チートじみた転生ボーナスを全て相棒に捧げた召喚士の俺は、この異世界を全力で無双する。

ジェス64

第25話、修道女と柔道場って似てね?

「優、待たせたな…所で、つい先程まで優の隣に座って居た、えっと……シスターは、誰なんだ?」
 それから僕はリサさんと直ぐに合流した。リサさんはやっぱり、アイリスさんが気になっているみたいだ。
 正直、誰と聞かれても、僕にだって分からない。けど、話してて楽しい人ではあった。
 身なりや話す内容からして、教会の関係者っぽかったけど、まだまだ情報が足りない。
「うーん…誰なんだろうね。アイリスさんって名乗ってたけど、リサさん知ってる?」
「…え!?優、ほ、本当か!?アイリス様と言えば、宗教…だったか?と、とにかく、教会でも屈指の有名人なんだぞ」
 へー、非凡な感じは少し話して分かってたけど、有名人なんだ、アイリスさんって。少し話を掘り下げてみようかな。
「有名人?凄い人なの?」
「あぁ、そうだ。なんせ…いや、アイリス様については、宿に向かって歩きながら話そう」ギュッ手繋ぎ
「うん、賛成。行こっか」
 ……あれ、いつの間にかリサさんと、凄いナチュラルに手を繋いでるけど…まぁいいや、朝も早いから通路を行き交う人も少ないし。
 …ふと、ベンチを見ると、そこには既に誰も居なかった。



「アイリス様はな、教会の神官で無いにも関わらず、翻訳魔法が使えるのだ」
 日本のコンクリートで舗装された歩きやすい道とは違った、ドラマの中の時代劇の世界みたいな、むき出しの地面を歩きながら、リサさんと会話する。
「へー」
「ふふふ、ソレ翻訳魔法も凄いこと何だが、アイリス様はもっと凄いことが出来るのだ。なんと、回復魔法を使える数少ない上級魔道士の1人でな、何を隠そう私の父様がアイリス様には昔、世話になったと話していたんだ。まぁ、私が実際にアイリス様を見たのは、つい先程が初めてだったんだが…」
 あぁ、だから様付けなんだ。
 でも僕、回復魔法がこの世界でどんな扱いなのかイマイチ分からないんだけど。よし、聞こう。
「翻訳魔法よりも、回復魔法って凄いの?具体的にはその魔法って、何人ぐらいが使えるの?」
「凄いぞ、どれくらい凄いかと言うとな、凄くて…凄い。何より使える人が少ないんだ。私が知っている限りではアイリス様と…………あれ?わ、分からん。そう言えば、各国に出向いて回復魔法を唱えて廻っているのは、アイリス様だけだった…と思う」
 語彙力無さすぎでしょ、リサさん。まぁそれは置いといて、アイリスさんは聞いた感じ、利他的で、物凄く良い人みたいだね。
「…なるほどね」
 何もかも怪しすぎる…。この情報を聞く前に、実際に本人と話せて良かった。
 リサさんの情報に気持ちが流されて、疑う気持ちが緩和された状態で話して、隙を晒す所だった…かも。
「他に、アイリスさんについて知ってることはある?」
「えーと…そうだ!確かアイリス様は、とても動物が好きらしいんだ。恐ろしい魔物すら可愛がると言う眉唾なウワサも有るが……」
 僕にとっては前者より後者のウワサの方が信憑性あるんだけど。いやまぁ、勝手な思い込みだけど。
「そっか、世間では動物好きに悪い人は居ない、とか言われてるし、きっと良い人何だね。少し話した感じ、凄くグイグイ来る人だったし」
 主に物理的距離が。
「…んん?私は、アイリス様は物静かで落ち着いた人だと聞いていたが……」
 ……あれー?人違いだったかな。いやそんな事は無いと思うけどね。
「アイリスさん、良く喋る面白い人だったよ?噂は当てにならないね」
「良く喋る…?そ、そうなのか?あまり私のイメージと一致しないが、実際に話したみたいだし…優が言うなら、そうなのだろうな」
 ……少しは僕を疑うことを覚えようよ、リサさん。信用されてるみたいだし、まぁいいけど。



「おっ…見えたな、アレが今日からしばらく世話になる宿だ」
 それから数分程歩いて、目的の宿に着いた。予想よりも比較的近くて、凄く助かる。けど……。
「わー凄い、いや本当に凄いね、想像の8倍ぐらい凄いね、凄いけど凄いね」
 宿デカくね?旅館だコレ!1日宿泊するのに4万円ぐらい取られそうな大きさの和風旅館が、ソコには建っていた。
 僕の語彙力が死ぬぐらいには驚いてるよ、と言うか絶対お金尽きるでしょこんな豪華な所に1週間泊まるとかリサさんやっぱりポンコツで馬鹿なんじゃないの。
「リサさん、ここって1泊何円…いや、幾ら掛かるの?」
 この世界のお金の単位が分からない…翻訳魔法がカバーしてくれるのを祈りつつ、リサさんに聞く。
「えーと、3万ギルだな」
 ギル…日本円と価値は似てるのかな、分からないけど。
「うん…今の僕たちの所持金は?」
「20万ギルだな」
 予算20万で3万×7日=21万……いや宿泊費の時点でお金足りてないじゃん!!馬鹿なの?
「ねぇ、リサさん、お金足りなくない?ねぇ」
 焦りを隠しつつリサさんを問い詰める。やばくないこれ。
「む?あぁ、私の兄さんの旧友の方がこの宿を運営しているから、宿泊費はタダで済むと思うぞ。実際に過去、何回か無料にしてくれたからな」
 なん…だと……?
 はぁ、馬鹿は僕だったか……なんて有能なんだリサさん…本気で見直したよ。
 いや待てよ…あっ、そうか。そもそも、ドウテツに行く様に最初に指示したのはローズさんだった。これを見越してたんだね……。
 そういう事なら…リサさん大好きなローズさんなら、リサさんの身の安全を第一に考えて指示するハズだから……リサさんが泊まる場所がローズさんにとって信頼に値する人物が運営している可能性も、かなり高いね。
 …ローズさんやっぱり天才かも知れない。絶対あの人が太陽軍の軍師になるべきだよ。
「なーんだ、それなら安心だね。行こう行こう」グイグイ
 まさか異世界でこんな贅沢が出来るとは思ってなかったよ。ひとまずはこの豪華な宿でのんびり出来そうだ。
「ふふっ…優、子供っぽいぞ」
 はっ!?うわ、柄にも無くはしゃいじゃったな…リサさんがクスクスと笑っている。けど、仕方ないでしょ。豪華な宿には誰だってテンション上がる、僕だって上がる。
「ね、眠いからだよ」
 誤魔化し気味な照れ隠しをする。うー……僕もまだまだ子供だなぁ…。
 兎にも角にも、寝泊まり出来そうな宿にやっと着いた…疲れたぁ……さっさと休みたい。例えるなら、泥のように。
 いやまさか宿に泊まれないなんてことは無いだろうしね、楽しみだなぁ。

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