『元SSSランクの最強暗殺者は再び無双する』

チョーカー

 復活の

「え? 私が『水の勇者』ですか?」とドワーフの青年は飛び上がって驚いた。

「困りましたね、私はダンジョンの研究のためにドワーフの町から移り住んだのですが……」

 その言葉にメイルは驚く。

「移り住んだ? もしかして、住んでいるのですか? このダンジョンの中で!?」

 驚くのも当然だ。 ダンジョンの中……そもそも、外も砂漠だ。

 およそ人間の住む環境ではない。しかし、ドワーフの青年は――――

「いえいえ、大丈夫ですよ。ここは、砂漠の地下は水で潤っていて、それなりの植物も実ってます。食料に飢える事はありませんよ」

 どこか、自信なさげな青年だったが、それでもドワーフというべきか? 

 見た目に反して豪快な性格なのかもしれない。

「それで勇者の件なのですが……」

「暫く、ここを動くわけにはいきません。でも……あの、勇者決定戦ですか? それに参加するだけなら良いですよ?」

「は、はい、よろしくお願いします。それで……」

「あっ? そう言えば自己紹介の途中でしたね。僕はダゴンです、ダゴン・スイゲツ。ドワーフの迷宮研究者で……一応、水の勇者をやらせてもらう事になります。よろしくお願いします」

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 4人目の勇者候補 『水の勇者』 ダゴン・スイゲツ

 メイルたちはダゴンと協力関係を築き、町へ戻ろうと考えた時――――

 彼女たちは何かを感じ取った。

「姉さん! この感覚は!」

「……そうね、メイルちゃん。あの人が帰ってきた」

「ふん、馬鹿弟子が待たせおって」

 しかし、彼女だけは否定した。

「いいえ、カレン姉さんもエルマ師匠も――――違います。これは義兄さんであって別人です!」

 彼女だけ、メイルだけが感じ取った違和感。 相棒として、ベルトと近年で一番近しい仲だからか? それとも――――

 しかし、彼女だけは感じ取っていた。

 今、目を覚ましたベルトの肉体。 その肉体を操る精神は、彼であり――――同時に別人であると言う事を――――


 ――――病室――――


 灯りは消されているのか? 

 漆黒の闇が支配しているかのように無音で光の揺らぎもなく。

 いや、それにしては奇妙だ。 なぜ、灯りがない。

 そもそも、今は――――まだ、日が沈むには早い時間帯ではないか!

 誰もいない病室。 何かが蠢く……いや、その体はベルトの物ではなかったのか?

 その姿は、まるで野獣――――いや、野生の獣とは違い、その全身は吸い込まれるように黒かった。

 獣じみたベルトは――――咆哮をはじき出す。

 病院全体を黒く染め抜いたモノ、その正体はベルトの影だった。

 その影は咆哮に合わせるよう、さらに広がり――――領土を拡大させる。

 町が、1つの町が黒く染め抜かれていく。

 なぜか?

 ベルトの身に何が起きたのか?

 それは彼の深層心理の奥深く、彼が封じ込めていた1つの人格。

 冥王ハーデスが、彼の体を乗っ取った。

 そして、彼の目的はシンプルだ。 冥王が地上で引きづり出され冥界に帰れなくなった。

 ならば――――地上を冥界にすればいい。

 だから、彼の伸ばす黒い影。 それは彼の領土であり、冥界化した土地なのだ。


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