『元SSSランクの最強暗殺者は再び無双する』
加速地点?
飛び出して行った聖騎士団たち。
残された集団で、誰かが悪態をつく。
「クソっ! もう後ろ姿も見えなくなっちまった」
「落ち着け、奴らだって5匹だけ……いずれ、力尽きる」
集団で固まりながら飛ぶワイバーンたち。 その集団でも先頭を飛ぶ者は、ワイバーンを商業として扱う者たち。 界隈でも一目置かれるような有名人。
圧力とか、権力とか、政治的な要因ではない。自然と、そういう順番に並びになっていった。
その中でも――――ワイバーン使いでもスピード自慢の男が言う。
「落ち着け、奴らだって5匹だけ……いずれ、力尽きる」
「……」と他の面子は無言。なぜなら――――
「本当にそう思っているのか?」と別の有力者が周囲の言葉を代弁し始めた。
「なに?」
「奴ら、聖騎士団のワイバーンは特別にデカくて若い。そういう編成だ」
「デカくて若いだけじゃ――――スピード勝負の強さに直結しないさ」
「いや、本当はわかっているんだろ? 俺らが運送とか、運搬とか、仕事の中で速さを競っているお遊びじゃねぇ。本気で長距離を速く飛ぶだけの育成を仕上げて来た。この競技専用のワイバーンだって言ってるんだぜ」
「……」と無言になるしかない。 その言葉は正論だったのだ。
(見通しが甘かった。俺だって本当は気づいているのさ……)
そんな諦めが頭を支配し始めた。そんな時だった。
「おい、見ろよ! アイツ等、いつの間に!」
誰かが声を出す。自然と声の主に周囲の視線は集中する。
「下だよ! 下を見ろ!」
「下に何が……(確か、崖が続いているだけだろ?)」
確かに地上は崖。 上空から見れば、歪な線が地面を走っているように見える。
「何もないぞ! ただ、地面が……いや、待てよ! 崖の間を飛んでいる連中がいる! それも2匹だ」
「なんだって、わざわざ…… いや、風か?」
その推測は正しかった。 左右に切り立った壁のような崖。
横風の可能性は皆無。 加えて――――
「追い風だ。 複雑に入り組んだ風の通り道が、アイツ等のいる場所に集中して――――加速してやがる」
「何者だアイツ等! 分かっていても簡単に飛べるルートじゃねぇぞ!」
当然、その2匹に騎乗しているのは――――
ベルト&メイル組
マリア&シルフィド組
だが――――
「馬鹿野郎! もうすぐ、大きなカーブだ。あの速度……減速しないで曲がり切れなぇぞ!」
誰かが指さすベルトたちの飛翔ルートの先。 確かに曲がり道が壁のように行く手は阻む。 しかし、ベルトたちは減速は――――しない。
「行きますよベルト義兄さん!」
「あぁ、もっとだメイル。……もっと自由に飛べ」
「はい!」とメイルはさらに加速する。 そして、切り立つ壁。
「ダメだ、ぶつかる! 競技続行不能《リタイア》だ!」
だが、そうはならなかった。
壁との接触直前、ベルトたちが乗ったワイバーンは、体を捻る。
垂直の壁に対して、ワイバーンは並行に――――まるで地面に着地するかのように足から向かって行く。
そして――――
「アイツ等! あのワイバーン……蹴った。 減速せずに、それどころか壁を蹴って、加速しやがった!」
ベルトたちの後方についているマリアたち。彼女たちも同じように壁をワイバーンに蹴らせて、カーブを攻略していった。
「あ、あいつら、あの崖のコースをあの方法で飛んでいたのか? ワイバーンに羽ばたかせるのは最小限にして、滑空するように?」
「だ、だとしたら、今まで――――ワイバーンの羽を休ませて飛んでいた? じゃ、あの崖が終わったら――――」
「あぁ、ために、ためていた翼を一気に開放させて、超加速がはじまるぞ!」
集団は興奮していた。
正直、想像していた。 この競技1日目は聖騎士団に逃げ切られて、負ける。
しかし、それを――――自分たちの想像を覆す存在。
例え、戦うべきライバルの姿であっても―――――猛る。
抑えきれなくなった興奮は、爆発して――――ベルトたちへの歓声へ変わる。
「やっちまえ! お前等、聖騎士団なんてぶっちぎってしまえ!」
そして、事実。 崖は終わり――――ベルトたちは更なる加速を始めた。
