魔王に召喚された真祖で偽な吸血鬼!種族チートで世界最強~

カモメ

番外編 勇者の思い Part1

  俺の名は輝夜聖真。

  アイツに会ったのは高校2年生の夏休みが終わってすぐの事だった。

 「ええと、何と!このクラスに転校生が来ました!!夜風君、中に入って!」

 「はい。皆さん初めまして新しくこの学校に来た夜風賢人です!小中高全て男子校で共学は慣れていませんが、これから仲良くしたいと思ってるのでよろしくお願いします!!」

  何だ!?この爽やかな美少年は!?夜風賢人・・・か。俺は自慢じゃないがこれでも顔は整っているとまわりから言われてきた。自分でも他の人と比べればとそう思う。だからなのか、テレビに映る俳優やアイドルの中でも俺の方がカッコイイと思う人もいる。
  そんな俺がカッコイイと思った。正直、自分よりも、だ。

  皆んなが見とれている中1人の大きな拍手がなった。その1人とは鬼崎だ。学校でもなかなか有力な不良で何人も病院送りにしてる。誰も彼には逆らえない。見てくれからだけで他の人は怯え関わらないようにする。それが普通だ。なのに、夜風君は違った。鬼崎を軽くいなしたのだ。それだけでも相当な勇気がいるだろう。

  夜風君の席は白咲さんの隣の席だ。羨ましい。俺は密かに白咲さんに想いを馳せていた。白咲さんは学校のアイドル的存在だ。そこらのモデルよりはとても可愛い。たまに俺と白咲さんが一緒にいると噂されることもしばしばだった。その度に俺は舞い上がり、俺の心は踊っていた。

  ホームルームが終わると直ぐに話しかけに言った。気になったのだ。どういう人物なのかが、そして、梶原君と同じ事にならないように注意をしようと思った。白咲さんの隣が空いていたのもその梶原君が鬼崎に絡まれて虐められ、転校していったからだ。
  それからの学校は楽しくて仕方がなかった。誰とでも友達のになれる一斗と白咲さん、そして、賢人と一緒にいるようになった。この半年間で分かったことは賢人は友達思いで優しく自分の為だけでなく他人の為に怒れるとても良い奴だという事だ。そのおかげでクラスで賢人が嫌いなやつなどただの一人もいなかった。



  でも、楽しい日々というのはもろく、永遠には続かないと知った。
  


  ある日、鬼崎が登校してきた。賢人が来てからというものの極たまにしか来なかったのだが、毎回だるそうに来てたアイツがどういう訳か嬉嬉としてにやにやしながら来たのだ。
  そして、鬼崎は自分の席にカバンを乱暴に置き一斗の席へと向かった。

 「おい、坂木ぃ。お前、ちょっとあの机をグランドまで運んでこいや」

 「な!?い、嫌だよ。あれは賢人の机じゃないか!」

 「いいからやれってんだよ!!」

 「ぼ、僕には出来ない!」

 「ぁあ?・・・そうか。へへっ、お前確か可愛い妹がいたよな」

 「それがどうした!」

 「中三だったか?俺の仲間にロリコンがいてよォ、可愛がってくれると思うぜ」

 「や、やめろ!!」

 「やめて欲しいならどうすれば良いか分かるよな」

 「くっ!わ、分かった」

 「おいテメェら!チクったらどうなるか分かってんだろうなぁ。まぁ、とりあえず今から俺のスマホを回すから連絡先を登録しろ」

  一斗はそう言ってグランドに賢人の机を運んだ。その間に鬼崎は脅迫をして自分たちの連絡先を登録するように言った。
  一斗が戻ってきて皆登録し終わった時に賢人が登校してきた。鬼崎はそれを見てさらにニヤニヤする。そして、賢人が自分の席がないことに気付き俺や一斗、白咲さんを見るが、誰も目を合わせようとしない。いや、出来なかったのだ。もちろん俺も含めて。

