が1人で恵の前まで行った。


「これを見て何か痕跡がないか探すのよね?」


「はい」


 いろはから連絡が来ているのか、事情は把握しているようだ。


「そういうのは魔法工学科の方に回した方が良かったんじゃない?」


 比較的魔法工学科の生徒の方が魔法器具の扱いに長けているため、彼女このような発言をしたのだ。


「いえ。俺もできるので。すぐに取りかかれた方が良くないですか?」


「君って本当にすごいのね。何かまだ隠してる事があるんじゃない?」


 恵は冗談のように言った。


「別に何も無いですよ。早く調べたいのでいいですか?」


「ごめんないね。時間を取らせちゃって」


「問題ありません。では失礼します。澪、行くぞ」


 銃を受け取った蒼真は志乃を回復せた澪を呼び、部屋を出て行った。








 蒼真と澪は近くにあった魔法実習室の準備室へと来ていた。
 幸いこの時間は誰も使用していなかった。


「誰も使ってなくて良かったわね。でも、あなた『見て』判断する気でしょう」


「そうだが」


「その事は言わない方がいいんじゃない?」


「別にそんな事はない。問題は起こらないだろうが、念のため誤魔化しておくことにしよう」


 蒼真は銃をじっと見つめた。銃は内側から破裂したように変形してしまっている。


「どう?何かわかった?」


「いや、魔素の残留から見ても何も問題は無いように見える。だが、この時に使われていた魔法は銃を暴発させるほど制御が難しいものではない」


 蒼真はなおも銃を見ながら言った。


「つまり、何らかの魔法が内部で働いていたと考えらのが妥当なところだろう」


「その魔法の跡は見えなかったのよね?」


「ああ。もしこの仮説が正しければ、相当の腕を持った魔法使いが仕掛けたんだろう」


 この時点で例のフードの男にとっては2つの誤算が生じていた。
 1つ目は、仕掛けを発動させるために使われた魔法が簡単で失敗するようなものではなかった事。
 2つ目は、結城蒼真という魔法使いの存在である。
 そして、この事をまだ男は知らない。


「確認も終わった事だし、私は風紀委員の方に戻るわ。蒼真、報告とか後は任せるわ。」


「わかった。やっておく」


 部屋を出て澪は射撃場へ、蒼真は風紀委員会会議室へと行くため、2人は別れた。








 蒼真が会議室へと向かっている最中、彼は廊下の窓ごしに何かがちらちらと見える事に気がついた。


「何だ?」


 彼の周りには数人の生徒がいたので、不審に思われないようにさりげなく外を見た。


「あれは…、式か!」


 式とは、魔法によって作られるもので、魔素で形作られている。魔素の密度が高いため、蒼真のような能力が無くても見ることができるのである。多くが生物を模していて、情報収集などによく使われる。


「どうした、結城」


 式に集中していた蒼真は、はっと後ろを振り返った。


「赤木先輩でしたか…」


「お前もいろいろ大変そうだな」


 一彦は射撃場での出来事をすでに知っているようだ。


「それより、何で外なんかを…」


 彼もまた、窓の外を見た。


「あれは、カラスか? いや、でも何か違和感があるな。まるで魔素の塊…、式のようだ」


 彼もその正体に気づいた。


「なぜ式がここへ来ているんだ…。学校にあんなもの入れないはずだが…」


 東京魔法高校に限らず、全ての魔法高校には外からの魔法を遮断する魔法が働いているのだ。
 しかし、それをかいくぐれるほどの魔法使いであれば別なのだが。


「先輩。あの式消しましょうか?」


 蒼真は意を決して一彦に言った。


「式を消すだと? あれば魔素そのものみたいなものだろう。それを消すには高い技術が必要だ。お前にそんな事ができるのか?」


 蒼真は式に向かって手をかざした。


「ただの遺伝の力ですよ」

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