『元SSSランクの最強暗殺者は再び無双する』

チョーカー

 空中戦(ドックファイト)

 この世界には様々な長距離競技がある。

 その競技で活躍……あるいは優勝するために仲間《チーム》を結成する。

 それは、まるで冒険者たちが迷宮を攻略するためにパーティを組むようだ。

 ならば、当然ある。役割――――

 戦士が前衛として魔物を押し返し、

 魔法使いが後衛として、必殺の大魔法を執行する。

 長距離競技でも様々な役割が存在している。例えば――――

 障害物のない短距離を高速で駆け抜ける――――TTスペシャリスト

 短距離の障害物を攻略する――――パンチャー

 1日限定の競技のみを専門とする――――クラシックスペシャリスト

 そして、今―――― ベルト&メイル組を牽引して、高速で飛翔する白い騎士。

 献身的に主役が活躍するために全てを捧げる者――――人は、それをルーラーと呼ぶ。

「見えて来たわよ! 聖騎士団たちの白いお尻が!」

「マリアさま、少々口が悪くなっておられますよ?」

「なによ、シルフィド。あなた、知らないの? こういう時は、鼓舞するために普段は使わない言葉を叫ぶのが正解なのよ」

「なるほど! そのような仕来りは、寡聞にして存じませんが……承知しました」

「え? シルフィド? あなた、何を言うつ……」

「自分たちだけが騎士ぶりやがって! 前から気に入らねぇんだよ、クソったれ!」

 普段のシルフィドからは想像すら難しい暴言。 暴言中の暴言だ。

 マリアを含め、メイルやベルトだって、ショックで顔が固まる。

 しかし、それも一瞬だけだった――――

「さて、お耳汚し失礼しました。それでもベルトさま……私たちも全力で飛べるのも、あと10秒足らずとなります」

「……そうか。それじゃ、お前等の気持ちもぶつけておいてやるよ。あの白い連中に」

「お心遣い感謝を―――― それからご武運を――――」

「それじゃねぇ! またゴールで会いましょう」とマリアも続ける。

 それから、マリア&シルフィド組のワイバーンは正面をベルトたちに明け渡すように――――

 直線距離。前方には5匹のワイバーンと白い騎士たち。

「この借り――――勝利で返す。行くぞ、メイル!」

「はい、準備は既に――――加速していきます!」

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・・

 ベルトたちの怒涛の追い上げ。 前方を飛ぶ騎士団にも察せられる。

「ついに来たか……ベルト・グリム」とフォルス団長は前方を見たまま呟く。

「ここは我らが阻止に向かいます」と部下たち。

「うむ、頼む。ここで奴を確実に落とせ」

 団長の言葉。 「御意に!」と3匹のワイバーンが先頭集団から離れる。

 残ったのは団長とアレクが乗る1匹と――――先ほどの説明で言う『運び屋ルーラー』が1匹の2匹のワイバーンのみ。

「勝敗を決するのは今――――飛べ!」

 団長の命を受け、ルーラーは加速を始め――――後方のベルトたちからは、再び肉眼で捉えれぬほどの――――最後の急加速を見せつけた。

 一方、残った3匹はベルト撃墜を目的にスピードを落として、接近を始めた。

「義兄さん、前方に1匹。 左右に1匹づつ……スピードを落として、こちらを囲んできます」    

「うん、抜かそうにも前方1匹が邪魔をしてくる作戦だろう。ここで戦うしかない」

「つまり、それは――――」

「空中戦闘《ドックファイト》だ」

 ベルトを取り囲む聖騎士団たちにも、その声は届いていたようだ。

「いくぞ、ベルト・グリムと聖女メイル!」

「ここでお前等は終わりリタイヤだ」

 彼等はこの競技で許された妨害方法――――重力を操る魔法の杖を構えた。

 そして、それを撃ち込んだ。 しかし――――

不可侵なる壁ウォール・オブ・アンタッチャブル』  

 聖女の修行を積んだ者のみが使用できる絶対防御の魔法。

 この競技、後ろに座る攻撃手だけが魔法を許されている――――なんて規則はない。

 騎手であるメイルの絶対防御が攻撃を弾いた。 

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