鬼の魔法使いは秘密主義
秘密
結城蒼真は、1人家の前まで帰ってきていた。
1人という状況は彼にとって都合が良いものであった。
なぜならば、彼には自分のごく身近な人物しか知らない秘密を持っていたからである。
2984年10月2日、結城蒼真は京都で生まれた。
結城家は、平安時代より京都で「術」と呼ばれる当時の魔法のようなものを使っていた。
この術というものが、後に伝わる妖怪を作り出していたのである。
そんな術を使う一族は数家あったのだが、中でも結城家とその親類は強い力を持っていた。
それは一族に伝わるある術が隠されていたからであった。
その術こそ、蒼真の数ある秘密の1つである「鬼人化」である。
この鬼人化という術はただの術ではない。対象者の体に直接術を発動させるための魔法陣を書かなければならないのだ。
蒼真は6歳の時に魔法陣を書かれた。
その跡はすぐに消えたのだが、魔法陣は体内で活き続けている。
もし、自らの力が弱まってしまうと魔法陣の力に呑み込まれ、暴走、もしくは死に至る危険がある。
例えば、牛鬼や百々目鬼などが力が暴走した術者の結末である。
また、結城家の血筋以外の者がこの術を使うと確実に暴走するように改良されている。
そのようなリスクを背負ってでも鬼人化は一族にとって重要な術なのである。
蒼真は家のドアを開けた。
「ただいま」
すると、家の奥から2人の男女が玄関へと向かってきた。
「「おかえりなさいませ、若」」
「若はやめろと言っているだろ」
蒼真は露骨に嫌そうな顔をした。
結城家では、16歳以上の一族の最も力を持つ者が当主となる。
力とは鬼人化した際の魔法的な強さの事で、術を発動した時に力の違いによって体の色が変わっている。
蒼真は鬼人化した際に最も力のある「白鬼」となることができる。
この白鬼は過去に3人しかいない。つまり、彼は4人目の白鬼となる。
よって、16歳の誕生日に家督を継ぎ当主となることが確実となっている。
「それより、俺の秘密は誰にも話すんじゃないぞ。直夜、澪」
「「わかっております」」
直夜、澪と呼ばれた2人は結城家から派遣された蒼真の守護者である。蒼真の方が実際には強いのだが…。
3人は夕食を済ませ、リビングにいた。
「学校ではクラスメイトの方と楽しげにお話しされていましたね」
「なんだ、見ていたのか。それとその喋り方はやめろ。守護者とはいえ、一応幼馴染なんだしな」
直夜と澪は蒼真の守護者であり、幼馴染であり、百瀬直夜、茨木澪という名前で学校に通うクラスメイトでもある。
「わかったよ。そうする」
「もし私達の関係を誰かに聞かれたら、親戚と言えばいいのよね?」
「ああ。学校の書類にはそう書いてある」
「さすが結城家。根回しは完璧だな」
そんな他人に聞かれてはまずいような話をした後、直夜が思い出したように急に言った。
「そういえば結城の親父さんから連絡が来てたぞ」
「おい。そういう大事な事は早く言えよ」
「ほんと何してるの。いつもちょっと遅いわよ」
2人にそう責められた彼はテーブルの上の端末を操作し、立ち上がった蒼真の後ろに澪と並んで立った。
するとテーブルの向かい側にある男のホログラムが映し出された。
「こんばんは、父上。夜分遅くにすみません」
「構わんよ。元気そうだな、蒼真」
その男は結城謙一郎。結城家の現当主である。
「父上、本日はどのような要件で?」
「いや、特に用があるという訳でもないが今日はお前達の入学式だったからな。祝いの一言でも入れておこうと思ってな」
「そうですか。ありがとうございます」
「用件が無いのにあまり長くしていると母さんに小言を言われるからな。そろそろ切るぞ。」
「はい。あまり母上を怒らせないようにした方がいいですよ」
「言うようになったじゃないか。まぁ頑張れよ次期当主」
そう言ってホログラムは消えた。
「「…はぁ…」」
