ギレイの旅 番外編
シャーロと獅子
儀礼に頼まれて、獅子は買い物に出た。
獅子が帰ると、儀礼は宿のソファーで眠っていた。
白衣を毛布がわりに、すやすやと寝息をたてている。
(人に買い物頼んでおいて……。)
のんきな様子に少しいたずら心をおこす。
(おどかしてやろう。)
獅子は買い物袋を床に放り投げると、気配を消して近づく。
穏やかに眠る姿は子供のようだ。
金の柔らかそうな髪は教会の天使の天井絵を思い出させる。
ソファーの前でしゃがむと、儀礼の顔が目の前にくる。
その顔を覗き込み、整った顔立ちに、あいかわらず女みたいな顔だな……と思う。
獅子はそっと息を吸う。そして儀礼の耳元に口を近づけ――
「起きろ、儀礼!!」
大声で叫んだ。
パチッ
と眼前で開かれた瞳は青色だった。
(え?)
獅子が胸のうちで驚く。
見開かれた青い瞳と視線が合った。
「キャァ!」
悲鳴と共に飛び上がり、勢い余りソファーの背もたれを越え、人影は床へと落ちる。
「あー、悪い、シャーロだったのか。大丈夫か?」
困ったような顔をして頬をかきながら獅子がソファーの後ろを覗く。
シャーロは呆然とした様子で固まっていた。咄嗟に受け身をとれていたらしいのはさすがだ。
「悪かったってシャーロ、儀礼が寝てるんだと思ったんだよ。白衣被ってたし。」
そう言いながら、獅子はシャーロの頭を撫でる。
シャーロは心臓が早鐘のように鳴っているのに対し、頭がまるで働いていないのを感じていた。
気遣うように優しく撫でる手は、大きくて暖かい。
「ぅぅ、びっくりした……。」
シャーロは弱々しい声でそう言うのがやっとだった。
ソファーで儀礼に借りた本を読んでいるうちにいつのまにか寝てしまったらしい。それはいい。
いや、ちょっと緊張感を忘れ過ぎかとは思うが、今はおいておく。
大きな声が耳元でした瞬間、目を開ければ……目の前に獅子の顔があった。
耳に息をする音が聞こえて、振り向けば触れそうなほどお互いの顔は近かった。
思い出した瞬間、顔がすごく熱くなる。きっと今、シャーロの顔は真っ赤になっているだろう。
(シ、シシの馬鹿、シシのばか、シシの馬鹿……。)
心の中でそれを唱えるのがやっとだった。
「どうした?」
不思議そうな顔をして獅子が言う。
シシは自覚がないのだろうか。
いや、仕方ないことだろうか。獅子はシャーロが女であることを知らない。
(落ち着け、落ち着け……、私は……男だ。)
必死で自分の心を静める。
そこへ、風呂へ行っていたらしい儀礼が戻って来た。
「買い物ありがとう獅子。」
そう言ってから、ソファーの後ろで固まる赤い顔のシャーロと、ソファーの前で困る獅子を見る。
「……。」
しばしの沈黙の後。
「獅子の前で熟睡するのはやめるよ。」
そう言って部屋を出ていった。
獅子はシャーロの腕を引き、立ち上がらせる。
「怒ってんのか?」
子供に対するように、屈んで視線を合わせる。
「大丈夫、びっくりしただけ。……いつもこんな風にギレイ君起こすの?」
少し、不満を混ぜて聞いてみる。心臓に悪すぎるのだ。
「ん~、いつもじゃないけど普通だろ。」
当然のように言う獅子。
「親父なんか殴ってくるし、拓の奴は踵落とし腹に食らわすし、利香は体当たりさながら飛び込んでくるぜ?」
当然だろ? と言うように、獅子は言う。
「それ、普通じゃないと思う……。」
呆れながらもシャーロは精一杯の反論を述べる。
「俺がやったのなんてましだろ、儀礼なんか1度起こしに来たのか、殺しに来たのかまじでわかんなかったし。」
今まで安心しきっていたけど、彼等の日常生活ってなんて危険なんだろう。
シャーロは彼等に対しほんの少し情報修正をした。
獅子が帰ると、儀礼は宿のソファーで眠っていた。
白衣を毛布がわりに、すやすやと寝息をたてている。
(人に買い物頼んでおいて……。)
のんきな様子に少しいたずら心をおこす。
(おどかしてやろう。)
獅子は買い物袋を床に放り投げると、気配を消して近づく。
穏やかに眠る姿は子供のようだ。
金の柔らかそうな髪は教会の天使の天井絵を思い出させる。
ソファーの前でしゃがむと、儀礼の顔が目の前にくる。
その顔を覗き込み、整った顔立ちに、あいかわらず女みたいな顔だな……と思う。
獅子はそっと息を吸う。そして儀礼の耳元に口を近づけ――
「起きろ、儀礼!!」
大声で叫んだ。
パチッ
と眼前で開かれた瞳は青色だった。
(え?)
