チートじみた転生ボーナスを全て相棒に捧げた召喚士の俺は、この異世界を全力で無双する。

ジェス64

番外編第10話、勇敢なる者

「おや…勇者もどきがココに到着するまで、意外と早そうですね…潮時か」ボソッ
 何かチョーさんが小声で呟いてるにゃ。ちなみにミーはめっちゃ耳が良いから、例え小声でも、クソ高いイヤホン並に声は鮮明に聞こえるにゃ。
 そしてチョーさんが、ミーを見てるにゃす。何にゃ。あ、違ぇ、アフロさんにゃんね。見てるのは。

「本題に入りましょう、聞け、そこの駄女神」
 チョーさんが話し掛けると同時に、ビクッと、ミーの両肩に置かれてる手が跳ねたにゃ。チキンだにゃー、この人。
「ちゃうねん……だ、駄女神ちゃう!私、あ、あふ、アフロディーテです!何ですか!?」
 何で関西弁混じったにゃ。
「はいはい……さて、アフロディーテとやら、さっさと力を使い、この3人を優と同じ世界へ転移させなさい。タイムリミットは5分だ、早くしろ」
 え、転移って何ニャ……いやリミット短っ!
「えぇぇぇぇ!!も、もっと早く言って下さいよ!割と集中力使うんですよ、アレするの!」
「アレってなにwwwww」
 たぶんテレポートだと思うにゃ。
「シッ!大事な話っぽいから、静かにしてろにゃ、ブタオ」
「……ウスwww」

「五月蝿いな…アフロディーテ、転移の準備をしつつ聞け、優は異世界の何処へ飛ばした?街か?」
「む、むぅぅ……そうですよ。安全な、1番おっきな街…と言うか、国ですよ!おっきくて立派で治安の良い国の、門の前の草原に飛ばしましたよ、完璧に!……いや、今の無しです、その、転移させたのは実は優さんで初めてなので、ちょっと座標はズレてるかも知れませんけど……たぶん、大丈夫です、はい」
 ほぇー、本当に優は異世界行ってるんだにゃぁ。まぁ、ミーたちも付いて行くんだけどにゃ。
 異世界の国…どんな世界が待ってるんにゃ、全然予測出来ないにゃ。
 でもまぁ、本で見たから大丈夫にゃ。なぜか異世界の住人が異常にマヌケで、こっちの世界の凡夫な人並みの叡智を適当に見せびらかしたら、王さまみたいに丁重に扱ってくれる上に、転生…えと、転移したら神から無償でチート能力が貰えてウハウハ無双ハーレム俺TUEEEEEEって感じに……いや待つにゃ、アフロさんからはチート能力なんて貰えなさそうにゃ、うん。

「準備が出来次第、誰からでも転移させていけ。残り4分だ」
 短っ。
「ちょ、時間制限厳しくないですか?ま、まぁ?一見不可能に見えても、私ならきっと出来ますけどね!」
 アフロさんが、まるで水晶玉で占う人みたいに、覆うように両手を前方に添えたにゃ。
 たぶん時間制限に間に合わない奴だから、期待せずに見てるかにゃ。誰から転移するかにゃ。
 あ、ちなみにミー、転移するのはそこまで怖く無いにゃ。アフロさんも、治安の良い国の、門の前に送ってくれるって言ってるにゃし。
 気分的には、安全な外国に旅行……いや、テレポートするみたいな物にゃ。


ーーー2分経過ーーー



「………」
「はぁ、はぁ……」
「………」
「ひーっ、ひーっ、ふぅぅぅ………」✧…
「………」
「ぬぉぉぉぉ………」キラキラキラ
 …あ!やっと変化が出てきたにゃ。何かキラキラした青い光が、アフロさんの添えた手の内側で渦巻いて、ぐるぐるしてるにゃ。