直夜と澪は同時にため息をついた。
「結城家関係の連絡って緊張して疲れるんだよな」
「同感ね」
「そうか?」
どうやら守護者の方が疲れるらしい。
「お前ら親子ってほんと仲良いよな」
「普通だろ。お前達はどうなんだ?」
「自分の所は守護者としての事務連絡くらいだよ」
「私もそんな感じね」
蒼真は子供の頃からずっと一緒にいるこの守護者達のことでまだ知らない事があるんだと感じた。
「俺も思い出した事があるんだが」
「何?」
「明日、生徒会室に行かないといけなくなった」
「もう学校で何かやらかしたのか?」
「何故そうなるんだ。俺がそんな目立つ事する訳ないだろ」
直夜は生徒会室に呼ばれる=何か起こすだと考えているようだ。
「それもそうだ。面倒な事嫌いだもんな」
「お前が面倒事を起こしてくるからだろう。俺達で後始末をやってるんだぞ」
今にも言い合いが始まりそうな雰囲気になったところで澪が間に入った。
「はいはい2人とも落ち着いて。そろそろ寝よう。明日もあるんだし」
時刻は0時を少し過ぎたくらい。
「まだ大丈夫だろ」
「何言ってるの、直夜。あなた一番朝が弱いじゃない。私達と目覚まし時計無しでちゃんと起きれるの?」
「すみません。もう寝ます」
痛い所を突かれ、直夜はそそくさと自分の寝室へ戻るべくリビングを出ていった。
蒼真は、そんな様子を見ながら少し微笑んでいた。
「あら、どうして笑ってるの?」
彼の表情に気づいた澪は、また微笑みながら尋ねた。
「いや、今日もいい日だったなと思ってな」
「そうね。でもまだ1日目だからね。明日からも頑張ってくださいませ、若」
そう言って澪も寝室へと向かって行った。
1人リビングに残った蒼真もカップに残った紅茶を飲み干し、寝室へ行き、眠りについた。
こうして、高校生活の初日が幕を閉じた。
1人という状況は彼にとって都合が良いものであった。
なぜならば、彼には自分のごく身近な人物しか知らない秘密を持っていたからである。
2984年10月2日、結城蒼真は京都で生まれた。
結城家は、平安時代より京都で「術」と呼ばれる当時の魔法のようなものを使っていた。
この術というものが、後に伝わる妖怪を作り出していたのである。
そんな術を使う一族は数家あったのだが、中でも結城家とその親類は強い力を持っていた。
それは一族に伝わるある術が隠されていたからであった。
その術こそ、蒼真の数ある秘密の1つである「鬼人化」である。
この鬼人化という術はただの術ではない。対象者の体に直接術を発動させるための魔法陣を書かなければならないのだ。
蒼真は6歳の時に魔法陣を書かれた。
その跡はすぐに消えたのだが、魔法陣は体内で活き続けている。
もし、自らの力が弱まってしまうと魔法陣の力に呑み込まれ、暴走、もしくは死に至る危険がある。
例えば、牛鬼や百々目鬼などが力が暴走した術者の結末である。
また、結城家の血筋以外の者がこの術を使うと確実に暴走するように改良されている。
そのようなリスクを背負ってでも鬼人化は一族にとって重要な術なのである。
蒼真は家のドアを開けた。
「ただいま」
すると、家の奥から2人の男女が玄関へと向かってきた。
「「おかえりなさいませ、若」」
「若はやめろと言っているだろ」
蒼真は露骨に嫌そうな顔をした。
結城家では、16歳以上の一族の最も力を持つ者が当主となる。
力とは鬼人化した際の魔法的な強さの事で、術を発動した時に力の違いによって体の色が変わっている。
蒼真は鬼人化した際に最も力のある「白鬼」となることができる。
この白鬼は過去に3人しかいない。つまり、彼は4人目の白鬼となる。
よって、16歳の誕生日に家督を継ぎ当主となることが確実となっている。
「それより、俺の秘密は誰にも話すんじゃないぞ。直夜、澪」
「「わかっております」」
