鬼の魔法使いは秘密主義
精神世界
午前中の授業の最後の課題が終わり、蒼真は1人で教室を出た。
そして彼は屋上へと向かった。
本来なら一般の生徒は屋上には行けないのだが、朝生徒会室にいた時に彼は恵に確認を取っている。
なぜ屋上に来たのかというと、理由が複数ある。
1つ目は、彼は1人きりでぼんやりする事が好きだからだ。いつも騒がしい人々に囲まれている彼にとって、このひと時は京都で過ごしている時から大事にしている時間なのである。
2つ目は、学校の周りに漂っている魔素を確認するためだ。魔法使いは個人差もあるが、魔素を感じ取ることができる。しかし、それも全てがわかるわけでわない。ぼんやりとしかわからないのだ。
蒼真には、謙一郎から受け継いだ能力がある。それが、魔素を視覚で完璧に感じ取りそして自在に操る事ができるのである。
最後の理由は、鬼人化の制御の練習をするためである。
他人に知られてはならない鬼人化だが、魔素を操る能力で魔素の感知に長けている者にもわからないように気をつけている。
そこまでの力の制御は京都で身につけていた。
蒼真は周りの確認をしてから、ゆっくりと印を結び始めた。
鬼人化の魔法陣は体に書き込まれているので、本当は念じるだけで印を結ぶ必要も無いのだが、彼は時間にゆとりがある時は印を結ぶようにしている。
印を結び終えると、彼の周りの魔素の動きが活発になり始めた。
もちろんその動きは彼にしか見えない。
それと同時に、体に書き込まれた魔法陣が浮かび上がり、皮膚の色が白く変わった。
この時に変わる皮膚の色によって力の強さがわかるのだ。
少し遅れて額から角が2本生えてきた。この角の数は強さには関係ないが、1本か2本が一般的である。
『久しぶりだなァ。相棒ォ』
どこからともなく声が聞こえた。その声は蒼真に向けて話しかけているようだ。
『シカトかよ。せっかく久しぶりの鬼人化なんだ。楽しもうぜェ』
「うるさい。黙っていろ」
蒼真はその声に向けて念じた。彼らの会話は蒼真の内側で行われている。
『ちゃんと向かい合って話そうや』
蒼真の意識は、彼の内側、精神世界へと落ちていった。
精神世界。誰もが持つ、自分自身の内側の世界だ。
蒼真の精神世界には、彼以外にも住人がいる。
それが先程の声の主である。
『よォ。面と向かって会うのはいつぶりだァ?』
「さあな。そんな事はどうでもいい」
『冷てえ事言うなよ。テメエとオレは、あん時から一心同体なんだからよォ。』
あの時とは、蒼真の体に魔法陣が書き込まれた時の事だ。
その時にこの声の主、鬼の人格が鬼人化の副産物として生まれたのである。
「お前は俺が鬼人化を使ってる時にしか出てこられないからな」
『まァ、それがオレの宿命って事だろォ。哀れに思ってんなら、たまにはオレにも体使わせてくれよォ』
「そんなのさせるわけがないだろ。勝手な事をされると俺が困るんだ」
『お堅い相棒サマだぜ。でも一体なんでこんな時に鬼人化なんかしてんだァ?』
「わかって言ってるだろ、白」
この鬼の人格は白、というらしい。白鬼の白である。
『もちろん冗談に決まってるだろォ。たまにはこういう開放的な所でするのも悪くねェなァ』
白はニヤリと笑みを浮かべた。
『そういえば、あの守護者どもはどこにいるんだァ? いつもテメエに張り付いてただろォ』
「直夜は課題が終わってない。澪はそれを手伝ってるんだろう」
『学生も大変だねェ。こんな学校なんかなければ昼間っからあの女狐やど田舎天狗どもをブチ殺しに行けるのになァ』
遥か昔、鬼、妖狐、天狗の間で争いがあったと言われている。
そして現在、蒼真のようなその子孫達にそれぞれの術が脈々と受け継がれているのである。
「今はそんな時代じゃないだろう。なんでお前はそんなに血の気が多いんだ?」
蒼真は、戦いに飢えている白を抑えるような口調で言った。
『血の気が多い? これはオレの本能だぜェ。止めることなんて出来るわけがないだろォ! まず、オレとテメエは同じなんだァ。これはテメエの本能でもあるんだぜェ』