「はっ、はぁ……い、行けます!まず、まず1人!どぅ、誰から行きます!?あっ、座標は完璧です!たぶん!」
 いやどっちにゃ。たぶんって言うのはやめろにゃ。
 さて、誰から…まぁ、決まってるけどにゃ。
「よし、私から行こう。美依、ブタオ、良いか?」
 流石リーダーにゃ、ひゅーひゅー。
「おKwwwwwいてらwwwww」
「勿論にゃ。これも全部優の為にゃんね、リーダー。安心しろにゃ、ミーたちも直ぐ付いて行くにゃ」
「二人共……ありがとう、行ってくる!」
 …こういう時に、少しの恐れも無く、真っ直ぐ1人で歩いて行けるから、リーダーは凄いと思うにゃ。本気で。
「さぁ来い!アフロディーテ!」
 リーダーが身構えて、アフロさんを一点に見詰めてるにゃ。リーダー…だ、大丈夫かにゃ、急に不安になってきたにゃ。
「はぁ…い、行きますよ!良いですよね?怖くっても避けないで下さいよ!?再装填何かしたくありませんからね!?」
「必死すぎワロスwwwww」
「しつこいニャ、早くしろにゃ」
 制限時間オーバーしちゃうにゃ。

「あーもう行きます!!発射!!」ボッ!

バシュゥゥゥゥ!(オッ?(^ω^≡^ω<ギャアアアアアアwwwwww

 ……青みを帯びた光は、アフロさんが両手を前に突き出すと同時に勢い良く、一直線に《ブタオに》命中したにゃ。おい。なぁ、おい。
「はれれー!?あ、あわわ……」
 マジで駄女神じゃねーか!
「なっ、ぶ、ブタオー!」
「にゃにやってんだお前ぇぇぇ!!」
 絶望的な表情をしてるアフロを怒鳴りつけるにゃ、オイ!
「ちが、違います!!信じてください!力が…勝手に……!私に秘められし、み、未知なる力が…美依ちみぃちなる力が……」
 うるせぇ!
「残り1分だ、早くしろ」
 チョーさんはチョーさんで動じて無さすぎにゃ!少しはツッコめにゃ!
「えぇ!?す、すみません無理ですぅ!とてもじゃないですが、時間1分で、しかも2人って、ま、まに、間に合わないです!」
 私ならきっと出来ますけどね!…とか抜かしてた記憶があるんにゃけど。
「ちなみにチョーさんは、時間オーバーしたらアフロをどうするつもりなのにゃ?」
 まぁそこまで酷いお仕置きは無いだろうけど、何だろにゃ。軽くデコピン?それともしっぺ?

「殺す」
 えぇ……。

「ブッ…!!ま、マジ、じょ、じょ、冗談やめてくださいよー!も、もーぅ!」ガタガタガタガタ
 恐怖に震えすぎて物入れ過ぎた洗濯機みたいになってるにゃ、アフロ。
「……そうか。後50秒だ、早くしろ」
 絶対死ぬにゃんこれ。ご愁傷さま。
「嫌ぁぁぁぁ!!!わたしがんばったのに!がんばったのに!!もうやだー!!誰か助けて!助けてー!」バタバタ
 悲惨で哀れで見てられにゃい…ここまで無様なのが、神…。
 神って何にゃ……。

「落ち着きなさい。私の魔力を分けて上げるわ、アフロちゃん」
 にゃ!?
 謀ったように、結女さんがアフロの隣に……あー!さ、さてはこの人…狙ってたにゃ!このタイミングを…!
「ほ、本当ですか!?ありがとうございます!よし、構えますよ?良いですか?1、2の、3!…で、結構な量の魔力を私の手に送って下さい!」
 助かりたくて藁にもすがる思いにゃのか、指示も動きもハキハキしてるにゃ。
 ……魔力って何にゃ。まぁ、ドラ〇エのMP的な奴だろうけどにゃー。
「結構な量…良いわよ〜。サキさん、ジッとしててね?」
 ニコニコしてるにゃ、結女さん…きっと、笑顔の裏でアフロに、恩を身体で払わせる計画を立ててるに違い無いにゃ…!(とても失礼な思い込み)
「お、おう!今度こそ、来い!」
 リーダーがさっきと同じ様に構えたにゃ。
 ……ミーはちょっと離れて置こうかにゃ、流れ弾に当たるのも嫌にゃし。


