チートじみた転生ボーナスを全て相棒に捧げた召喚士の俺は、この異世界を全力で無双する。
第29話、贈物
『ただいまー、シスタ……あれ?』
「……お邪魔してます」
入り口の看板に思いッきり定休日って書かれてる(たぶん)のに、喫茶店に平然と入って来た、目が髪で隠れている男の子と、目が合った……のかな?
前髪で綺麗に隠れてるから、目が見えない。ブタオ君が話してた、いわゆるメカクレって奴なのかな。まぁ詳しくは知らないけど。
髪色は黄色寄りのクリーム色で、少し長めのミディアムヘアーだ。身長は大体150cmぐらいかな、僕より少し小さい。声も高くて、幼い少年の印象が強い。
『いや、誰?……今日、定休日だよ?』
そっくりそのままの台詞を返したいけど、アイリスさんが先に呼びかけた。
「おかえりなさい、ルカ。ここから出て行ってください」
ルカって名前か。アイリスさんの知り合いなのかな?…反応は割と冷たいけど。
「!?…いや、シスター?せめてボクにも情報を少しぐら…ぃ……あぁーー!!?」
聞いている途中にも関わらず、カウンターの上……具体的には割れた水晶玉だった物に、視線が泳いだ瞬間に…ルカと呼ばれた男の子は、悲鳴にも似た驚きの声を上げた。
「そ、それ……真っ黒けだけど、えっ、水晶玉…だよね?」
ルカ君は謎の黒い物体を指差して、震える声でアイリスさんに尋ねた。
順調に目撃者が増えていくね。
「はい。ですが、今あなたが詳しい事を知る必要はありません」
「えぇっ……ご、ごめん」
アイリスさんはドSなのか、素でこういう性格なのか、良く分からない時がある。いやどちらにしても加虐心が見え隠れして……うん、なんでもないよ。
アイリスさんのルカ君への評価は低そうだ。いや逆か……高いからこそ、ルカ君へ好き勝手言えてるのかな、まだ分からないね。
「ねぇ、アイリスさん。そんなぞんざいに扱う必要も無いでしょ…えっと、ルカ君って言ったっけ?僕は内津 優って言う名前なんだ。よろしくね」
我ながら完璧な自己紹介だね。ちなみにルカ君には、1歩程後ずさりされた。なんで?
「……ボクはルカ。よろしく、って言いたい所だけど……水晶玉、キミが割ったの?」
僕が帰る後までソレについては聞かないで欲しかったなぁ。
「いやぁ……それは…あはは……」
事故とはいえ、水晶玉を割ったのは事実だから、返答に困る。アイリスさんが全部悪い訳じゃないし、苦笑いしか出ない。
「………」スッ…スタスタ
するとアイリスさんが立ち上がり、ルカ君の側まで歩いて行った。
「ルカ、要点を」
必要最低限の台詞でしか、ルカ君の話を聞こうとしていない。冷たッ…いや、淡々としてるなぁ。
「…聞かれていいの?」
心配している…大事な話なのかな?席を外した方が良いかもしれない。
「構いません、彼は信頼出来ます」
あっちょっと待って待って。ウワー、席を立つ前に話し始めちゃうんだもんなぁ、これは聞いちゃっても仕方ないなぁ。
頭の中での謎の言い訳をやめて、ルカ君の話に耳を傾けた。
「…分かった。重要な話は3つ……まず1番解決優先度が高いんだけど、魔界で危険度世界級の魔人が発見されたこと。既に魔物達にも被害が出てるから、今すぐ向かおう。後の2つはこれに比べたら大したことじゃないけど、話しておくね。あのノーム帝国で侵入者が発見されたのと……今この場所、ドウテツで雌の三毛猫の獣人が発見されて、国の偉い人たちは大騒ぎしてるみたいだね、以上!」
「………」
……なんか、死ぬほど心当たりがある単語が聞こえた気がするけど、1つ目の情報から整理したり、推理したりしてみようか。
魔界でやべー魔人が発見された、読んで字のごとくだね。うーん、詳しいことは分かんない。そもそも危険度世界級がどれぐらいヤバいか分からないからなぁ……まぁいいや。
で、ノーム帝国に侵入者……《あの》って言ってるぐらいだし、普段は侵入者なんて有り得ない強固な帝国に、何処かの侵入者がひょいっと入り込んだ、って考えるのが無難だろうね。どんな実力者何だろう、まぁいいや。
さて、何よりも…雌の三毛猫の獣人が発見されてドウテツの上層部がヤバい……これさ、絶対に美依ちゃんでしょ。いや、偶然美依ちゃんとは全く関係ない別人が見つかった可能性も有るけど……たぶん、美依ちゃんが何かやらかしたんだと思う。まぁいいや、いや良くない!!