「ふざけるな。俺はそんなんじゃない。勝手にお前と一緒にするな」
蒼真は氷のような目つきで睨みつけた。
『怖いじゃねェか。もっと気楽にいこうぜェ。それよりまだオレと話していていいのかァ? 誰か近づいて来てるぜェ』
「わかってるさ。俺だって無能じゃない」
蒼真はすでに気配を感じ、誰かまで特定している。
『さすがはオレの相棒だァ。そろそろいいだろォ。テメエはテメエで頑張りなァ』
「ああ」
笑い続ける白を背にして、蒼真は精神世界から現実へと戻っていった。
現実へと戻った蒼真は、まず鬼人化を解いた。
このような姿を誰かに見られては、取り返しのつかない事になる。
彼が完全に元の姿に戻ると、屋上の入り口のドアを開けようとする音が聞こえた。
鬼人化する際にドアに鍵をかけておいたのだ。
解錠してドアを開けると、そこには一彦が立っていた。
「すみません、赤木先輩。鍵を閉めたままにしていて」
「いや、問題無い。こまめに施錠するのはいいと俺は思う。一般の生徒が入ってきてはいけないからな。それより、設備の点検は終わっているのか?」
蒼真は屋上設備の点検を理由にここへ来たのだ。もちろん鬼人化する前に全てを済ませている。
「はい。このチェック項目で点検しましたが、問題はありませんでした」
胸ポケットから出した用紙を取り出しながら蒼真は報告した。
「悪いな。せっかくの昼休みなのにこんな事に時間を使わしてしまって」
「いえ。生徒会に入った以上、仕事はこなさないといけないと思うので」
「ありがとう。なら、これからも頼むぞ。まずは今日からの部活勧誘の仕事からだが」
「はい、わかりました」
蒼真の仕事を見届けた一彦は帰って行った。
「俺も戻るか」
蒼真はまだ昼食を取っていなかったのを思い出し、足早に教室へと向かっていった。
教室に戻り、簡単に昼食を済ませると残り少なくなった昼休みを蒼真は寝て過ごす事にした。
昼休みが終わり、午後の授業も問題無く進められて、とうとう部活勧誘の仕事があるという放課後となってしまった。
そして彼は屋上へと向かった。
本来なら一般の生徒は屋上には行けないのだが、朝生徒会室にいた時に彼は恵に確認を取っている。
なぜ屋上に来たのかというと、理由が複数ある。
1つ目は、彼は1人きりでぼんやりする事が好きだからだ。いつも騒がしい人々に囲まれている彼にとって、このひと時は京都で過ごしている時から大事にしている時間なのである。
2つ目は、学校の周りに漂っている魔素を確認するためだ。魔法使いは個人差もあるが、魔素を感じ取ることができる。しかし、それも全てがわかるわけでわない。ぼんやりとしかわからないのだ。
蒼真には、謙一郎から受け継いだ能力がある。それが、魔素を視覚で完璧に感じ取りそして自在に操る事ができるのである。
最後の理由は、鬼人化の制御の練習をするためである。
他人に知られてはならない鬼人化だが、魔素を操る能力で魔素の感知に長けている者にもわからないように気をつけている。
そこまでの力の制御は京都で身につけていた。
蒼真は周りの確認をしてから、ゆっくりと印を結び始めた。
鬼人化の魔法陣は体に書き込まれているので、本当は念じるだけで印を結ぶ必要も無いのだが、彼は時間にゆとりがある時は印を結ぶようにしている。
印を結び終えると、彼の周りの魔素の動きが活発になり始めた。
もちろんその動きは彼にしか見えない。
それと同時に、体に書き込まれた魔法陣が浮かび上がり、皮膚の色が白く変わった。
この時に変わる皮膚の色によって力の強さがわかるのだ。
少し遅れて額から角が2本生えてきた。この角の数は強さには関係ないが、1本か2本が一般的である。
『久しぶりだなァ。相棒ォ』
どこからともなく声が聞こえた。その声は蒼真に向けて話しかけているようだ。
『シカトかよ。せっかく久しぶりの鬼人化なんだ。楽しもうぜェ』
「うるさい。黙っていろ」
蒼真はその声に向けて念じた。彼らの会話は蒼真の内側で行われている。