「よし、結女さん…でしたっけ?行きますよ?はい!!1、2の、サっ…どぅおわッ!!?」

 バギュゥン!!!…ヴズガァァァーーーーz___ンッッッ!!!!!ガラガラ……パラ…。

「り、リーダー……?」
 嘘………い、家の壁が吹き飛んだ…リーダー…何処…?まさか、まさか死ん…ッ…!!
「お前ぇぇェェェ!!!」
 状況を考えるよりも先に、女神の首元に爪を伸ばしていたニャ。
 …けど、チョーさんに、止められたニャ。
「………」
「ミーの邪魔をするな!…痛ッ!」
 チョーさんに掴まれた右腕が、不自然にズキッと痛んだにゃ…。
「落ち着け、猫。心配せずとも、サキはこの程度では死なない…どころか、無傷だろうな」
「…!?」
 ……は!?そ、そんな馬鹿なこと…いや、れ、冷静に考えるにゃ、ミー。リーダー…はっ、そ、そうにゃ!転移したから、ダメージは受けてない…ハズにゃ、そうじゃないと、ミー…。
 ふと気が付くと、頬が熱くて…その時初めて、ミーは自分がいつの間にか泣いていたことを、知ったにゃ。
「ほ、本当にゃ……?う、ぐずっ…嘘じゃないよにゃ…?」
「本当だ。泣くな、優を救うのだろう?」
 リーダー…心配にゃ……。
「え、私…ち、違います…これは、こんなの…」
 コイツ……!!
「……ッ!!」キッ!
 お前が、お前が迂闊な行動を起こしたくせに…惚けるな!
「っひッ…!ごめんなさい、ごめんなさい!でも、本当に違うんです!ま、魔力の量が過剰で…あ……」
 女神の視線の先を見ると、絶望的な表情をしてる、結女さんが居たにゃ。
「…普段から、微調整出来るようにしないと、ダメね…これ…あは、アははハは……」
 何だか、様子が妙にゃ。結女さん、わざとリーダーを攻撃した訳じゃ無さそうにゃ。
 と言うか、リーダーのことを心配してるのか、めちゃくちゃ傷心してるにゃ。
「ふん…愚かな。ビッチ、下がれ。音に釣られ、蛆虫が湧いて出てきた。面倒ごとは嫌いだが、ここは私が済まそう」
「嫌ぁ…優さんに嫌われるぅ……」
 いや絶望してたのそこかよ!リーダーじゃにゃいのかよ!!

『……ディーテ…!!ぉーい!……そこ…ー!!』

「にゃ、今度はなに…!?」
 低めの男の人の声が、遠くで響いてたけど、あんまり良く聞こえなかったにゃ。
「そして……タイムオーバーだ、駄女神、言い残すことはあるか?」
 おっと…チョーさんが、女神を見て、ゆっくりと近づいて行くにゃ。
 そー言えば、何でチョーさんは、ここまで急いでミー達を異世界に送ろうとしてるにゃ…?
 優を思っての善意なのか、それとも……まぁ、異世界に行けば、暫く知ることも出来ないだろうけどにゃ。

「っ…美依さん、聞いてください。大丈夫です。サキさんは、無事です。異世界の光景を頑張ってコッソリ見ましたから、間違いありませんよ?そして……行ってらっしゃい!お元気でー!!」
「にゃ、えっ……!?」
 余りに都合のいい発言に、半信半疑なミーにゃったけど、女神がそう言うと、ミーの周囲の景色が変わってーー………。













 ーーこうして、化学部は全員……一切の痕跡も残さず、この世界から居なくなった。



番外編第1部『鏡面』……終。

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