『元SSSランクの最強暗殺者は再び無双する』
VS勇者パーティ
「メイル……何だこれは? 何が起きている?」
ベルトは動揺が隠せなかった。
アルデバラン、マシロ姫、シン・シンラの肉体が黒く染まっていく。
そこから放出されているのは、確かな殺意。
「……ニクイ……憎い! お前が憎い!」
言葉と同じように、徐々に明確になっていく殺意。
その感情はベルトの一身へ浴びせられる。
「おそらく、『呪詛』の術者の――――魔王の精神があの人たちの精神を飲み込んでいるだと思います」
「……浄化は可能か?」
「はい……必ず、やり遂げてみせます」
「よし、いい返事だ」とベルト言うと、メルトの腰に手を回して引き寄せた。
そのままメイルの体を抱きかかえるようにすると間合いを開くために後方へ大きく飛んだ。
メイルから驚きの悲鳴が小さく聞こえたが無視をする。
「良いか? 俺が合図したら目を閉じろ」
「え? いえ……はい!」
ベルトの予想通り、黒化したアルデバランが前に出る。
精神が汚染されても体と脳に刻み込まれた戦闘術に変化はないようだ。
「今だ! 閉じろ!」
「はい!」
アルデバランの瞳が怪しく光、彼のスキルが発動される。
≪魅力≫
「よし、もう大丈夫だ」
その合図でメイルは目を開く。
ベルトの腕から離れると、体にふらつきが――――若干の手足に痺れ。
そのまま転倒しそうになる。
「これは……」
「アルデバランのスキル。……いや、正確には彼が保有する魔眼の能力だ」
「魔眼……初めて見ました」
「もしも、スキル発動中に直視する。アイツ以外は視界に入らなくなる気をつけろ」
それは前衛職垂涎のスキルだ。
人だけではなく全ての生物――――否。心を持たない無機物ですら引き付ける魔眼を使用したスキル。
それは先天的なものではない。
当時、伸び悩んだアルデバランが、とある魔族から激闘の末に奪い取り、自ら移植したものだ。
魔眼の効果が薄いと判断したのか、アルデバランが間合いを詰めてくる。
だが――――
「この時に注意しておかなければならないのは前衛職(アルデバラン)じゃない!」
後衛の2人、マシロ姫とシン・シンラ。
彼女たちの基本は前衛が敵を抑えている間に詠唱によって強化した魔法を放つこと。
だが、それだけではない。 時には中衛として、物理的な攻撃を飛ばしてくる。
マシロ姫は鉄の鞭を撓らせた。
空気を切り裂く音と共に、鞭の先端が飛んでくる。
≪魂喰い≫
鞭を追撃する。
しかし、既にシン・シンラの攻撃は開始されていた。
いつの間にかベルトを囲むように地面に札がばら撒かれている。
札と札の間。魔力と秘めた線と円が浮き上がってくる。
五芒星の魔方陣。
結界やトラップなどに使用するシン・シンラの魔法。
相変わらず、手品師のように、いつ設置が完了していたのか見抜けない。
≪暗殺遂行≫
ベルトはメイルを抱きかかえ、影のように移動して攻撃をやり過ごす。
だが、それを予想していたのか、アルデバランの豪腕がベルトに直撃する。
「ぐっあぁ……」と体がバラバラになるような衝撃。
そして、太い指がベルトの喉に食い込んでいく。
こうなってしまうと、アルデバランの単純な腕力から逃げる術をベルトは持っていない。
――――だが、これはベルトの計算どおりだった。
≪浄化≫
いつの間にか、ベルトから離れていたメイルが杖を振り下ろした。
杖による打撃。その接触の瞬間、アルデバランを覆っていた黒い靄が四散した。
「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ――――」
大型モンスターの咆哮を連想させるアルデバランの雄たけび。
動きが止まったアルデバランの背後。いつの間にかその指から脱出していたベルトがいた。
≪致命的な一撃≫
巨体は倒れた。
首筋を打った手刀はアルデバランの意識を刈り取ったのだ。
「あと2人」
ベルトはマシロとシンラを見る。
前衛職を失った後衛職。それだけ考えると後衛職に勝ち目はない。
だが――――
2人の巨大魔法は完成直前だった。
「ちっ!」と舌打ちを1つ。ベルトは駆け出した。
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