『元SSSランクの最強暗殺者は再び無双する』

チョーカー

決着? 冥王との戦闘。 それから……

 視線の先、全部が攻撃。 壁のように迫ってくる。

 ――――瞬時の判断。

 選択は攻撃。

 ≪魂喰いソウルイーター

 刃に変換された魔力は、冥王の攻撃と衝突する。

 しかし、押し返せるわけもなく――――

「けど、勝機は前に――――飛び込む」

 ベルトは前へ、その身を攻撃の中……

(俺の攻撃で緩んだ場所へ! そこなら強引に……突き破る!)


 ≪致命的な一撃クリティカルストライク

 さらに加えられた衝撃の打撃。 それにより――――冥王への間合いを0にする。

「見事だ! ベルト・グリム……勝利を褒美にくれてやろう。打ち込むがいい!」

 最後の一撃が冥王に叩きこまれた。

 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 夢の中、ベルトが冥王と戦っている頃。

 正義の勇者として覚醒したメイル。 彼女は他の勇者探しの旅に出る事が決まっている。 しかし、1人というわけにはいかない。

「それで……暫く、ベルトさんのお店を休業にしていただきたいのです」

彼女が最初に向かったのは、フランチャイズ家の豪邸。

もちろん、当主代行であるマリア・フランチャイズに会うためだった。

「……それはいいのだけれど」と彼女は紅茶の入ったカップをテーブルに置いた。

「貴方、寝ているの? その顔……若い女の子として少しまずいと思うのだけど?」  

「えぇ、寝てません」

 まるで、「それが何か?」と不思議そうに返すメイル。

「その様子で旅なんて、本当にできるの? 今のベルトは眠りについているだけで、いずれは起きる。そうでしょ?」

「当り前です!」と椅子から立ち上がるメイル。 一瞬、我を忘れたが、すぐに正気を取り戻し「し、失礼しました」と椅子に座り直した。

「これは、貴方の精神の方が重体だわ……」

マリアは「やれやれ」と首を振ったかと思うと――――

「シルフィド! シルフィドはいるかしら!」

「はい、ここに」

 彼女は、ベルトの薬局で働いていたが、主不在のために本来の雇い主であるマリアの元に戻っていたのだ。

 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 チャポンと水滴が湯舟に落ちた音が聞こえる。

 あきれるほどの手際の良さ。 抵抗する隙もなくメイルは浴室に連れてこられていた。

「何してるの? 貴方も入りなさい」

「いえ、私は、そのような時間も……クシュン!」

「ほら、そんな所で裸でいると風邪を引くわ。それじゃ、ベルトの後を引き継ぐのに支障が出るでしょ?」

 そう言われると逆らえないメイルだった。 彼女は、ついに促されるまま、湯舟に入る。

 フランチャイズ家の浴室。 贅沢を施し、目の保養になるが、メイルの感想は――――

「こ、これで安らげるのですか?」

「あら? 緊張しすぎよ。 なんなら、好きな時に来て入っても構わないわ」

「そ、それは遠慮しておきます」

「うん……やっぱりお風呂は良いわ。すっかり、元の貴方に戻ったみたいね」 

「あっ! その……私は、義兄さんの代わりをやり遂げないといけないと誓ったので……」

「そうね、それは大切だわ。 でも、貴方まで倒れたらどうするの?」

「――――ッ!?」と驚くメイル。

「それは……それでも私は……」

「いい事? ベルト・グリムって男は、必ず蘇って悪を討つ。そういう男なのよ。私たちが信じていないとダメじゃないかしら?」

「――――はい。そう……そうですね」

「うんうん、癒されてきたみたいね。このお風呂、ラベンダーって花が入っていてね……リラックス効果もあってね。よく眠れるのよ……そうだ! 貴方、今日はここの泊まって行きなさい!」

「えっ! それは……迷惑では?」

「ふっふふ、私を誰だと思っているの? マリア・フランチャイズよ?」

それは決定事項のようだった。


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