『元SSSランクの最強暗殺者は再び無双する』

チョーカー

 復活の大魔王 神話の戦いを再開させ

 大魔王シナトラと最強の暗殺者ベルト。

 2人は今まで何度対峙してきただろうか?

 しかし、今回の対峙は明らかに異常だった。

 その風貌の変化――――いや、風貌そのものに変化はない。 かつての老人魔族のまま。しかし、その瞳から活力は消失しており――――

 「――――ッ!」と体をのけ反った。 シナトラが噛みついて来たからだ。

 それも殺意なき攻撃。 殺意というよりも意識すらない。

 本能で攻撃しているように何度も何度もベルトを狙い噛みついてく。

 殺意を感知できないベルトは、自前の反射神経だけで避ける。

 避ける、避ける、避ける……だか、いつまでも終わらない。

「この! いい加減に――――」

言葉を言い終えるよりも早く殴った拳は、あっけなくシナトラの頬を打ち抜き、彼を吹き飛ばす。

残されたベルトは、呆然としながら、それでも思考の回転を速めようと努力した。

「これは……屍人? 蘇生するのに、魂に何かが入り込み……複数の人格が混じり、自我が失われている?」

 「その通りですよ、ベルトさん。 下手な禁術を使い、失敗……よくある事です。だから、禁術なわけですが」と笑いながら現れたのは――――

「ソル……脱獄したのか?」

「えぇ、先ほどぶりですね。この混乱に紛れて……いえ、本当は計画通りだったわけですが」

「これは、お前がやったのか?」

「まさか。私なら失敗しませんよ。 どこぞかの魔族が禁術に手を出して失敗。私はその後始末を依頼されただけです」

「後始末……とは?」

「いやだなぁ、そんな怖い顔しないでくださいよ。言葉の綾です。今、貴方と接触した事で術式は完成しました」

「なに!?」

「不安定な魂は、生前の執着と出会い、急激な自我を取り戻し……ほら、もう……大魔王シナトラの復活ですよ!」

「させるか――――≪暗殺遂行《アサシネーション》≫」

ベルトは大魔王の背後へ一瞬で移動する。そして――――

「≪死の付加デス・エンチャント≫」 

その技は大魔王シナトラを葬り去る。そのためだけに生み出したベルトの魔技は――――

「相変わらず、忙しない男だ。 戦いとは優雅であるべきだ」

その声と共に弾かれた。 その手に握った杖の一振りによって――――

「煉獄の炎に身を焼かれ……という奴じゃ。それでも、お前を想っていたぞ――――ベルト・グリム!」

「――――ッ! 何をいう亡霊が! もう一度冥府へ送り返してやる! 大魔王シナトラ!」

 それは神話の再開だった。 ここでベルトが大魔王シナトラを仕留めなければ、再び世界は暗黒期へ――――

 世界の運命を天秤にかけたこの戦い。 結末はベルト・グリムの敗北で幕を閉じた。


  

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