鬼の魔法使いは秘密主義
出会い
春。
桜並木の下を新しい制服を着た少年少女達がある場所に向かって歩いている。
そう、今日は3000年の4月5日土曜日。国立東京魔法高等学校の入学式当日である。全てで11校ある魔法高校、8校ある魔法大学も同じ日に入学式を迎えた。
そんな新しい環境に置かれるせいか、新入生達は期待や緊張の入り混じった表情で魔法高校の門を潜るのであった。
その中で明らかに表情の異なる少年がいた。
「はぁ…」
面倒そうにため息をついた少年は、新入生の集合場所である講堂へと向かった。
入学式では、普通高校と同じように粛々と進められ、1学年7クラスの200人が新しく新入生として入学した。
魔法高校には、魔法応用科と魔法工学科が設置されていて、少年は魔法を防衛以外にも使い様々な事を発展させるための方法を学ぶ魔法応用科へ入った。
また、魔法工学科とは魔法を発動する際に使用する補助器具や魔法を使った機器などの作成方法を学ぶ学科である。
入学式が終わり、少年は1-Aの教室にいた。
周りでは中学校が同じ同士で会話をしている者達もいたが、彼は1人席に座り空中ディスプレイを動かしている。
「ちょっとそこの君」
少年は隣から声をかけられたので、ディスプレイを動かす手を止めて声の主の方を見た。
「ごめんね。急に話しかけて。僕同じ中学の人がいないから話す相手がいなかったんだ」
「いや、全く問題ない。俺も1人だったからな」
「僕は細見修悟。修悟って呼んで。これからよろしくね」
「ああ。俺は結城蒼真。蒼真でいい。よろしくな、修悟」
少年、結城蒼真は軽く微笑んだ。
そうして蒼真と修悟が少し話をしていると、1人の女性が教室に入ってきた。
「みなさん座って。HRをします」
教師らしいその女性は立ち上がっていた生徒に座るように言った。
そしてHRが始まった。
「ようこそ国立東京魔法高校へ。私はこのクラスの担任となった立花です。先程HRと言いましたが、この学校には基本的にHRはありません。連絡事項などは机のディスプレイから各自確認するようにしてください」
生徒の半数以上が机に内蔵されたディスプレイを見て驚いていた。蒼真は先程から触っていたので驚かなかったのだが。
HRは順調に進み、ディスプレイの操作法や魔法実技以外の授業でそれを使うということなど、学校に関することの説明をして終わった。
「ではこれでHRは終わります。明日1日オリエンテーションがあり明後日から授業が始まりますので、新しい生活を楽しんでくださいね」
そう言って立花は教室を出て行った。その瞬間、修悟が蒼真に話しかけた。
「蒼真。この後なんだけど—」
「悪いがトイレに行くから話は後にしてくれないか?」
「じゃあ君が戻って来てから話すよ」
蒼真はトイレに向かうべく教室を出た。
用を足し、教室へ戻ろうとすると彼は誰かから呼び止められた。
「君が結城君?」
「そうですがあなたはどなたですか?」
「先に名乗った方が良かったわね。私は光阪恵。本校の生徒会長です」
「光阪…。あの光阪ですか?」
蒼真は少し驚いたような表情を見せた。
それもそのはずで光阪家とは、「七元素」の一角を担う家なのである。
「その生徒会長が俺に何の御用ですか?」
「ここでは話しにくいから生徒会室までついて来てくれない?」
「すみませんが、友人を待たせているので…」
「そうなのね。なら、明日のオリエンテーションが終わった後に来てくれないかな?」
「わかりました。明日ですね」
蒼真は恵と別れ、教室へ戻った。そこでは修悟が1人の女子生徒と話をしていた。そして、戻ってきた蒼真に気づいたのか彼に向かって手を振った。
「遅かったね。何かあったの?」
と、修悟が尋ねた。
「ああ。ちょっと会長に呼ばれてな」
蒼真がそう答えると、先程まで修悟と話していた女子生徒が蒼真に話しかけてきた。
「えっ! 会長と会っていたの? 知り合いか何かなの?」
蒼真は少しバツの悪そうな顔をした。
「おい修悟。この人は?」
「入学式で新入生代表挨拶をしてた明智さんだよ。覚えてない?」
「残念ながら人の顔や名前を覚えるのは苦手でな」
「はじめまして。明智志乃です。結城君だよね。さっき細見君から話を聞いていたわ。よろしくね」
「こちらこそよろしく。あと俺のことは蒼真でいい。名字で呼ばれるのはあまり好きじゃない」
「じゃあ僕も修悟でいいよ」
「わかったわ。なら私も志乃って呼んでね」
それぞれ自己紹介を終えて、少し話した後志乃は他のクラスメイトの元へと行った。
「そういえば俺がトイレに行く前に何か話そうとしていなかったか?」
「あっ忘れてた。部活の見学に一緒に行かないか誘おうと思ってたんだ。今から行かない?」
「悪いが明日生徒会室に行かないといけないからその用事が終わってから部活の方は決めようと思っているんだが…」
「それなら明後日に見学に行こうよ」
「ああ。大丈夫だが今日はだめなのか?」
「うん。今日は早めに帰らないといけないからね」
修悟はそう言っている間に身支度を済ませていた。
「それじゃあまた明日」
彼は帰って行った。
そして蒼真も机のディスプレイを消し、家路についた。
