チートじみた転生ボーナスを全て相棒に捧げた召喚士の俺は、この異世界を全力で無双する。

ジェス64

第1話、絶対に楽しい!異世界転移

 色々なことが急に起こって少し混乱したけど、まだ慌てる様な時間じゃない……と、僕は私服の自分に言い聞かせる。
「まさか居眠り運転の事故に巻き込まれるなんて、流石に想像してなかったなぁ」
 そう、少し前に僕は轢き殺された……ハズ何だけど、五体満足だ。別に、コンクリートに強く打ち付けられたけど普通に耐えられた…とか、神がかった回避をした…訳じゃなくて。
 確か、僕は……車に轢かれる直前、目を瞑って神様に祈ってた。解説は必須だし(?)、避けるのも間に合わないと思ったから。そしたら、見知らぬ草原にフワッと飛ばされてた…これって、転移?ワープ?…うーん、良く分かんないや。
「それより、これからどうしようかなー」
 僕は普通の高校に通うちょっと呑気な16歳だし、家に帰らないと母さんが心配しちゃう。たぶん、化学部のみんなも僕が居ないと困っちゃうだろう。
 けど、帰る手段が無い。学校からの夕焼け小焼けの帰り道、転移した場所がこんなだだっ広い真昼の草原って事は、日本とは時間がズレてるから…うん、外国のどこかかな?
 もしそうなら、いつの間にか手荷物のバッグが無くなってるから、絶望しかない。お金もパスポートも無いから、飛行機にすら乗れない。
「……あっ、そうだ、言葉も分かんないよー。うわー、どうしよう……」

(ふふ……お困りですか、勇者様?)
「うわっ!?あ、頭に急に若い女の子の様な呂律が少し不安な声が直接響いたよー!誰なの?」
 びっくりした、ブタオ君(※化学部の友達)に昔教えて貰った、コイツ直接脳内に……!って奴みたいだ。
(……私はマ…神です)
「魔神?」
(神です)
「おー、神だー」
 凄いなぁ、神様って本当に居たんだ。目には見えないけど、声だけは聞こえる。えっと、何か神聖な感じがする。
(……えぇ、もう話を進めますね。勇者様はこの世界の言葉が分からず、苦労している様ですね?)
「そうなの?」
 まだこの世界の人に会って、直接話をして無いから分かんない。
(だから、翻訳魔法を……って、え!?先程、言葉が分からないって言っていた様な気がするのですが……?)
「うん、言ってたけど……あっ、あと、僕の名前、ユウシャって名前じゃないよ?」
(えぇ……えーっと、すみません。失礼ですが今の貴方のこの世界の情報量を伺っても?)
「良いよ!トラックに轢かれそうになって、そしたら不思議な力が働いて、外国の何処かの広ーい草原にワープしたのかな?って思ってたら君に脳内に直接話しかけられた……って感じかなー」
(はぁ……つまり、まだこの世界の誰とも出会っていないのですね?)
「うん、そうだけど……何か、向こうからこっちに走って来てるね」
 栗毛のサラブレッドっぽい馬に乗って、騎士みたいな服装をした、女の人が僕の方へと走って来てる。結構早い。
(あれは……良い機会ですね、勇者様、彼女に話し掛けてみましょう)
「そうだね、もしかしたら周辺の地図とか持ってるかも知れないし……すれ違わないようにしないとね」

 少し待ってたら、大人の女性が僕の側まで馬を走らせて来て、すぐ近くで止まってくれた。
「こんにちはー」
 取り敢えず挨拶をしてみる。女性は髪の色が白いショートヘアーで、外国の人っぽい。日本語通じるかな?
「ソコのお前、動くな!」
 日本語だ!……いや、何か……違う。
 その時僕は、彼女の言葉の違和感に気付いた。口の動きと話してる日本語が違う!
 これはつまり……何だろう?凄いなぁ。
「動いたらどうなるの?」
 こっちを睨む様に見ている女性に、純粋な興味心で聞いてみる。
「………」ジャキン
 っ……!?女性は無言で剣を鞘から抜き、僕の方へと向けた。
 何でこの人急に剣を自慢して来たんだろう。
「えーと、その……凄い強そうな剣だね?」
 取り敢えず剣を眺めて、当たり障りの無い事を言う。
「……オイ、貴様は私を煽っているのか?」
 しまった、褒め方を間違えたかも知れない。
(勇者様、褒め続けてみたら、彼女の反応も変わるかも知れませんよ?)
 神様からアドバイスが来た!けど、強そう以外の褒め方が分からない。
「うーん……ごめん、君はどうやって褒めて欲しかったの?僕も出来る限りのことはするよ」
 打つ手が無かったので、素直に聞いてみる。
「だぁーもう!!貴様、アホか!どう見ても私が剣を貴様に向けて威嚇しているだろうが!」
「威嚇……なんで?」
 今の僕には悲しいことに武器も無いし、特別な能力も無いから、警戒される程のアレでも無いと思うんだけど……。
「な、なんでって……はぁ、もういい。貴様、名は何と言う?」
「僕は、内津 優うつつ ゆうって言う名前だよ、お姉さんは?」
「……ふむ、聞いた事の無い名だが…まぁいい。私はリサ・カーペントだ。呼び名はリサで良い」
「へー。よろしくね、リサさん」
 何処の国の人なんだろう。
「よろしく……だと、貴様、今自分が置かれている立場が分かっているのか?」
 うーん……?
「えっと、草原に立ってる……かな」
「…ッ…ふふっ…ハッ!?ち、違うぞ!笑ってなどいない!」
「まだ何も言ってないよ?」
 頬を少し赤く染めているリサさんは、僕の返答に食い気味に言葉を返してきた。
「う、うるさい、黙れ!単刀直入に聞く、貴様、こんな場所で1人で何をしていた?」
 睨まれると同時に、リサさんの纏う雰囲気が変わった様な気がした。ちょっと怖い。
「神様と話してたよ、本当だよ」
 うー、信じてくれるかな。ん……?
 よく見ると、リサさんは訝しげに、僕の肩の後ろを凝視していた。
(あっ、や、ヤバい!)
 神様?どうしたんだろう。