うん、美依ちゃんのことだし、助けに行った方が良いかも……。
「魔界に、今からですか?」
僕の視点からだとアイリスさんの背中は見えるけど顔が見えないから、どんな感情なのか描写出来ないよー。声の調子はいつも通りだしね。
「そうだよ、シスター!早く向かわないと、被害は広がる一方だよ。買い出しもついさっき終わらせておいたからさ、直ぐ行こう!」
緊急事態みたいだね。まだまだアイリスさんに聞きたいことは合ったけど、今回のお茶会はここでお開きになりそうだ。
「……ルカ、1人で解決出来ませんか?」
「えっ!?……し、シスター?ウソでしょ、どうしたの?…そ、それに!ボク1人じゃ、いくらなんでも世界級は無理だよ……」
ルカ君はとても困惑した様子で、アイリスさんを不安げに見ていた。
どうやらアイリスさんが問題解決に乗り気じゃないのは、かなりのレアケースみたいだね。反応で察したよ。
「そうですか…」
アイリスさんが凄くガッカリしているのが、後ろから見ても分かる。
「どうしたのさ、シスター。あそこの…優?だっけ?そんなに離れるのが惜しいの?……はっ!まさか…」
だっけ?じゃないよー、自己紹介したハズなんだけどなぁ。ルカ君は意外と他人への興味とかが薄いのかもしれない。
「まさか、なんですか」
「ひ、一目惚れ…?」
「あなた一人を消すぐらい…私には容易いのをお忘れなく。ルカ、次はありませんよ」
キレすぎじゃね?アイリスさんからビリビリした殺気を感じる。怖いなぁ。
まぁ実際、アイリスさんが僕に一目惚れしてる感じは無かったね。純粋に僕の話に興味があったからこうした……って、思える行動が多かったから。めちゃくちゃ距離を詰めて来たのは……なんだろう、こう…アレだね、アレだよ。
「ヒッ…ごめん……」
「はぁ……」スタスタ
ため息を吐いたアイリスさんが、踵を返して、僕の側まで歩いて来た。別れは近そうだ。
「すみません、優さん。今から私は魔界へ出かけます。私が留守の間、この喫茶店、好きに使って良いですよ」
わぁ、太っ腹だなぁ。とは…ならないかなぁ。
「請求書が増えても困るから、使わないよ。アイリスさんの気持ちだけ受け取っておくね」
「そうですか」
アイリスさんはひび割れた真っ黒な水晶玉を、木箱の中にそっと戻した。手際良く、箱にフタをして、唐草模様の袋に詰めて、水晶玉を持ち運びやすくしたようだ。
例のブツの後処理をしてくれるようだ。正直凄く助かる。
「優さん、一つだけ忠告しておきます。貴方に限ることですが、これから先、主属性や副属性を聞かれても、正直に答えない方が良いと思いますよ。人の心は脆いので」
……確かに、あの水晶玉に映された目と、何よりも、その中身。狂気でしか無かった。
属性の闇が深すぎて、常人には発狂されかねない。だからこれから先、この世界の占いの類いは出来ない、ってのが確定したって事だよ。どうしてこうなった!どうしてこうなった!
「親切な忠告、ありがとう。アイリスさんは、水晶玉の目を見てどう思った?僕の属性らしいけど」
自嘲しつつ、半ばやけくそ気味に、アイリスさんに吐き捨てるように聞いた。
「気持ち悪かったです。吐きそうになりました」
正直なのは美徳だけど、時に人を傷付ける。今みたいにね。
「……ごめん」
シンプルに後悔したね。聞かなきゃよかった。
それから……2、3分掛けて、アイリスさんと一緒に、飲むのに使った茶器を片付けた。
「シスター、準備出来た?」
「見れば分かるでしょう、行きましょう」
アイリスさん、ちょっと不機嫌だね。気持ちは分かる。僕も、もう少しアイリスさんと話したかったなぁ。
「う、うん。優も…お茶会、邪魔しちゃってごめんね。バイバーイ」
ルカ君は右手を上げ、ヒラヒラと僕に向けて手を振った。
「アイリスさん、ルカ君、それじゃぁねー」フリフリ
僕も僕も。
「いつか、また会いましょう。優さん」
その台詞を最後に、2人は歩き出して…扉を出て行った。
喫茶店に、穏やかな静寂が訪れた。
「……さて、と」
この貰ったカップ、どうしようかな。
「……お邪魔してます」
入り口の看板に思いッきり定休日って書かれてる(たぶん)のに、喫茶店に平然と入って来た、目が髪で隠れている男の子と、目が合った……のかな?
