俺に制服は似合わない。

TETO

咎峰田鶴と黒髪ヒロイン

 
『ピピピピッピピピピッピピ、カチッ』

鬱陶しいアラームの音を片手で制する。

『ふぁ〜〜』とあくびを一発かますと、布団をどかして洗面台に向かう。

どこぞのサ◯ヤ人のように歪な形に立った髪の毛を水で押し付け、顔に水を打ち付けると、今日も鏡で自分のかっこよさを確認し咎峰田鶴(とがみねたつる)はリビングへ向かう。

『おはよう母さん〜』

『おはよう〜』
妹と母が声を揃える。

うちは父が単身赴任で遠くで働いており、母、妹、自分だけの三人で暮らしている。

テーブルの上にあったトーストを軽く平らげると、すぐ自室へ身支度をしに向かう。

今日は絶対に忘れ物をしてはいけない日なのだ。

なぜなら今日は田鶴たち、『神谷育英高校』一年生たちの初の授業日なのだ。

こういう日に忘れ物をしてしまうと、だらしないだとかアホキャラだと思われてしまうかもしれないので、慎重に身支度をする。

といっても、教科書などは今日配布されるため、持ち物は筆箱と生徒証、学校の方針が書いてある冊子だけだ。

全てバックの中に入れたことを二回確信し、制服に着替える。田鶴の学校の制服は名門私立なだけあって黒で引き締まっていて、とてもかっこいい。

嬉しそうにそれを着終わるとバックと弁当を持って外へ向かう。

『行ってきまーす!!』
元気よく言うと

『いってらっしゃーい』
と笑顔で見送る母

朝から新しい学校への期待と不安で胸いっぱいの田鶴は少し早歩きで駅へ向かう。

もともと陰キャラで友達も少なかった田鶴は中学ではいわゆる『ぼっち』で、修学旅行なのどの班決めなどでは、毎回余り物になっていた。

私立の高校に行けば、0からやり直せるのではないかと考えた田鶴は、母に相談し、受験をすることを許可してもらい、死ぬ気で勉強に打ち込んだ。

その結果、国内でも名の轟く名門私立高校に入れたのだ。



予定より一本早い電車に乗り込む。

最寄りから学校がある駅までは合計8駅ある。あまり多くない気もするが、一つ一つの駅の間は意外と長く、20分ちょいかかる。

空いている席に座ってスマホを開くと、ソシャゲをやって暇をつぶす。


そうして約10分、前の席に同じ学校の制服を着た女の子が座った。確か同じクラスにいた子だ。

その子は整った黒髪を伸ばし、可愛いピンクのピンでとめ、全体的に真面目な印象を受けた。

可愛いなぁと思いながら見つめていると、彼女と目が合う。

合わせてそらしスマホをやってるように見せかける。

その後の10分はソシャゲの周回もはかどらず、そわそわして過ごした。

学校がある駅『神谷東駅』に着くと、彼女とは一定距離を取り、あとを追うようにゆっくり歩く。ちなみに言っておくがストーカーではないぞ。

駅から5分、白い大きな校舎。二つのテニスコート、大きな駐車場。我らが学校『神谷育英高校』についたのだ。

まず下駄箱に靴を入れ、階段で2階へ向かうと僕と彼女のクラスである1-Dの教室に入った。

座席表があり、それを見て席を確認する。

窓際の後ろから二番目、隣の席は二階堂沙織という女の子のようだ。

そして自分の席がある窓際の方を見て目を大きく見開いて驚いた。

自分の席の隣に彼女がいるのだ。

嬉しさと反面緊張を胸に抱きながら田鶴は席に着く。

彼女はこっちを向いたが、特になんも言わずに本を読み始めた。

どうやら嫌なイメージは持たれてないらしい。良かった〜

そクラスが沈黙に包まれてる中、担任の先生である後藤教子(ごとうのりこ)先生がやってくる。

まずは先生が自己紹介をして、生徒達も簡単な自己紹介が行う。

全員が特技や名前を言い終わると、今度は全校集会のため、ホールへ向かった。

クラスで列になってホールへ行くと、番号順に座りどーでも校長先生の話などを聞く。

そしてやっと終わり、教科書配布が行われる。名前ペンを使い間違えないように一つ一つ名前を書いていく。

一通り書き終わらせると、二階堂さんが何やらモジモジしているのが目に入る、どうしたんだろうと思って見ると、ネームペンを忘れたらしく教科書に名前をまだ書けてないようだ。

これはチャンスだと思い、おそるおそる声をかけてみる。

『良かったら使う??』

彼女は恥ずかしそうにこう言う

『ありがとう』

こっちも恥ずかしそうにペンを渡すとドキドキが止まらなかった。

もう恋は始まっているのかもしれない。
いや〜怖いね青春。

どうやら名前を書き終わったようで、笑顔でペンを返してくれる二階堂さん。

仲良く話せたら良いな〜なんて思いながらそれを受け取る。

その後はそれぞれの科目の説明が行われ、下校時刻となる。

初投稿なので、短縮下校で12時30下校なのだ。

早々と教室を出ると、こむのは嫌なので早めに電車に乗る。

最寄り駅に着くと行きつけのたい焼き屋さんで、こしあんとカスタードを買うと立ち食いしながら家に帰る。

『ただいま〜』

誰もいない。妹はまだ学校で母はパートで忙しいのだ。暇をつぶすようにテレビゲームをしていると、

『ただいま〜』と可愛い声が聞こえた。
妹が帰ってきたのだ。

妹の咎峰麻友(とがみねまゆ)は中学三年生に上がったばかりで。田鶴の一個下だ。田鶴とは違って運動神経が良く、人望も厚い。

バックを置いて、着替えを速攻で終わらせると、そのまま「行ってきま〜す」と外に行ってしまった。

麻友の中学校も今日早帰りらしい。

友達と遊ぶのだろうか、流石である。

しばらくゲームを堪能するともう夕方になってきたので妹が帰ってくる。

「ただいま〜」

「おかえり〜」
と素っ気なく返事をする。

「お風呂沸かしておくね〜」
と帰って早々にお風呂を沸かしてくれる妹。やはり自慢の妹である。

小さい頃から母の厳しい教育を受けてきた彼女はピアノ、バレエ、水泳、勉強がものすごく得意だ。

ピアノに関しては小学校の頃に賞ももらっていた。

と、まあそんな感じでスペックに差がありすぎる兄弟だが今日まで仲良くやってきている。

「ただいま〜」

玄関から声が聞こえる。母が帰ってきたのだ。

母は駅前のパン屋でパートをしていて、帰ってくるのは大抵夕方になる。

「学校どうだった??」

「楽しそうだよ」

「頑張ったかいがあったわね!」

「うん!」

親を働かせてまでして行った学校だ。絶対に後悔しないようにしないと。改めて硬く決意する。

不意に頭を彼女がよぎる。隣の席の美女、二階堂沙織だ。

今のところたいした話はしてないがこれから仲良くしていきたいところだ。

2人で仲良く話しているところを妄想しながら風呂に入る。

頑張れよ明日の僕!

風呂に上がると夕食のオムライスを平らげて自室へ戻る。

時間割表を確認しながら今日配られた教科書をバックに入れていく。

ちゃんと入っていることを確認すると、電気を消し、今日は早めに寝ることにした。

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