ギレイの旅 番外編

千夜ニイ

アーデスの年齢

 アーデスは年齢不詳。
20代後半にも見えるけど、40代って言われてもおかしくない落ち着きがある。
重気さんよりは若いと思うけど、ディセードよりは上な気がする。
ディセードが子供っぽいだけかもしれないけど。


「アーデスって何歳?」
儀礼が聞く。
「何でだ?」
意外なことを聞かれた、とでも言うようにアーデスが返す。
「拓ちゃんが、アーデスは100歳超えた妖魔って言われても驚かないって言うから。」
考えるような素振りで儀礼が言う。


 ワハハハ……。
 アハハハ……。


 バクラムとその奥さんが大笑いした。
ここはバクラムさんの家。
バクラムさんには12人も子供がいる。全部本当の子供。
だから、たくさん稼がなきゃいけないから、僕の護衛は報酬がよくて助かるんだってさ。
奥さんは、12人も子供を生んだんだ。とてもそんな風に見えない細い人なのに。


「あの坊やがなぁ。」
バクラムさんが言う。
バクラムさんは、アーデスの子供の頃を知ってるのかな?
「いや、こいつが初めてこの町に来たのが今の儀礼と同じ位の歳だよ。眼つきが鋭くて、冷めた感じで、普通じゃない空気纏っててな。当時すでに冒険者ランクはAだったな。」
懐かしむように言う。


「世の中全部、冷めた目で見ちゃって、嫌な子だったよねぇ。」


奥さんが笑いながら言う。


「やめてくれ。」


アーデスが本気で困っているようで、いつもにない焦った顔をしている。


どうやらバクラムさんたちよりは年下のようだ。


バクラムさんは40代半ば。


「山に出たドラゴン一人で倒してきちゃって。倒して当たり前って顔して。」


「おかげで俺は稼ぎ所を奪われちまってな。」


ガハハハとバクラムが笑う。


「しばらく子供らに貧しい食事をさせたよ。」


「それはもう……その後十分、俺働かされただろう。」


苦い顔のアーデス。


「おかげで管理局ランク上がったろ。」


ガハハハとまたバクラム。


よく笑うところがちょっと重気さんに似てる。


重気さんはいるだけで緊張して、ちょっと怖いけど、バクラムさんは安心する感じ。


「で、結局アーデスは何歳?」


「不詳だよ。」


アーデスが答える。


「???」


儀礼は首を傾げる。


「出生も年齢も分からない。そんな奴大勢いるだろ。だいたいなら20代後半から30代の前半だろうな。それ以上には分からない。」


気にしている様子もなくアーデスは答える。


氏のないところで、わかりそうなことだった。儀礼は納得する。


年齢は分からない。


親もなく、周りの助けもなく、若くしてAAランクまで登りつめた男。


『妖魔と言われても驚かない』


確かに、その通りだ。


「ギレイ、今変なことを考えてなかったか?」


アーデスに怪しまれる。


「ないない! アーデスさんは凄いなって思っただけ!」


言ってから、自分が素直に褒めたことに気付き、口を押さえて横を向く。


ろくでもないことを考えてたと言ったようなものだ。


しばらくアーデスのブリザードが怖かった。


アーデスがSSランクになった時、儀礼がまだSランクについたままだったら、『魔王』の称号をあげよう、などと考えたことは口が裂けても言えない。

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