残された集団で、誰かが悪態をつく。
「クソっ! もう後ろ姿も見えなくなっちまった」
「落ち着け、奴らだって5匹だけ……いずれ、力尽きる」
集団で固まりながら飛ぶワイバーンたち。 その集団でも先頭を飛ぶ者は、ワイバーンを商業として扱う者たち。 界隈でも一目置かれるような有名人。
圧力とか、権力とか、政治的な要因ではない。自然と、そういう順番に並びになっていった。
その中でも――――ワイバーン使いでもスピード自慢の男が言う。
「落ち着け、奴らだって5匹だけ……いずれ、力尽きる」
「……」と他の面子は無言。なぜなら――――
「本当にそう思っているのか?」と別の有力者が周囲の言葉を代弁し始めた。
「なに?」
「奴ら、聖騎士団のワイバーンは特別にデカくて若い。そういう編成だ」
「デカくて若いだけじゃ――――スピード勝負の強さに直結しないさ」
「いや、本当はわかっているんだろ? 俺らが運送とか、運搬とか、仕事の中で速さを競っているお遊びじゃねぇ。本気で長距離を速く飛ぶだけの育成を仕上げて来た。この競技専用のワイバーンだって言ってるんだぜ」
「……」と無言になるしかない。 その言葉は正論だったのだ。
(見通しが甘かった。俺だって本当は気づいているのさ……)
そんな諦めが頭を支配し始めた。そんな時だった。
「おい、見ろよ! アイツ等、いつの間に!」
誰かが声を出す。自然と声の主に周囲の視線は集中する。
「下だよ! 下を見ろ!」
「下に何が……(確か、崖が続いているだけだろ?)」
確かに地上は崖。 上空から見れば、歪な線が地面を走っているように見える。
「何もないぞ! ただ、地面が……いや、待てよ! 崖の間を飛んでいる連中がいる! それも2匹だ」
「なんだって、わざわざ…… いや、風か?」
その推測は正しかった。 左右に切り立った壁のような崖。
横風の可能性は皆無。 加えて――――
「追い風だ。 複雑に入り組んだ風の通り道が、アイツ等のいる場所に集中して――――加速してやがる」
「何者だアイツ等! 分かっていても簡単に飛べるルートじゃねぇぞ!」
当然、その2匹に騎乗しているのは――――
ベルト&メイル組
マリア&シルフィド組
だが――――
「馬鹿野郎! もうすぐ、大きなカーブだ。あの速度……減速しないで曲がり切れなぇぞ!」
誰かが指さすベルトたちの飛翔ルートの先。 確かに曲がり道が壁のように行く手は阻む。 しかし、ベルトたちは減速は――――しない。
「行きますよベルト義兄さん!」
「あぁ、もっとだメイル。……もっと自由に飛べ」
「はい!」とメイルはさらに加速する。 そして、切り立つ壁。
「ダメだ、ぶつかる! 競技続行不能《リタイア》だ!」
だが、そうはならなかった。
壁との接触直前、ベルトたちが乗ったワイバーンは、体を捻る。
垂直の壁に対して、ワイバーンは並行に――――まるで地面に着地するかのように足から向かって行く。
そして――――
「アイツ等! あのワイバーン……蹴った。 減速せずに、それどころか壁を蹴って、加速しやがった!」
ベルトたちの後方についているマリアたち。彼女たちも同じように壁をワイバーンに蹴らせて、カーブを攻略していった。
「あ、あいつら、あの崖のコースをあの方法で飛んでいたのか? ワイバーンに羽ばたかせるのは最小限にして、滑空するように?」
「だ、だとしたら、今まで――――ワイバーンの羽を休ませて飛んでいた? じゃ、あの崖が終わったら――――」
「あぁ、ために、ためていた翼を一気に開放させて、超加速がはじまるぞ!」
集団は興奮していた。
正直、想像していた。 この競技1日目は聖騎士団に逃げ切られて、負ける。
しかし、それを――――自分たちの想像を覆す存在。
例え、戦うべきライバルの姿であっても―――――猛る。
抑えきれなくなった興奮は、爆発して――――ベルトたちへの歓声へ変わる。
「やっちまえ! お前等、聖騎士団なんてぶっちぎってしまえ!」
そして、事実。 崖は終わり――――ベルトたちは更なる加速を始めた。
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