『元SSSランクの最強暗殺者は再び無双する』

チョーカー

帰り道

 ダンジョンを後にしたベルトとメイル。

 6人の勇者候補と会い、勇者として相応しいのか見極めて、ここに連れてくる。

 カムイから請け負った依頼。 しかし、そもそもを言えば、このダンジョン探索が冒険者ギルドからの請け負った依頼だ。

この出来事を冒険者ギルドに報告しなければならない。

そのことをカムイに告げると『別に構わないよ』と軽い返事だったが……

「大騒ぎになってしまいますね」とメイル。

「……だよなぁ」とベルト。

 近い将来、勇者になるかもしれない6人。 

 貴族なら……いや、それどころか王族連中ですら、囲っておきたいだろう。

 国相手に1人で戦争が可能。それが勇者の力である。

 仲間に引き入れられたら、世界を征する事も……

 かつて、剣の勇者 カムイのパーティメンバーだったベルトは、そういう出来事を嫌と言うほど体験していたのだ。

「……なんて言っていますけれども、義兄さんの方が勇者より強いじゃないですか?」

「そう言われてしまうと身もふたもないのだが……」

 知っての通りベルトは、『単純戦闘なら勇者や魔王より強い』と評価されいる男である。

 「まぁ、あくまで単純な戦闘力なら俺の方が上ってだけで、アイツ等が持っている神秘とかスキルを使われると簡単に勝てるわけじゃない」

「一瞬、謙遜しているように思えますが、まるで謙遜していませんね」

「ん~ それは置いといて、どうだい? カムイを元に戻す手立てはあると思うか?」

「そうですね。正直に言ってしまうと、相当に難しいですね。ダンジョンコアそのものになった人間をコアから引き離すのは、私の見立ですとダンジョンを解体していくような作業と同等の労力が必要になりそうです」

「相当な難易度という事は理解したよ。……あと、必ずしも不可能な事でもないってこともな」

「はい、義兄さんなら不可能はないかと思います」

『不可能ではない』ではなく『不可能はない』と言い放つメイルの異常な信頼度に気付かないベルトであった。

「しかし、気が重いな」

「ギルドへの報告ですか? 義兄さんがギルドへ持ち込む問題は、もうギルド職員の皆さんも慣れていると思いますよ」

この程度の問題はベルトなら日常茶飯事に起こっていると、暗に言っている義妹の発言に頭を押さえるベルトだったが……

「いや、ギルドへの報告と言うより、気にしているのは、その先さ」

「その先? ですか?」

「うん、メイルは、カレンとマリアの2人になんて説明したら良いと思う」     

「それは……正直に、お店を留守にする許可をお願いするしかないと……」

わかりきっていたが、メイルの返答に「はぁ」とため息をついた。

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