『ちゃんと向かい合って話そうや』
蒼真の意識は、彼の内側、精神世界へと落ちていった。
精神世界。誰もが持つ、自分自身の内側の世界だ。
蒼真の精神世界には、彼以外にも住人がいる。
それが先程の声の主である。
『よォ。面と向かって会うのはいつぶりだァ?』
「さあな。そんな事はどうでもいい」
『冷てえ事言うなよ。テメエとオレは、あん時から一心同体なんだからよォ。』
あの時とは、蒼真の体に魔法陣が書き込まれた時の事だ。
その時にこの声の主、鬼の人格が鬼人化の副産物として生まれたのである。
「お前は俺が鬼人化を使ってる時にしか出てこられないからな」
『まァ、それがオレの宿命って事だろォ。哀れに思ってんなら、たまにはオレにも体使わせてくれよォ』
「そんなのさせるわけがないだろ。勝手な事をされると俺が困るんだ」
『お堅い相棒サマだぜ。でも一体なんでこんな時に鬼人化なんかしてんだァ?』
「わかって言ってるだろ、白」
この鬼の人格は白、というらしい。白鬼の白である。
『もちろん冗談に決まってるだろォ。たまにはこういう開放的な所でするのも悪くねェなァ』
白はニヤリと笑みを浮かべた。
『そういえば、あの守護者どもはどこにいるんだァ? いつもテメエに張り付いてただろォ』
「直夜は課題が終わってない。澪はそれを手伝ってるんだろう」
『学生も大変だねェ。こんな学校なんかなければ昼間っからあの女狐やど田舎天狗どもをブチ殺しに行けるのになァ』
遥か昔、鬼、妖狐、天狗の間で争いがあったと言われている。
そして現在、蒼真のようなその子孫達にそれぞれの術が脈々と受け継がれているのである。
「今はそんな時代じゃないだろう。なんでお前はそんなに血の気が多いんだ?」
蒼真は、戦いに飢えている白を抑えるような口調で言った。
『血の気が多い? これはオレの本能だぜェ。止めることなんて出来るわけがないだろォ! まず、オレとテメエは同じなんだァ。これはテメエの本能でもあるんだぜェ』
「ふざけるな。俺はそんなんじゃない。勝手にお前と一緒にするな」
蒼真は氷のような目つきで睨みつけた。
『怖いじゃねェか。もっと気楽にいこうぜェ。それよりまだオレと話していていいのかァ? 誰か近づいて来てるぜェ』
「わかってるさ。俺だって無能じゃない」
蒼真はすでに気配を感じ、誰かまで特定している。
『さすがはオレの相棒だァ。そろそろいいだろォ。テメエはテメエで頑張りなァ』
「ああ」
笑い続ける白を背にして、蒼真は精神世界から現実へと戻っていった。
現実へと戻った蒼真は、まず鬼人化を解いた。
このような姿を誰かに見られては、取り返しのつかない事になる。
彼が完全に元の姿に戻ると、屋上の入り口のドアを開けようとする音が聞こえた。
鬼人化する際にドアに鍵をかけておいたのだ。
解錠してドアを開けると、そこには一彦が立っていた。
「すみません、赤木先輩。鍵を閉めたままにしていて」
「いや、問題無い。こまめに施錠するのはいいと俺は思う。一般の生徒が入ってきてはいけないからな。それより、設備の点検は終わっているのか?」
蒼真は屋上設備の点検を理由にここへ来たのだ。もちろん鬼人化する前に全てを済ませている。
「はい。このチェック項目で点検しましたが、問題はありませんでした」
胸ポケットから出した用紙を取り出しながら蒼真は報告した。
「悪いな。せっかくの昼休みなのにこんな事に時間を使わしてしまって」
「いえ。生徒会に入った以上、仕事はこなさないといけないと思うので」
「ありがとう。なら、これからも頼むぞ。まずは今日からの部活勧誘の仕事からだが」
「はい、わかりました」
蒼真の仕事を見届けた一彦は帰って行った。
「俺も戻るか」
蒼真はまだ昼食を取っていなかったのを思い出し、足早に教室へと向かっていった。
教室に戻り、簡単に昼食を済ませると残り少なくなった昼休みを蒼真は寝て過ごす事にした。
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