「それが神だと?……私には、純粋な悪意の塊に見えるがな!」シュッ!
 素早く言い終わると同時に、リサさんが僕に向かって、小さな銀のナイフを投げてきた。
「う……わっ、び、びっくりした」
 ナイフは素早く僕の耳の近くを通り過ぎて行った。肩とかにナイフが刺さらなくて良かった。リサさんはノーコンなのかな。
「ふん……逃げたか、卑怯者め」
 えー!?
「僕は卑怯じゃないよー!失礼だなぁ」
「……貴様に言ったのでは無い、お前の言う神様とやらに吐き捨てたのだ」
「え?まさか……か、神様ー!返事してよ、聞こえないのー?」
 ……脳内に直接響くハズの、返事は無かった。
 そんなぁ……通訳してくれた凄く良い人(?)だったのに……。
「…すまない、私の口から言うのでは信じづらいとは思うが……貴様は、騙されていたのだ、悪霊にな」
「っ……別に僕、酷いことされてないよ?それなのに、悪霊なの?」
 何だか、理不尽だと思ってしまった。

「……ついて来い、貴様…いや、優。後ろに乗れ。話の続きは私の寮でしてやる」
 リサさんはそう言って、手綱を操り馬の向きを変えて、鞍を優しく手で叩いた。
 リサさんから出たとは思えない静かで優しい声に、少し違和感を感じたけど、たぶん失礼だから口には出さない。
「うー……分かった。けど僕、乗馬初めてだから、振り落とさないでね?」
 正直、リサさんの言うことに対して半信半疑だけど、もし仮にここに置いて行かれても僕には道標なんてものは無い。
 話は後でゆっくり出来そうだし、今は、素直にリサさんに付いて行こう。
「不安か?私に掴まっておけ。別に触られても気になどしない、大丈夫だ」
「分かったよー、急いで登るからちょっと待っててね……んしょ、よいしょ」モゾモゾ
 馬の背、つまりは結構高い位置にある鞍に登るのに、少し時間が掛かった。
「よし……行くぞ、優」
 リサさんの手綱を握る手に、力が入った様に見えた。あっ、そうだ、早く掴まらないと……。
「うん」ピトッ
 リサさんの背中に抱きつく。直後、リサさんが悲鳴を上げた。
「…っきゃぁぁ!?おま、ば、馬鹿か貴様!ここまでくっ付く必要は無いだろ!」
 リサさんの手の平で僕の頬が押し返された。後ろに。
「むぐー……ぷはっ、そうなの?」
「当たり前だ!……ほら、掴まれ」
 そう言ってリサさんは、腰の辺りを指さした。えっと、さっきは掴まって駄目だったから、ここには触るなって事なのかな。
「うん」ギュッ
 指示の通りに、腰じゃない位置の、脇腹辺りを両手で掴む。
「ふふほへぇあはははwwww…オラァ!」ガスッ!
 痛い!何故かリサさんに急に叩かれた!
「痛っ…!な、何するのさ、痛いよぉ……」
「ふーっ……おい!優、貴様、次ふざけたら本当に許さんからな…!さっさと掴まれ!!私の!腰か!肩に!」
 うわ……こ、怖い。迫力が凄い。
「ご、ごめん、これで良い?」スッ
 言われた通りに、リサさんの腰に手を置く。
「よし、行くぞ!馬が走ってる途中は喋るなよ!」
 リサさんは妙に大きな声で僕に注意喚起すると、馬の手綱を勢い良く引いた。



  おいっス!次回予告っス!

 え?次回予告要らないっスか?まぁ、やるなと言われても私がやりたいんで程々にやるっスけどね!
 次回はリサさんの国に到着っス!何だか豪華絢爛でお金の匂いがあって、私も行ってみたい良い国に見えるっスけど、果たして真相は以下ほど……っスかね!
 と言うか優さん、異世界に行っても長文解説してるんスか!?ドン引きされるっスよ!
 そんじゃあ次回、メイン国家へGO!っス!
 また見てくれよな!!

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