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鬼の魔法使いは秘密主義

瀬戸暁斗

集会

 次の日の朝早く、蒼真は生徒会室にいた。そこには生徒会役員全員が揃っている。


「みんなおはよう。今日は集会で新役員の発表があるわよ。よろしくね」


「お前もスピーチがあるだろ。ちゃんと考えてるのか?」


「そんなの大丈夫よ。考えて話すより話しながら考えた方が私のやり方に合ってるのよ」


「会長っていつもそんな感じでスピーチしてたんですかぁ?」


「ええ」


「すごいですね。アタシには絶対できないです」


「そんな事ないわよ。慣れると簡単よ」


 集会前にもかかわらず、緊張感のない先輩達を蒼真と志乃は見ていた。


「1年間生徒会にいたらああいう風になるのかしら?」


「いや、あの人達だけだろう」


「おい恵。1年が呆れた目で見てるぞ」


「えっ! ひどいなぁ。でも、蒼真君っていつもあんな目をしてると思うわよ」


「会長。さすがの俺でもいつもって訳ではないですよ」


「そうかしら?」


 恵は楽しげに笑った。蒼真をからかうのが楽しみになっているようである。


「みなさん、そろそろ時間だと思いますよ」


 時間を確認していた志乃が他の役員に向けて言った。


「もうそんな時間ですかぁ。時間が経つのは早いですねぇ」


「じゃあ行きましょうか」


 6人は生徒会室を出て、講堂へと向かった。








 6人が講堂に着くと、そこには立花がいた。


「あれ? なぜ立花先生がここに?」


 担任である彼女に志乃が尋ねた。


「光阪さんから聞いてないですか? 私は生徒会の顧問をしてるんですよ」


「そうなんですか。よろしくお願いします」


「まぁ顧問といっても、生徒会の活動に関しては基本的に会長に任せるのが学校の方針なので、顧問らしい事は出来ていないんですけどね」


 そう言って彼女は苦笑いをした。


「光阪さん、そろそろ集会も始まりますからよろしくお願いしますね」


「わかりました。任せておいてください」


 そんなやりとりをしていると、続々と講堂へ生徒が入ってきた。


「やっぱり人が入ってきたら緊張しますねぇ」


「お前の声からは全く緊張感を感じないけどな。まぁアタシ達は喋らないし、そんなに緊張する事もないだろう」


 どんな場面でもぶれない2年生とは対照的に、緊張のあまり体が硬直している志乃に気づいた蒼真は迷った結果、彼女に声を掛ける事にした。


「志乃。大丈夫か?」


「え、ええ。だ、大丈夫…かな?」


 大丈夫では無いようだ。顔がまだ青白い。


「先輩達すごいね。全く緊張してないし」


「これが1年間の差なんだろうな」


 そう言う蒼真も全く緊張をしているようには見えない。
 いや、本当にしていないのだ。
 そんな状況の中、ようやく全校集会が始まろうとしていた。








 集会が始まり、まず最初に新生徒会役員と新風紀委員の任命があった。
 その最中に蒼真は不知火と目が合ったが、不知火の方がきまり悪そうに視線をそらせていった。
 やはり、昨日の一件でいろいろ考えたのだろう。


 その任命を見ている生徒達の中で、どういう風に生徒会役員が決まるのかわかっている者達は、今年のトップはこの2人なのかと、少しざわついていた。
 こうして任命が終わり、蒼真は正式に生徒会副会長となったのである。
 その後も校長の話、会長のスピーチ、最後に今年度の部活動の予算会議で決まった事の発表や連絡事項の確認をして、全校集会は終わった。








 集会が終わり、蒼真達生徒会役員は生徒が出て行った講堂の中にまだ残っていた。


「今日の集会もうまくいったわね」


「そうだな。でも今日の放課後からは部活の勧誘が始まるから、また忙しくなるだろうな」


「そうですねぇ。去年は大変だったなぁ」


「ほんとだな。怪我人が出ないといいけど」


 そこまで聞いた志乃が不安を隠しきれずに尋ねた。


「あの、先輩。部活勧誘ってそんなにすごいんですか?」


「志乃さん気になる? じゃあ放課後に生徒会室まで来てね」


「か、会長! ちゃんと言ってくださいよ!」


 焦る志乃を見て、恵はとても楽しそうにしている。人をからかうのがやはり好きなのだろう。


「ちゃんと授業に間に合うように教室に戻るのよ」


 そう言って恵は一足先に帰って行った。


「すまないな、明智。あいつはいつもあんな奴なんだ」


「でも、なんか会長って1年生が入ってから楽しそうですねぇ」


「同意見だな」


「そうですか…」


 志乃は半ば諦めたような表情になった。


「アタシ達も教室に戻ろうか」


「そうですねぇ。じゃあみなさん、また放課後ですねぇ」


 残された5人は授業に遅れないようにそれぞれの教室へと向かって行った。








 蒼真と志乃が教室に向かっている最中、志乃は何かぶつぶつ呟いている。


「……」


 きっと放課後の仕事の事だろうと思った蒼真はその事には触れないようにしようと思った。








 彼らが教室に着くと、まだ授業は始まっていなかった。


「おっ、蒼真。お疲れさん」


 修悟の机に座っている直夜が声を掛けた。


「ちゃんと自分の席に座れ。修悟が困ってるだろう」


「いや、大丈夫だよ。直夜の性格もわかってきたし」


「ほら、大丈夫だって」


「そういう問題でもないだろう。もうすぐ授業が始まるぞ。早く自分の席につけ」


「わかったわかった。さすがは副会長様だ。真面目でいらっしゃる」


 そんな軽口を叩きながら直夜は自分の席に戻った。


「いつも悪いな。あんな奴の面倒を見させるみたいになって」


 蒼真は、横にいる修悟に申し訳なさそう謝った。


「そんなの気にしなくていいって。なんか、友達してるなぁって思うから楽しいんだ」


 本当に修悟はいい奴だ。


「あっ、何か送られてきたよ」


 授業開始時刻になり、それぞれの机のディスプレイに1時間目の課題などが送られてきた。これを終わらせれば、授業はそこで終了となるのだ。


 この時代になり、教師は少なくなった。授業で教師が生徒教えるのは、魔法実技くらいのものだ。
 なので、今蒼真達が受けている数学はそれぞれが自分で理解しようとしている。
 それができるほどに送られてきた資料がわかりやすく、なおかつ生徒が優秀なのである。


 そのような環境で午前中の授業は問題無く進んでいった。

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