 「おいおい、どうしたんだ?おやぁ?夜風君の席がないなぁ。そういえば坂木が運んでるのをみたんだけど?」

  鬼崎はわざとらしくそう言いあっさりと一斗が運んだとバラした。

 「な!?そ、それは!き、君が!!」

 「あ?俺がどうしたって!?おい!坂木ぃ!」

 「くッッ!!なんでも・・・ない・・・」

 「だよなぁ!?おい!夜風!グランドにあるから取ってこいよ」

  またこれか。鬼崎にいじめられ転校していった梶原君と同じだ。このまま鬼崎の指示に従いそれからというもののドンドンやることがエスカレートしていくのだ。

  でも、賢人の返答は真逆だった。

 「お前がやらせたんならお前が取ってくれば良いじゃないか!!」

 「あぁ!!てめぇ今なんて言った!?」

 「だからお前が取ってこいよ!」

 「クククっ!俺のことお前知らねぇもんなぁ。・・・グランドに来な!!俺の怖さ教えてやるよ」

 「ああ、分かった。相手になってやる」

 「・・・けっ!早く来いよ!」

  そう言って鬼崎はグランドに出ていった。

 「や、止めなよ!鬼崎君、すっごい強いんだよ?」

 「ゴメン、白咲さん。でも俺の友達にこんなことさせる人は許せないんだ」

 「夜風君!!」

 「それじゃ、行ってくる」

  白咲さんが止めようとしたが賢人は意に介さずグランドに出ていってしまった。賢人は運動神経なども良いが流石に喧嘩慣れしてる鬼崎には勝てないだろう。良くて怪我、悪くて病院送りになるかもしれない。
  そして、グランドで賢人と鬼崎の喧嘩は始まった。
  俺はもうダメだと思った。せっかく仲良くなり学校生活を楽しく送れていたのに。

  しかし、俺の心配、いや、諦めは杞憂だった。勝ったのは賢人だったのだ。俺はその時驚きと共に憧れもした。世の中にはこんな奴がいるのかと、そして、俺は同時に嫉妬もした。賢人は俺が持ってないものを持ちすぎている。本能と言わんばかりの優しさや強さ、そしてきっと白咲さんも・・・・・・。

  今回の件で賢人と鬼崎は1ヶ月の停学処分になった。校舎のグランドで喧嘩をしてしまったからだ。大勢が見ていた分お咎めなしとはいかなかったのだろう。
  そこから1ヶ月間、僕はいつも通りに一斗と白咲さんと一緒にいた。賢人には悪いがチャンスだと思った。賢人がいない今、クラスで1番のイケメンは俺だ。周りからも慕われている。だから、俺は白咲さんに猛アタックした。告白さえしなかったものの口説きセリフなども言いながら好意を丸出しにしたのだ。しかし、白咲さんは俺には素っ気なく返事をするばかりでずっと上の空だ。そこで、俺は賢人の話題を出してみた。すると、今までの表情が一変し賢人のことを楽しそうに話しだした。時々、外を見て「夜風君・・・・・・」と呟く白咲さんをみて俺はこれ以上ないほど憎しみを覚えた。他の誰でもない賢人に。
  1ヶ月後、賢人が復帰する1日前、あるメールが届いた。差出人は鬼崎。そのメールの内容は




差出人:鬼崎 天馬
宛先:〜~~~~~~~~




夜風 賢人について
~~年~~月~~日 ~:~




  明日から俺は学校へは行かない。だが、夜風は来るだろう。アイツが来たら虐めろ。例えば存在が迷惑だ、とかな。ちなみに俺の仲間がつねにお前らを見張ってるからな。妙なことをしてみろ、そこで人生の終わりだと思え。もちろん虐るのは明日だけじゃなく明日からだ。せいぜい頑張るんだな。



というものだった。
  その瞬間俺は本気で怒ったのだろう。鬼崎のことを考えると無性に殴りたくなってしまう。白咲さんのことについては賢人に嫉妬はしているものの今でも大切な友人だ。友達を虐めろなんてオレには出来ない・・・・・・・・・はずだった。アイツが登校する前までは。
 

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