桜並木の下を新しい制服を着た少年少女達がある場所に向かって歩いている。
そう、今日は3000年の4月5日土曜日。国立東京魔法高等学校の入学式当日である。全てで11校ある魔法高校、8校ある魔法大学も同じ日に入学式を迎えた。
そんな新しい環境に置かれるせいか、新入生達は期待や緊張の入り混じった表情で魔法高校の門を潜るのであった。
その中で明らかに表情の異なる少年がいた。
「はぁ…」
面倒そうにため息をついた少年は、新入生の集合場所である講堂へと向かった。
入学式では、普通高校と同じように粛々と進められ、1学年7クラスの200人が新しく新入生として入学した。
魔法高校には、魔法応用科と魔法工学科が設置されていて、少年は魔法を防衛以外にも使い様々な事を発展させるための方法を学ぶ魔法応用科へ入った。
また、魔法工学科とは魔法を発動する際に使用する補助器具や魔法を使った機器などの作成方法を学ぶ学科である。
入学式が終わり、少年は1-Aの教室にいた。
周りでは中学校が同じ同士で会話をしている者達もいたが、彼は1人席に座り空中ディスプレイを動かしている。
「ちょっとそこの君」
少年は隣から声をかけられたので、ディスプレイを動かす手を止めて声の主の方を見た。
「ごめんね。急に話しかけて。僕同じ中学の人がいないから話す相手がいなかったんだ」
「いや、全く問題ない。俺も1人だったからな」
「僕は細見修悟。修悟って呼んで。これからよろしくね」
「ああ。俺は結城蒼真。蒼真でいい。よろしくな、修悟」
少年、結城蒼真は軽く微笑んだ。
そうして蒼真と修悟が少し話をしていると、1人の女性が教室に入ってきた。
「みなさん座って。HRをします」
教師らしいその女性は立ち上がっていた生徒に座るように言った。
そしてHRが始まった。
「ようこそ国立東京魔法高校へ。私はこのクラスの担任となった立花です。先程HRと言いましたが、この学校には基本的にHRはありません。連絡事項などは机のディスプレイから各自確認するようにしてください」
生徒の半数以上が机に内蔵されたディスプレイを見て驚いていた。蒼真は先程から触っていたので驚かなかったのだが。
HRは順調に進み、ディスプレイの操作法や魔法実技以外の授業でそれを使うということなど、学校に関することの説明をして終わった。
「ではこれでHRは終わります。明日1日オリエンテーションがあり明後日から授業が始まりますので、新しい生活を楽しんでくださいね」
そう言って立花は教室を出て行った。その瞬間、修悟が蒼真に話しかけた。
「蒼真。この後なんだけど—」
「悪いがトイレに行くから話は後にしてくれないか?」
「じゃあ君が戻って来てから話すよ」
蒼真はトイレに向かうべく教室を出た。
用を足し、教室へ戻ろうとすると彼は誰かから呼び止められた。
「君が結城君?」
「そうですがあなたはどなたですか?」
「先に名乗った方が良かったわね。私は光阪恵。本校の生徒会長です」
「光阪…。あの光阪ですか?」
蒼真は少し驚いたような表情を見せた。
それもそのはずで光阪家とは、「七元素」の一角を担う家なのである。
「その生徒会長が俺に何の御用ですか?」
「ここでは話しにくいから生徒会室までついて来てくれない?」
「すみませんが、友人を待たせているので…」
「そうなのね。なら、明日のオリエンテーションが終わった後に来てくれないかな?」
「わかりました。明日ですね」
蒼真は恵と別れ、教室へ戻った。そこでは修悟が1人の女子生徒と話をしていた。そして、戻ってきた蒼真に気づいたのか彼に向かって手を振った。
「遅かったね。何かあったの?」
と、修悟が尋ねた。
「ああ。ちょっと会長に呼ばれてな」
蒼真がそう答えると、先程まで修悟と話していた女子生徒が蒼真に話しかけてきた。
「えっ! 会長と会っていたの? 知り合いか何かなの?」
蒼真は少しバツの悪そうな顔をした。
「おい修悟。この人は?」
「入学式で新入生代表挨拶をしてた明智さんだよ。覚えてない?」
「残念ながら人の顔や名前を覚えるのは苦手でな」
「はじめまして。明智志乃です。結城君だよね。さっき細見君から話を聞いていたわ。よろしくね」
「こちらこそよろしく。あと俺のことは蒼真でいい。名字で呼ばれるのはあまり好きじゃない」
「じゃあ僕も修悟でいいよ」
「わかったわ。なら私も志乃って呼んでね」
それぞれ自己紹介を終えて、少し話した後志乃は他のクラスメイトの元へと行った。
「そういえば俺がトイレに行く前に何か話そうとしていなかったか?」
「あっ忘れてた。部活の見学に一緒に行かないか誘おうと思ってたんだ。今から行かない?」
「悪いが明日生徒会室に行かないといけないからその用事が終わってから部活の方は決めようと思っているんだが…」
「それなら明後日に見学に行こうよ」
「ああ。大丈夫だが今日はだめなのか?」
「うん。今日は早めに帰らないといけないからね」
修悟はそう言っている間に身支度を済ませていた。
「それじゃあまた明日」
彼は帰って行った。
そして蒼真も机のディスプレイを消し、家路についた。
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