『元SSSランクの最強暗殺者は再び無双する』
教授とベルトの推理
教授《プロフェッサー》
大学《アカデミー》とは研究機関の総称。
教授とは大学に所属する研究者の事だが、主に魔法や魔物の研究者をそう呼ぶ傾向が高い。
ベルトは冒険者という職業柄、教授からの依頼を受ける事も少なくなかった。
「おや、その顔は私を女性だと思っていなかったようだね」
教授はベルトの内面を言い当てる。しかし、ベルトは動揺する様子もなく、
「失礼だったかな? 俺の知っている教授は、まるで東洋の仙人みたいな奴や軍師みたいな連中だったので」
「あぁ……」と彼女は何かを思い出すように宙に視線と泳がして、
「確かにその通りだね」と笑った。
「私の名前はクララ・フェアチャイルド・ボンだ。クララでも、フェアでも好きなように呼んでくれたまえ」
「俺の名前はベルト・グリム。冒険者だ……そして、例の競技の参加者でもある。それと、こっちが……」
「私はメイル・アイシュです。ベルト義兄さんと同じ冒険者をしています」
「……君は」とクララ教授は、研究者の目でメイルを観察した。
「聖女かい? それもただの聖女じゃない。勇者? それに天使……ってなんだいこりゃ?」
もしかしたら、彼女の眼鏡には魔法的な処理が施されていて、人には見えない何かが見えているのかもしれない。
「うむ……時間があればお嬢さんの事を調べたいのだけど……」
残念そうな教授に対して、メイルは「……機会がありましたら」と複雑そうな顔を断った。
「では、クララ教授」とメイルが本題に入る。もしかしたら、話題を変えるためなのかもしれない。
「スライムゴーレムの件ですが……どこの地方のスライムが使われたかわかりましたか?」
「おっと……ソイツは筋の言い質問だ」
クララ教授はお道化たように話を続ける。
「ここではない場所で捕えたスライムが使われていたら、どういう経緯で洞窟まで運ばれたか? それで十分に犯人にたどり着ける情報になる」
「えぇ、その通りです」とベルト。こう続ける。
「もしかしたら南国にある『死の森』から運ばれたのではないですか?」
「――――どうして、そう思ったんだい?」
「俺が考えているのは擦り合わせなんです」
「擦り合わせ? もう少し詳しく」
「先頭集団を狙ったスライムゴーレムによる襲撃……でも俺が考えているのは最後尾の事件。あの事件にはある魔物の毒が使われている。そう考えています」
「毒だって? 南国『死の森』に生息する魔物で、手足を砕ける毒なんて心当たりは……いや、待てよ。手足を砕いたのは二次的な事……毒とは無関係だとしたら……」
「はい、犯人はバジリスクの石化毒を使って、犯行に及んだ。俺はそう考えてます」
「なるほど、バジリスクか!」
バジリスク――――蛇の王と言われる魔物。
姿はトサカを持つ巨大な蛇だが、最大の特徴は猛毒を吐く事だ。
その毒を浴びた者は、末端部分――――つまり、手足から石化していくと言う。
「つまり、君はこう言うつもりだろ? 犯人は、バジリスクの猛毒を犯行に使い――――石化した手足を砕いた」
「はい」とベルトは頷いた。
あの凄惨な光景。ベルトは思い出す。
被害者たちを最初に見た印象を……
『芸術作品の彫刻。岩や氷、あるいは大木などをハンマーとノミで削る』
まさか―――― まさか――――
まさか、本当にそうだったと思う人間はどれほどいるだろうか?
犯人は石と化した人間をハンマーとノミで削った。 それが真相――――少なくともベルトは、そう推理したのだ。
ベルトの話を聞き、クララ教授は深い息を吐く。
「確かにスライムゴーレムの材料に使われたスライムの原産地を君たちの言う通り南国『死の森』だったよ」
「やはり……」
「バジリスクは、捕獲する事すら難しい魔物さ。 この町でバジリスクを使役できる魔物使いは限られている」
「少し待ちなさい」と彼女は手元の紙に、ペンを走らせた。
「これは?」
「最近、ある魔物使いがバジリスクの使役させる事に成功させた。そいつの居場所だ。気をつけて訊ねるといい
おそらく――――いや、確実に犯人だろうから」
大学《アカデミー》とは研究機関の総称。
教授とは大学に所属する研究者の事だが、主に魔法や魔物の研究者をそう呼ぶ傾向が高い。
ベルトは冒険者という職業柄、教授からの依頼を受ける事も少なくなかった。
「おや、その顔は私を女性だと思っていなかったようだね」
教授はベルトの内面を言い当てる。しかし、ベルトは動揺する様子もなく、
「失礼だったかな? 俺の知っている教授は、まるで東洋の仙人みたいな奴や軍師みたいな連中だったので」
「あぁ……」と彼女は何かを思い出すように宙に視線と泳がして、
「確かにその通りだね」と笑った。
「私の名前はクララ・フェアチャイルド・ボンだ。クララでも、フェアでも好きなように呼んでくれたまえ」
「俺の名前はベルト・グリム。冒険者だ……そして、例の競技の参加者でもある。それと、こっちが……」
「私はメイル・アイシュです。ベルト義兄さんと同じ冒険者をしています」
「……君は」とクララ教授は、研究者の目でメイルを観察した。
「聖女かい? それもただの聖女じゃない。勇者? それに天使……ってなんだいこりゃ?」
もしかしたら、彼女の眼鏡には魔法的な処理が施されていて、人には見えない何かが見えているのかもしれない。
「うむ……時間があればお嬢さんの事を調べたいのだけど……」
残念そうな教授に対して、メイルは「……機会がありましたら」と複雑そうな顔を断った。
「では、クララ教授」とメイルが本題に入る。もしかしたら、話題を変えるためなのかもしれない。
「スライムゴーレムの件ですが……どこの地方のスライムが使われたかわかりましたか?」
「おっと……ソイツは筋の言い質問だ」
クララ教授はお道化たように話を続ける。
「ここではない場所で捕えたスライムが使われていたら、どういう経緯で洞窟まで運ばれたか? それで十分に犯人にたどり着ける情報になる」
「えぇ、その通りです」とベルト。こう続ける。
「もしかしたら南国にある『死の森』から運ばれたのではないですか?」
「――――どうして、そう思ったんだい?」
「俺が考えているのは擦り合わせなんです」
「擦り合わせ? もう少し詳しく」
「先頭集団を狙ったスライムゴーレムによる襲撃……でも俺が考えているのは最後尾の事件。あの事件にはある魔物の毒が使われている。そう考えています」
「毒だって? 南国『死の森』に生息する魔物で、手足を砕ける毒なんて心当たりは……いや、待てよ。手足を砕いたのは二次的な事……毒とは無関係だとしたら……」
「はい、犯人はバジリスクの石化毒を使って、犯行に及んだ。俺はそう考えてます」
「なるほど、バジリスクか!」
バジリスク――――蛇の王と言われる魔物。
姿はトサカを持つ巨大な蛇だが、最大の特徴は猛毒を吐く事だ。
その毒を浴びた者は、末端部分――――つまり、手足から石化していくと言う。
「つまり、君はこう言うつもりだろ? 犯人は、バジリスクの猛毒を犯行に使い――――石化した手足を砕いた」
「はい」とベルトは頷いた。
あの凄惨な光景。ベルトは思い出す。
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まさか―――― まさか――――
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ベルトの話を聞き、クララ教授は深い息を吐く。
「確かにスライムゴーレムの材料に使われたスライムの原産地を君たちの言う通り南国『死の森』だったよ」
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