直夜、澪と呼ばれた2人は結城家から派遣された蒼真の守護者である。蒼真の方が実際には強いのだが…。
3人は夕食を済ませ、リビングにいた。
「学校ではクラスメイトの方と楽しげにお話しされていましたね」
「なんだ、見ていたのか。それとその喋り方はやめろ。守護者とはいえ、一応幼馴染なんだしな」
直夜と澪は蒼真の守護者であり、幼馴染であり、百瀬直夜、茨木澪という名前で学校に通うクラスメイトでもある。
「わかったよ。そうする」
「もし私達の関係を誰かに聞かれたら、親戚と言えばいいのよね?」
「ああ。学校の書類にはそう書いてある」
「さすが結城家。根回しは完璧だな」
そんな他人に聞かれてはまずいような話をした後、直夜が思い出したように急に言った。
「そういえば結城の親父さんから連絡が来てたぞ」
「おい。そういう大事な事は早く言えよ」
「ほんと何してるの。いつもちょっと遅いわよ」
2人にそう責められた彼はテーブルの上の端末を操作し、立ち上がった蒼真の後ろに澪と並んで立った。
するとテーブルの向かい側にある男のホログラムが映し出された。
「こんばんは、父上。夜分遅くにすみません」
「構わんよ。元気そうだな、蒼真」
その男は結城謙一郎。結城家の現当主である。
「父上、本日はどのような要件で?」
「いや、特に用があるという訳でもないが今日はお前達の入学式だったからな。祝いの一言でも入れておこうと思ってな」
「そうですか。ありがとうございます」
「用件が無いのにあまり長くしていると母さんに小言を言われるからな。そろそろ切るぞ。」
「はい。あまり母上を怒らせないようにした方がいいですよ」
「言うようになったじゃないか。まぁ頑張れよ次期当主」
そう言ってホログラムは消えた。
「「…はぁ…」」
直夜と澪は同時にため息をついた。
「結城家関係の連絡って緊張して疲れるんだよな」
「同感ね」
「そうか?」
どうやら守護者の方が疲れるらしい。
「お前ら親子ってほんと仲良いよな」
「普通だろ。お前達はどうなんだ?」
「自分の所は守護者としての事務連絡くらいだよ」
「私もそんな感じね」
蒼真は子供の頃からずっと一緒にいるこの守護者達のことでまだ知らない事があるんだと感じた。
「俺も思い出した事があるんだが」
「何?」
「明日、生徒会室に行かないといけなくなった」
「もう学校で何かやらかしたのか?」
「何故そうなるんだ。俺がそんな目立つ事する訳ないだろ」
直夜は生徒会室に呼ばれる=何か起こすだと考えているようだ。
「それもそうだ。面倒な事嫌いだもんな」
「お前が面倒事を起こしてくるからだろう。俺達で後始末をやってるんだぞ」
今にも言い合いが始まりそうな雰囲気になったところで澪が間に入った。
「はいはい2人とも落ち着いて。そろそろ寝よう。明日もあるんだし」
時刻は0時を少し過ぎたくらい。
「まだ大丈夫だろ」
「何言ってるの、直夜。あなた一番朝が弱いじゃない。私達と目覚まし時計無しでちゃんと起きれるの?」
「すみません。もう寝ます」
痛い所を突かれ、直夜はそそくさと自分の寝室へ戻るべくリビングを出ていった。
蒼真は、そんな様子を見ながら少し微笑んでいた。
「あら、どうして笑ってるの?」
彼の表情に気づいた澪は、また微笑みながら尋ねた。
「いや、今日もいい日だったなと思ってな」
「そうね。でもまだ1日目だからね。明日からも頑張ってくださいませ、若」
そう言って澪も寝室へと向かって行った。
1人リビングに残った蒼真もカップに残った紅茶を飲み干し、寝室へ行き、眠りについた。
こうして、高校生活の初日が幕を閉じた。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
17
-
-
32
-
-
52
-
-
337
-
-
157
-
-
111
-
-
24251
-
-
26950
-
-
841
コメント