ギレイの旅 番外編

千夜ニイ

通路に置かれた怪しげなボタン

 長い通路の途中に突然ボタンが一つ、ありました。
まるで押してくださいと言わんばかりに。
さて、どうしますか?


 1.獅子の場合
 A:迷わず押す。


 2.利香の場合
 A:じーっと見て、ひたすら誰かが来るのを待つ。「これなんだろうね」と一緒に考えたい。


 3.拓の場合
 A:ちょっと見て、通りかかった人に、「俺が離れてから、押せ」と命令口調。
   鬼だ。


 4.儀礼の場合
 A:まずカバーを外し回路を出し、その先を調べ、何が起こるかわかるまで解体してから、元の通りに戻して去る。


 5.アーデスの場合
 A:探索魔法で危険かどうかを判断、危険があれば解除。なければ、通りかかった人がどんな反応をするか、データ収集を開始。
わざわざ「あっちに面白いボタンがある」という噂を広める。


 6.『黒鬼』重気さん
 A:気にしない。細かいことは気にしない。進むのに邪魔だったら破壊するが、そうでなければ完全無視。


***


そのほかの皆さんの一番近いと思われる反応は。


1番の方[ワルツ]
2番の方[エリ・バクラム]
3番の方[白(まだ出てきてない)]
4番の方[クリーム]
5番の方[礼一(データ収集まではしない)・ヤン(しかし解除に失敗しそう)・コルロ]
6番の方[かなえ(危ない物には近づかない)・エーダ・ウォール]


****


 次に実際に何人かをその状況に置いて観察してみましょう。


§1、獅子と利香


 二人は長い通路を歩いていた。トンネルのような薄暗くて長い場所。壁には等間隔にランプが置かれ真っ暗になることはなかった。
二人が寄り添うように仲良く歩いていると、通路の真ん中に小さな柱が立っていて、その上にはさも押してくださいと言わんばかりに丸いボタンがぷくりとふくれて待っている。


「これは何でしょう? 了様」
興味はあるが、怪しさも感じて、獅子の腕に掴まるようにして利香は首を傾げる。
そんな利香を少し見てから、獅子は迷わずボタンを押す。


パターンA、仕掛けが危険トラップな場合。
 「ちょっと待て、獅子っ」
 どこからか儀礼が駆け込んでくる。猛スピードで仕掛けを解除し、「むやみに変な物に触るな」と獅子を指差すように言い残して去っていく。
 女性の危機には儀礼が駆けつけるようにできているらしい。
 (……あれ? でもこれだとまるでボタン仕掛けたのが儀礼……になるのか??)


パターンB、モンスターが現れる系統の場合。
 それはそれは喜んで、獅子が倒す。


パターンC、仕掛けが平和な物の場合。
 ほのぼのとする二人。花びらが散る、星空が見える、花火が上がるetc...
 「綺麗ですね、了様」
 「そうだな」
 時間を忘れてのんびりとしていることだろう。


§2、アーデスと儀礼
 即座に解体。誰が何のために、どうして取り付けたのか、どうしたらもっと良くなるか、などなどいつの間にか白熱した議論バトルに……。
もしくはアーデスが面白がって、「ギレイ様、押してみませんか?」と、爽やかな笑顔を見せる。


§3、拓と儀礼
 「お前、押してみろ」
 ボタンを指差し、いきなり命令形な拓。すたすたと一人歩いて行きボタンから距離を取る。
 儀礼は一度仕掛けを分解、拓のいる場所へ発動場所を変更してからボタンを押す。仕掛けは見事に発動するが、当然後から拓の怒りの倍返しが待つという……。


§4、獅子とアーデス
 躊躇なくボタンを押そうとする獅子をアーデスが無言でボタンの上に手を出し制止する。
そこから力比べが始まって、気付けば本格的なバトルに移行……ボタンの存在はどうでもよくなっていく。


§5、利香と儀礼
 「これ、何だろうね。儀礼君」
 覗き込むように利香がボタンを見る。
 「ボタンだね。何が起こるのかな」
 興味深そうに見て、分解し始める儀礼。
 「どうしてこんな所にあるんだろうね」
 儀礼の様子をかがむ様にしてじっと見ながら利香は思ったことを口にする。
 「誰かがいたずらで置いたのかもね。ボタンを押すと上から水が降るようになってる」
 仕掛けを元に戻し、天井を見上げながら儀礼は言った。
 (何か、平和だな、君たちは。)


§6、重気とアーデス
 ………………この二人、会うだけで怖いです。何も怒らないことを願います。明日も世界がありますように。(>人<)


§7、儀礼と重気
 「行くぞ、儀礼。急ぐぞ」
 うおーっと、走っていく重気。何に急いでいるのかはわからない。
 道の真ん中にあるボタンが気になる儀礼。重気の後に続き、走りながらも目の先にあるボタンが、すれ違ったボタンが、通り過ぎていくボタンが、気になる、気になる、気になる。
 「急げ、儀礼!」
 重気の声。
 「はいっ」
 その人には逆らえず、儀礼はそのまま完全に通過する。


§8、儀礼としろ
 「これ何だろ、ギレイ君」
 ボタンのちょっと手前で白は立ち止まる。離れた場所から背伸びするようにしてそれを見ている。
 「待ってね、押さないでね。今調べるから」
 儀礼は道具を取り出し、白より早くボタンに近付き分解を始める。
 「押したらどうなるの?」
 儀礼の隣に来てしゃがみ込む白。見上げるようにして尋ねる。
 「大丈夫だよ、ほら」
 にっこりと笑って儀礼はボタンを押す。通路に次々と、ランプよりも明るい明かりがついていく。
 しかし、元はそんな仕掛けではなかった。
「わぁ、すごい。明かりのスイッチだったんだね」
 にっこりと、疑う様子もなく笑う白。
「うん、そうだね」
 そんな白に微笑みながら、儀礼は小さな爆弾のような物をポケットに隠す。
 後で設置した者を懲らしめておこう、と邪悪な笑みを隠すように儀礼は色眼鏡を押さえるのだった。

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