『元SSSランクの最強暗殺者は再び無双する』

チョーカー

勇者カムイからの依頼

  新たに発見されたダンジョン。その難易度は、不自然なほど高い。 

 このダンジョンには何かある。 そう想像はついても並みの冒険者では近づくことすら難しい。

 だから冒険者ギルドへ特別依頼が発せられた。

 その難易度から推奨されるランクはSSS。 

 つまり、SSSランクの暗殺者であるベルト・グリム個人への依頼をしたと同じことである。

 しかし――――

 「敵モンスターもでてきませんね。罠もありません」とメイルが不思議そうな顔をしている。

 例によって、ベルトはメイルとパーティを組み依頼に挑んでいたのだが……

 「何も起きないな」

 ベルトの言う通り、2人は既にダンジョン内を探索。 2層、3層と下へ降りて行ったが、何も起きない。

 モンスターも0。 罠も0。

 ダンジョンでは異常な数字だ。

 一体、ここでなにが起きているんだ? そう思った次の瞬間――――

『久しいね、ベルト。 そちらは……あぁ、僕らと別れた後の相方だね』

どこからともなく声が聞こえてきた。 親しい者へ語り掛けてくるような声。

その声にベルトは聞き覚えがあり、

「まさか……カムイか! お前、あの戦いの後、どこへ?」

カムイ。 剣の勇者として魔王と戦い、勝利した男だ。

しかし、死を前にした魔王は勇者の体を乗っ取ろうと、呪詛と言われる呪いをかけた。

魔王に肉体を乗っ取られた後、ベルトたちと戦い……そして、最後には行方不明になっていた。

『魔王が僕の体から抜け出した後、変異が起きんだんだ』

「変異?」

『うん、勇者の力が告げたんだ。 世代交代だって』

「勇者の力が告げたって……しゃべるのか? その……そろそろ世代交代の時間です。みたいな感じで?」

『いやいや、そんな直接的な言葉じゃないよ。 僕の後に新しい勇者候補が6人に力を託したから、その裁定者になってくれってね』

「……よくわからないが、お前が裁定者として勇者候補から勇者を決めるって話か?」

『そうなんだけど……少し困った事になっていてね。ちょっと待ってて、今、僕の現状を見せるから』

 ゴゴゴゴゴ……

 床が、いやダンジョン自体が動き始める。

 「メイル、俺につかまっていろ」

 「はい」とベルトが伸ばした手に、必要以上に力を入れて、引き寄せるようにしがみついてきた。

 『いや、安心してよ。 僕は君たちに危害を与える真似はしないよ』

 「お前が、これを起こした? ダンジョンを操っているのか?」

 『うん、今の僕はダンジョンの中核 ダンジョンコアそのものになっているからね』

 姿を現したカムイ。それは人間の体ではなかった。

 上半身は裸。問題は下半身だ。
 
 巨大な石……エメラルドのように緑色の個体に下半身が同一化していた。

 そんな状態でふわふわと浮いている。

 『こんな状態だかね。 僕からベルトたちに依頼したいんだ。 6人の勇者候補たちを僕の代りに査定して、相応しいと思った者をこの場所に連れてきてほしい』


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