悪役令嬢ですが、ヒロインを愛でたい

唯野ましろ

閑話 悪役令嬢の兄ですが、可愛い妹を悪い虫から守りたい!!




「大丈夫だ!私は麻里を好いているからな。それに麻里も私を好いてくれていると言っていた。」



・・・・・。



「「なんだとおおおおーーーーーー!!!!」」


俺とリリの声が重なる。


———前世での俺の努力が…………。俺の可愛い麻里が…………。



◇◇◇◇◇◇◇◇



「エリック兄様?
こんな早くからどこかへお出かけですか?」



ベルナルドとの取引の次の日。
俺は朝早くから暗めのローブのフードを深くかぶり宿泊先から出て行こうとしたが、リリに見つかる。


先日、エイタリーに滞在しているルカから連絡があった。どこから嗅ぎつけたのかは知らないが、俺たちがクソ第二王子から招待を受けたことを知り、リリに会いたいと言ってきた。断るなら、宿にまで会いに来るというのだから、俺は待ち合わせの場所に一人で向かう予定だった。



「リリ…………。いや、ちょっとエイタリー国の町並みを見に…………」



「では、私も連れてってくださいな」



「え…………でも、すぐ帰って来るぞ…………」



渋る俺に畳み掛けるようにして、リリが言葉を発した。



「私がついて行ったら何か問題ございますか?」



「いや、そんなことはないが…………」



「では。決まりですね!」



リリが俺と一緒に行動しようとしてくれるのはすごく嬉しい。一緒に行きたいというなら了承するしかない。
俺はリリにお願いされたら断れない…………。
リリはわかって言っていた。


——そんなところも可愛いが…………。


だが、これから会うのは憎っくきリリの婚約者だ。


——麻里は、日本にいるから手出しできないが、リリは絶対に俺が守らねば!!



俺たちは一応貴族なので護衛がつき、外出するときはあまり目立たないように俺たちも護衛も変装をする。
この国に来てから、誰かに見られているような気がするのでしっかりと変装していた。


——ベルナルド関係の護衛か何かか…………。それなら今日は大丈夫か。



◇◇◇◇◇◇◇◇


エイタリー国の王都の町並みは、見たことのない店が立ち並び、魔法があちこちで使われていた。
普通は貴族にしか魔法を使えないのだが、エイタリー国では魔法をこめた石を使って誰でも簡単に使える。
それも、クソ第二王子が色々な魔法を石にこめては寄付という形で町の活性化に貢献している。




「リリィ!!」


ルカが、リリを見つけると声を張り上げ呼んだ。


「…………ルカ様!? ルカ様がどうしてエイタリー国へ?」


そこには身長が伸び、髪も短髪で、少し大人な顔つきになったルカがいた。
俺程ではないが、カッコよくなっているルカに少々イラついた。


ルカは早くから魔法の才能が開花した為、色々忙しいと聞いていたが、割と連絡を取っていた。
しかし、俺もリリも領地改革で忙しく彼此二年ぶり再開のだった。


「僕の魔法の先生がエイタリーの人でね、何ヶ月間はこっちで魔法を教えてもらっているんだ。
今日はエリックにエイタリーの街を案内しようと思ったんだけど聞いていない??
こないだリリィに送った手紙にも書いたんだけど…………」



「手紙?手紙なんて届いておりませんわ…………。
まさか…………エリック兄様…………?」



ギクッ


連絡を取っていたというのも、ルカからリリに手紙が来るからだ。
俺はリリに気づかれないようにその手紙を保管していた。
そして怪しまれないようにルカに俺から手紙を送っていた。



リリに手紙を渡さなかったのはリリにお煎餅の研究に集中して欲しかったからだ…………。


——そんな訳がないがな…………。


「ほら、リリはお煎餅の研究で忙しかったろ?邪魔してはいけないと思ってなっ!
決して、リリとルカの仲を裂いていた訳ではないぞ!!
ルカも毎月手紙なんて送ってくるなよな!!」



「兄様…………」


リリが冷たい目で俺を見る。


——呆れた顔も可愛いよ。



ルカは大体予想がついていたのか、俺を咎めなかった。
毎回送ってたのに相手に読まれず、返事もこないでよく心が折れずに出し続けたな…………。
少しは、骨のある———


———いやいや、俺が手紙を送ってやったからだな。感謝しろ。




「これからはリリィに直接届くように鳩に手紙をつけて送ることにするよ。
忙しいと思うけど、時々でいいから手紙くれると嬉しいな」


リリの前だからとかっこつけて紳士な対応をしている。


——少し見ないうちにかっこつけやがって…………小僧が…………。



「…………わかりましたわ。しかし、ルカ様もお勉強など忙しいのでは?」



「リリィからの手紙は勉強のやる気に繋がるからいいんだよ」



「そうですか…………」


ルカがリリに笑顔を向けると、リリもつられてふんわりと笑顔になっていた。


——リリが…………男に笑った…………。





ガーーーーーーーーーン



◇◇◇◇◇◇◇◇




俺がショックを受けて思考を停止していると、いつの間にかリリとルカの姿がなかった。



「リリは!?」


「エリック様? 大丈夫ですか?
リリ様ならルカ様とご一緒にどこかへ行かれました。


ルカ様の護衛の方がついていかれたので、心配ないかと思いますが…………」



「ルカと一緒の時点で心配だーーーーーーーー!!」


俺は必死でリリとルカを探す。
遠くには行っていなかったようで、すぐにリリを発見できた。


俺は急ぎ足でリリの元へ向かった。


「どこに行ってたんだ?
ルカ!!私の可愛いリリに何かしてないだろうな!!」


リリの後から来たルカに俺がそういうと、
リリはビクっと体が反応した。



「なんだリリのその反応は…………ルカーーー!!何があった!?」



「ははは、心配しすぎだよエリック」


ルカは焦る俺を笑って見てきた。


——リリが、男に顔を赤くしている…………。あのリリが…………。



「帰るぞ、リリ!マリーもいくぞ!!」


俺はリリーを保護すると、馬車へ戻ろうとする。




「あっ!!はい!!エリック様!!
今行きま————


ドンッ


「あ、すみません…………」



「君…………」



マリーは誰かとぶつかったみたいで、謝っていた。
何か会話をしているみたいだが、マリーはフードを深くかぶりあまり顔を見せないようにしていた。




「どうした?マリー?」



「エリック様…………私急いでますので失礼いたします!!」



「何かあったのか?」



「人違いみたいです!この国は広いですから似てる人の一人や二人いそうですしね…………。
お待たせしましたが、行きましょう!」




「ああ、そうだな…………」



マリーがそう言うので、振り返ろうとした際にマリーがぶつかった相手と目があう。
この感じ…………。 何か引っかかる…………。
マリー…………。人違い…………。エイタリー…………。


もう少しで思い出せそうなところで、


「リリィ、手紙待ってるからね!! またね!!」



ルカがリリの手を握っていた。


「え、えぇ…………」



「ルカアアア!!リリに触るの禁止だああああ!!」




———前世での俺の努力が…………。俺の可愛いリリが…………。




俺はリリが恋に落ちた瞬間を見てしまった…………。


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