獅子が胸のうちで驚く。
見開かれた青い瞳と視線が合った。
「キャァ!」
悲鳴と共に飛び上がり、勢い余りソファーの背もたれを越え、人影は床へと落ちる。
「あー、悪い、シャーロだったのか。大丈夫か?」
困ったような顔をして頬をかきながら獅子がソファーの後ろを覗く。
シャーロは呆然とした様子で固まっていた。咄嗟に受け身をとれていたらしいのはさすがだ。
「悪かったってシャーロ、儀礼が寝てるんだと思ったんだよ。白衣被ってたし。」
そう言いながら、獅子はシャーロの頭を撫でる。
シャーロは心臓が早鐘のように鳴っているのに対し、頭がまるで働いていないのを感じていた。
気遣うように優しく撫でる手は、大きくて暖かい。
「ぅぅ、びっくりした……。」
シャーロは弱々しい声でそう言うのがやっとだった。
ソファーで儀礼に借りた本を読んでいるうちにいつのまにか寝てしまったらしい。それはいい。
いや、ちょっと緊張感を忘れ過ぎかとは思うが、今はおいておく。
大きな声が耳元でした瞬間、目を開ければ……目の前に獅子の顔があった。
耳に息をする音が聞こえて、振り向けば触れそうなほどお互いの顔は近かった。
思い出した瞬間、顔がすごく熱くなる。きっと今、シャーロの顔は真っ赤になっているだろう。
(シ、シシの馬鹿、シシのばか、シシの馬鹿……。)
心の中でそれを唱えるのがやっとだった。
「どうした?」
不思議そうな顔をして獅子が言う。
シシは自覚がないのだろうか。
いや、仕方ないことだろうか。獅子はシャーロが女であることを知らない。
(落ち着け、落ち着け……、私は……男だ。)
必死で自分の心を静める。
そこへ、風呂へ行っていたらしい儀礼が戻って来た。
「買い物ありがとう獅子。」
そう言ってから、ソファーの後ろで固まる赤い顔のシャーロと、ソファーの前で困る獅子を見る。
「……。」
しばしの沈黙の後。
「獅子の前で熟睡するのはやめるよ。」
そう言って部屋を出ていった。
獅子はシャーロの腕を引き、立ち上がらせる。
「怒ってんのか?」
子供に対するように、屈んで視線を合わせる。
「大丈夫、びっくりしただけ。……いつもこんな風にギレイ君起こすの?」
少し、不満を混ぜて聞いてみる。心臓に悪すぎるのだ。
「ん~、いつもじゃないけど普通だろ。」
当然のように言う獅子。
「親父なんか殴ってくるし、拓の奴は踵落とし腹に食らわすし、利香は体当たりさながら飛び込んでくるぜ?」
当然だろ? と言うように、獅子は言う。
「それ、普通じゃないと思う……。」
呆れながらもシャーロは精一杯の反論を述べる。
「俺がやったのなんてましだろ、儀礼なんか1度起こしに来たのか、殺しに来たのかまじでわかんなかったし。」
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シャーロは彼等に対しほんの少し情報修正をした。
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