チートじみた転生ボーナスを全て相棒に捧げた召喚士の俺は、この異世界を全力で無双する。

ジェス64

第13話、ギャンブリング・デュエル

 僕達は散歩と称した深夜徘徊…もう散歩で良いや。に、行こうとしていた。
 意外にも水道がちゃんと通っていたので、口は濯ぐ事が出来た。
 あと、リサさんもパジャマから普段着らしきジャージ…っぽい楽そうな服に着替えて、外に行く準備は完了した。
 けど、問題がある。
「リサさん。今の時間の外って、寒くないの?」
 微かな疑問。部屋の中はそこまで寒くないけど…ちょっと心配。
「大丈夫だ。寒くないぞ」
 サラッとリサさんが答える。日本の殆どの地域と違ってこの国の夜は意外と冷え込まないみたいだ。良かった。
「…だが、心配なら、私の上着を貸してやろうか?」
「ううん、いいよ。寒くないなら、歩いてる内に丁度いい感じになると思うし」
 リサさんと話しながら、窓の外を見る。
 煌めく星と月明かりが綺麗だ。たまには、こう言うのも悪くないね。
 そして僕達は、太陽寮を出発した。


「ふぁ…くしゅっ!」
 外、寒くない?10度くらいかな?寒くない?
 最初は気の所為かも知れないって頑張ってスルーしてたけど、これは無視出来ない寒さだ。わざわざ門まで歩いて来た所で悪いけど、リサさんの言ってた、上着を取りに戻りたい。
「…優、風邪気味なのか?」
 風邪気味では無いね。現在進行形でなりそうだけど。
「風邪気味じゃないよ。所でリサさん、外の気温が僕が想像してた温度と違うんだけど」
 平気そうな顔をしているリサさんをジト目で見つめる。
「え?まさか…寒かったか?」
「………」コク
 何故か困った様な顔をしている人に対して、無言で頷く。
「そうか…す、すまない。優、少し待っていてくれ…!上着を持ってくる…!」ダッ
「あっ、待っ……早いなぁ」
 リサさん、1人で太陽寮の砂漠まで走って行っちゃったよ。一緒に行こうと思ったけど…追い付けなさそうだし、素直に待っていよう。


 と、思ってたけど。
「ふーん……」
 距離30ぐらい…物陰に成人…1人、いや2人かな?気配を感じる。多分男の人、僕に対する悪意は感じるけど殺意は無い…かな。
 いつもは長くなっちゃうから心情描写では僕の予想の一連のプロセスは教えないけど、今回は特別。読み飛ばしても良いよ。
 こんな時間に外に出たのがバレてるって事は、相手は太陽寮の砂漠部屋に居た時点での僕達の動向に気付いてる。計画的だね。よって、リサさんの関係者の説がかなり濃厚だよ。
 リサさんは頭がハッピーセットだから気付かずに部屋に盗聴器やカメラの類を仕掛けられてても不思議じゃないし。
 加えてリサさんが僕と行動を別にした瞬間にここぞとばかりに接近して来たから、相手はリサさんの実力を知ってる。関係者でほぼ間違い無いね。
 しかも僕達を太陽寮の門で出待ち出来たって事は、物理的に相当近くに住んでそう。太陽寮の門付近に宿屋も建物も目に付かないから…こんな時間まで外に居座るのはかなり厳しいだろうね。ってことは、敷地内の建物。それなら軍の関係者って事だから、ファンクラブの人か、それ以外の人か。
 ファンクラブの人説は最初から無し。男だし、リサさんの迷惑になりそうな事はファンの人はしないだろう。
 リサさんの部下とか、訓練兵説も無し、リサさんは部下から慕われてた。テック君が倒れても、羨ましそうにしてる人は居ても、リサさんに嫌そうな顔をする人は居なかった。
 後は上官か、指揮官の2択だね。まだ確信は持てないけど、僕の予想はリサさんを嫌ってるって指揮官。昼にリリーさんから聞いたね。2人居るのは、1人は指揮官で、もう1人は彼の頼れる部下だと思う。
 誰か予想さえ出来れば、犯行動機も簡単に予想出来るね。2人が近付いて来たタイミングから考えて…恐らく僕を捕らえて、リサさんを困らせようと計画してるんだろうね。人質なんて、幼稚だなぁ。
 …でも、こうなったのには僕にも責任があるね。僕がリサさんと仲良くしてたのを意図せずに周囲に見せ付けてる形になったのが、ダメだったなぁ。これが無ければ多分指揮官の人もわざわざ僕を捕らえに動いて無い。
 そして指揮官って事は、太陽軍本部に向かう途中に見られた可能性が高いから…本当に、これさえ無ければ…あれ?

ーー回想「第7話、あれチャウチャウちゃう?いや、チャウチャウちゃう。チャウチャウちゃうんか?チャウチャウちゃうって、チャウチャウちゃうわ。チャウチャウ…ちゃうわ。よー見たらチャウチャウちゃうわ。パグだわ。」よりーー
(恋人繋ぎでもする?)
(な、なら、頼む…)
ーー回想終わりーー

 ………うん。割とどうしようも無い気がするけど、迂闊だったなぁ。次からは気を付けよう。
 さて、そろそろ指揮官の人と話して来ようかな。リサさんへの書き置きを残してる時間も無さそうだし。
「…おーい!リサさん、直ぐ戻って来るだろうけどー!見てるだけで良いのー?」
「………!?」ザワザワ
 よし、頑張ろう。





「優…優……!?何処だ…?おーーい…!!」

ーー月明かりの中、太陽寮の前で立ち尽くす彼女に声を掛けるハズだった者は、煙のように消えてしまっていた。

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