前髪で綺麗に隠れてるから、目が見えない。ブタオ君が話してた、いわゆるメカクレって奴なのかな。まぁ詳しくは知らないけど。
髪色は黄色寄りのクリーム色で、少し長めのミディアムヘアーだ。身長は大体150cmぐらいかな、僕より少し小さい。声も高くて、幼い少年の印象が強い。
『いや、誰?……今日、定休日だよ?』
そっくりそのままの台詞を返したいけど、アイリスさんが先に呼びかけた。
「おかえりなさい、ルカ。ここから出て行ってください」
ルカって名前か。アイリスさんの知り合いなのかな?…反応は割と冷たいけど。
「!?…いや、シスター?せめてボクにも情報を少しぐら…ぃ……あぁーー!!?」
聞いている途中にも関わらず、カウンターの上……具体的には割れた水晶玉だった物に、視線が泳いだ瞬間に…ルカと呼ばれた男の子は、悲鳴にも似た驚きの声を上げた。
「そ、それ……真っ黒けだけど、えっ、水晶玉…だよね?」
ルカ君は謎の黒い物体を指差して、震える声でアイリスさんに尋ねた。
順調に目撃者が増えていくね。
「はい。ですが、今あなたが詳しい事を知る必要はありません」
「えぇっ……ご、ごめん」
アイリスさんはドSなのか、素でこういう性格なのか、良く分からない時がある。いやどちらにしても加虐心が見え隠れして……うん、なんでもないよ。
アイリスさんのルカ君への評価は低そうだ。いや逆か……高いからこそ、ルカ君へ好き勝手言えてるのかな、まだ分からないね。
「ねぇ、アイリスさん。そんなぞんざいに扱う必要も無いでしょ…えっと、ルカ君って言ったっけ?僕は内津 優って言う名前なんだ。よろしくね」
我ながら完璧な自己紹介だね。ちなみにルカ君には、1歩程後ずさりされた。なんで?
「……ボクはルカ。よろしく、って言いたい所だけど……水晶玉、キミが割ったの?」
僕が帰る後までソレについては聞かないで欲しかったなぁ。
「いやぁ……それは…あはは……」
事故とはいえ、水晶玉を割ったのは事実だから、返答に困る。アイリスさんが全部悪い訳じゃないし、苦笑いしか出ない。
「………」スッ…スタスタ
するとアイリスさんが立ち上がり、ルカ君の側まで歩いて行った。
「ルカ、要点を」
必要最低限の台詞でしか、ルカ君の話を聞こうとしていない。冷たッ…いや、淡々としてるなぁ。
「…聞かれていいの?」
心配している…大事な話なのかな?席を外した方が良いかもしれない。
「構いません、彼は信頼出来ます」
あっちょっと待って待って。ウワー、席を立つ前に話し始めちゃうんだもんなぁ、これは聞いちゃっても仕方ないなぁ。
頭の中での謎の言い訳をやめて、ルカ君の話に耳を傾けた。
「…分かった。重要な話は3つ……まず1番解決優先度が高いんだけど、魔界で危険度世界級の魔人が発見されたこと。既に魔物達にも被害が出てるから、今すぐ向かおう。後の2つはこれに比べたら大したことじゃないけど、話しておくね。あのノーム帝国で侵入者が発見されたのと……今この場所、ドウテツで雌の三毛猫の獣人が発見されて、国の偉い人たちは大騒ぎしてるみたいだね、以上!」
「………」
……なんか、死ぬほど心当たりがある単語が聞こえた気がするけど、1つ目の情報から整理したり、推理したりしてみようか。
魔界でやべー魔人が発見された、読んで字のごとくだね。うーん、詳しいことは分かんない。そもそも危険度世界級がどれぐらいヤバいか分からないからなぁ……まぁいいや。
で、ノーム帝国に侵入者……《あの》って言ってるぐらいだし、普段は侵入者なんて有り得ない強固な帝国に、何処かの侵入者がひょいっと入り込んだ、って考えるのが無難だろうね。どんな実力者何だろう、まぁいいや。
さて、何よりも…雌の三毛猫の獣人が発見されてドウテツの上層部がヤバい……これさ、絶対に美依ちゃんでしょ。いや、偶然美依ちゃんとは全く関係ない別人が見つかった可能性も有るけど……たぶん、美依ちゃんが何かやらかしたんだと思う。まぁいいや、いや良くない!!
