『元SSSランクの最強暗殺者は再び無双する』

チョーカー

依頼と推理

『マリア・フランチャイズからの依頼』

 競技中に行われた殺人を含む妨害工作の犯人捕縛。

 期間は3日

 それをベルトとメイルは受けた。

「ここには6人の参加者が亡くなっている。彼等が乗っていたはずのワイバーンは?」

「ワイバーンは3匹とも運営が発見して保護しているわよ」

「3匹とも無事か。被害者たちは乗っていた時に魔法戦で落下され――――いや、違うなぁ」

 ベルトは首を振った。

 あの日、あの時間、競技としての戦闘は禁止されていた。

 犯人は、それを無視しての攻撃したのだ。わざわざ、競技の規則に合わせて攻撃したとは思えない。 そもそも、犯人が競技参加者だとは限らない。

「――――なぜ、同じ場所に6人を集めた? そういう攻撃方法か?」

 ベルトは少し考える。 

 先頭集団を襲った者と同一犯場合――――事前にゴーレムを設置して自動で攻撃を開始させた。 ゴーレムを操れるほどの術者ならば、岩で崩して出入口を封じる仕掛けも可能だろう。

「なら、これも……か? これも何らかの方法を使って6人を地上で落とすような仕掛けを?」

 しかし、ベルトの考えを否定したのは意外な人物だった。

「義兄さん、考え過ぎなのでは? もう少し単純に、6人3チーム……誰か1人にでもトラブルがあった。だから、他の人達も飛行を止めて地上に着陸したのではないでしょうか?」

「なるほど……」とベルトも頷く。 

「当日は、中止もやむ得ない吹雪。トラブルの種はいくらでもあった……と?」

「はい。最後尾を飛ぶ者で信頼関係――――仲間意識が芽生えていたのではないでしょうか? 加えて――――」

 メイルは、当日の追い越し禁止についても触れた。

「天候が原因で追い越しは禁止でした。誰かが脱落しそうな時に無視して進まなければならない……そのような葛藤もなかったと思います」

「ない話ではない。実際に俺たちもマリアとシルフィドと強力して飛んでいた。しかし――――」 
 
「はい、私の話は憶測です。証拠と言えるものはありません」

「いや、想像は大切だ。 犯人は、被害者は、なぜこう言う行動をしたのか? 人の心はわからないものが……理解しようとする事で見えてくるものもある。例えば――――」

 ベルトは周囲を見渡す。

 ひんやりとした空気の流れ。

 犯人も感じていただろうか? ――――いや、当日は吹雪だった。

 どうして、この場所を選んだ? 時間か? 地形か? それとも――――

 様々な要因を考えていく。 根拠なき積み合わせ。

 すると、不意な閃きインスピレーションがベルトの脳裏を駆け抜けていった。

「……毒だ」

「え?」とメイルは聞き返した。

今度は、はっきりとベルトは口に――――

「この事件には、何らかの毒物が使われた可能性がある」 

 そう断言してみせたのだ。

 それは毒を得意とするベルトの直感によるものか?

 暗殺者としての経験則によるものか?

 しかし――――

「ちょっと、ちょっと」と待ったをかける人物。 それはマリアだった。

「待ちなさいよベルト。遺体からは毒物は発見されてないわよ。それに――――どう見ても遺体は毒殺じゃないでしょ?」

 マリアの言う事は正しい。 遺体の死因は、手足を砕き潰された事で激しい流血と痛みによるショック死。

 毒が関与するとは思えない。しかし、ベルトは――――

「スライムゴーレム」

「え?」

「スライムゴーレムを調べている魔物専門家はいるのか?」

「えぇ、大学《アカデミ》から教授《プロフェッサー》を呼んで調べて貰っているわ」

「うむ……」と唸るベルト。そんな彼にマリアは、

「ちょっと何なのよ! わかるように説明しなさい!」
 
 

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