情報

数日経って色々と情報を整理した。ここは比較的国境線に近いアリシケ村で隣国の騎士からの略奪や襲撃を受けている。
本来の僕の話であれば最初の村に主人公が転移し騎士達を追い払い二度と進行できなくする事で村の英雄となる簡単な話であった。だが初期村は壊滅、全く知らない近くのこの村に入植し、前の村出身でヒロインでもあるカラーシャ達と生活しているのが現状である。
ついでに紹介しておくと、カラーシャが僕が書いた初めてのヒロイン。カラーシャ・タカヒニコフ、金髪のショートヘアで身体的には弟とよく似ている。明るくて社交的な子だが弟想いの優しい女の子だ。

「アレクは話せるようになった？」

「まだ駄目みたいです。やっぱり目の前でお父さんとお母さんを殺されたのがショックだったみたいで…。」

そして数日前から話せなくなったこの弟がアレクセイ・タカヒニコフ。カラーシャとは違い内気な性格でコミュニケーションが上手ではない。今回は更に騎士達に両親を目の前で殺されたショックも重なり全く話せなくなった。

「仕方ないさ。君も本当は辛いだろうに。何か困った事は無いかい？」

「大丈夫です！…これ以上ナエトさんのお世話になるわけにはいかないから。」

「そんなこと気にしちゃ駄目だ。君は強い。だからこそ君が困っているときは一番支えていないと崩れてしまうんだ。」

(と言いつつ、これも自分の小説の主人公が言ってた台詞なんだが…。)

「…ナエトさんは優しいんですね。ありがとうございます。」

「今日はもう休みな。明日は弟さんと村を散歩でもしてくるといい。」

「はい。おやすみなさい。」

(さてこれからどうしたものか。最初に襲ってきた騎士達はトライト国の騎士達だ。戦闘を見た感じ魔法に関しては知らないような反応だった。あいつらを何とかここに来ないようにしないといけないんだが…。明日はトライト国周辺を探索するか。)



大きな城の中の一室。そこには報告書を持った男が一人、机の上に寄りかかっている。対面に座るのは先日苗人を追い詰めていた騎士長だ。

「先日の竜種の件だが…」

「黙れ！俺の前でその案件を話すな。」

「ではあの男の話にしよう。」

「…あの男は何者だ。」

「あの村の者ではない事は明らかだ。どうやったかは知らないがその分身も、恐らくは竜種もそいつの仕業だ。」

「ありゃなんだ。どうも見たことの無ぇもんだ。どんなトリックなんだ。」

「話を聞く限りでは古い文献にあった「魔法」と呼ばれる物に似ているけれど、なにせ情報が少ないからねー。判断しかねるかな。」

「なんにせよあの男は危険だ、何とか対処しないといけねえ。」

「それならあの双子を誘拐しよう。彼はあの双子に執着していた。出し抜ける数少ない情報だし、彼らの中で唯一アレクという名前が分かる存在だ。」

「あいつらの居場所は分かるか？」

「あの村の周辺で行く可能性があるなら反対の少し大きな村だ。バレないように少数部隊を派遣して大ごとにせずに誘拐するんだ。これ以上君の評価を落としたくはないだろう？」

「助かる。奴にはしっかり仮を返さないと気が済まないんだ。」