いきなり異世界転生!?〜目覚めて始まる異世界生活〜

狼狐-Roco-

序章・見えない『モノ』

 暑くもなくましてや寒くもない程よい季節の日が落ちる時刻、全身ジャージと少しだらしない格好の私を着た彼は買い物という目的を済ませて自宅へと向かって歩いていました。

 下ジャージのポケットには最低限のものーーつまり財布しか入っていなく、手には見たところ軽そうなビニール袋がぶら下がっています。

 周りは住宅街。赤レンガ風の家や三角屋根の家、中にはソーラーパネルが付いた四角い家など色んな種類の家が転々と建っています。 しかしどれもこれも彼の自宅ではなく、ただただ通り過ぎます。

 途中、十字路に入りかけたその刹那、ドンッと誰かに背中を押されたかの様にバランスを崩し、彼は一歩足が出てしまいます。ですが体感が良かったのか、はたまた運が良いのか倒れるまでには至りませんでした。
 そのすぐ後には彼の目の前を、車が通り過ぎていました。もう一歩足を踏み出していたら大事故になっていたでしょう。

「あっぶねぇなぁ!」

 振り返って自身を押した犯人を確認しようとしますが、不思議と誰もいません。ただ唯一いたといえば、可愛らしい数匹の猫。無論、猫は自身よりも大きな人を押して、バランスを崩せる力は持っていません。

 ならばそこには彼しかいなく、近くには誰もいないということ。それを把握した彼は首を傾げ、何事も無かったかのように自宅へと向かいました。

 ーー数十分の道を歩き家に着く頃には完全に日が落ちて辺りは闇に染まり、暗くなっていました。
 しかしここは住宅街。完全に闇に染まった道や道路を照らす街灯や色々な家の窓から溢れ差す光などにより完全に漆黒の風景と化しているわけではありません。

 彼の家は豪華なお屋敷というわけでもなくボロボロな家でもなく、ただただ普通の住宅街にある一般的なアパート。見たところ築三十年以上は建ってるようで所々にサビや、赤、青、緑とまるで信号を想像させるような三色を使った派手な塗装が剥がれていたりしていました。

 そんなおんぼろアパートの二階に彼の自宅があり、カンカンと鉄製の階段を上り自宅の鍵を開けました。

「ただいまー……「おかえり」」

 戸を開けるとごくごく普通の玄関が目に移りますが、何も無ければ外装のようにカラフルでもない玄関。

 彼が家に入ると直ぐに独りでに誰に言う訳でもない言葉を呟いていました。ただ、それと同時に何処からか返事が聞こえます。

 誰かいるのかと玄関の靴置き場を見ますが、彼は現役高校生ながらも一人暮らしの身、一人分の靴以外ありません。空き巣だと考えても、わざわざ犯人は返事をするかと言うと、絶対する訳がありません。だって返事なんてしてまえばその存在に嫌でも知られてしまいますから。

 一応恐る恐る全ての部屋を見ますがやはり誰もいなく、窓はちゃんと閉まっていました。

 そのため先程の返事は空耳だろうと彼は信じ込み、念のため戸締りをしっかりとして寝室へと向かいました。

 寝室の中は、勉強するための机がありますが、まるで本棚かのように様々な本が並べられ、置かれ、机として機能しなくなっています。そのためか部屋の真ん中に、折りたたみの机が一つあるのですが、その机の上もカップ麺やら何やらのゴミがあり、結局は物置と化してます。

 さらに部屋の隅にあるベッドは乱れているため全体的にだらしない部屋と見て取れる部屋でした。

 そんな寝室に入ってからというもの、片付けはせず、購入した弁当や飲み物を平らげると、一度ベッドに潜り込み、眠りにつきました。

 次の日に何が起きるかもわからずに……

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