うん、美依ちゃんのことだし、助けに行った方が良いかも……。
「魔界に、今からですか?」
僕の視点からだとアイリスさんの背中は見えるけど顔が見えないから、どんな感情なのか描写出来ないよー。声の調子はいつも通りだしね。
「そうだよ、シスター!早く向かわないと、被害は広がる一方だよ。買い出しもついさっき終わらせておいたからさ、直ぐ行こう!」
緊急事態みたいだね。まだまだアイリスさんに聞きたいことは合ったけど、今回のお茶会はここでお開きになりそうだ。
「……ルカ、1人で解決出来ませんか?」
「えっ!?……し、シスター?ウソでしょ、どうしたの?…そ、それに!ボク1人じゃ、いくらなんでも世界級は無理だよ……」
ルカ君はとても困惑した様子で、アイリスさんを不安げに見ていた。
どうやらアイリスさんが問題解決に乗り気じゃないのは、かなりのレアケースみたいだね。反応で察したよ。
「そうですか…」
アイリスさんが凄くガッカリしているのが、後ろから見ても分かる。
「どうしたのさ、シスター。あそこの…優?だっけ?そんなに離れるのが惜しいの?……はっ!まさか…」
だっけ?じゃないよー、自己紹介したハズなんだけどなぁ。ルカ君は意外と他人への興味とかが薄いのかもしれない。
「まさか、なんですか」
「ひ、一目惚れ…?」
「あなた一人を消すぐらい…私には容易いのをお忘れなく。ルカ、次はありませんよ」
キレすぎじゃね?アイリスさんからビリビリした殺気を感じる。怖いなぁ。
まぁ実際、アイリスさんが僕に一目惚れしてる感じは無かったね。純粋に僕の話に興味があったからこうした……って、思える行動が多かったから。めちゃくちゃ距離を詰めて来たのは……なんだろう、こう…アレだね、アレだよ。
「ヒッ…ごめん……」
「はぁ……」スタスタ
ため息を吐いたアイリスさんが、踵を返して、僕の側まで歩いて来た。別れは近そうだ。
「すみません、優さん。今から私は魔界へ出かけます。私が留守の間、この喫茶店、好きに使って良いですよ」
わぁ、太っ腹だなぁ。とは…ならないかなぁ。
「請求書が増えても困るから、使わないよ。アイリスさんの気持ちだけ受け取っておくね」
「そうですか」
アイリスさんはひび割れた真っ黒な水晶玉を、木箱の中にそっと戻した。手際良く、箱にフタをして、唐草模様の袋に詰めて、水晶玉を持ち運びやすくしたようだ。
例のブツの後処理をしてくれるようだ。正直凄く助かる。
「優さん、一つだけ忠告しておきます。貴方に限ることですが、これから先、主属性や副属性を聞かれても、正直に答えない方が良いと思いますよ。人の心は脆いので」
……確かに、あの水晶玉に映された目と、何よりも、その中身。狂気でしか無かった。
属性の闇が深すぎて、常人には発狂されかねない。だからこれから先、この世界の占いの類いは出来ない、ってのが確定したって事だよ。どうしてこうなった!どうしてこうなった!
「親切な忠告、ありがとう。アイリスさんは、水晶玉の目を見てどう思った?僕の属性らしいけど」
自嘲しつつ、半ばやけくそ気味に、アイリスさんに吐き捨てるように聞いた。
「気持ち悪かったです。吐きそうになりました」
正直なのは美徳だけど、時に人を傷付ける。今みたいにね。
「……ごめん」
シンプルに後悔したね。聞かなきゃよかった。
それから……2、3分掛けて、アイリスさんと一緒に、飲むのに使った茶器を片付けた。
「シスター、準備出来た?」
「見れば分かるでしょう、行きましょう」
アイリスさん、ちょっと不機嫌だね。気持ちは分かる。僕も、もう少しアイリスさんと話したかったなぁ。
「う、うん。優も…お茶会、邪魔しちゃってごめんね。バイバーイ」
ルカ君は右手を上げ、ヒラヒラと僕に向けて手を振った。
「アイリスさん、ルカ君、それじゃぁねー」フリフリ
僕も僕も。
「いつか、また会いましょう。優さん」
その台詞を最後に、2人は歩き出して…扉を出て行った。
喫茶店に、穏やかな静寂が訪れた。
「……さて、と」
この貰ったカップ、どうしようかな。
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