その出会いは希望の光
その出会いは希望の光
センヤ
流されやすい少年。
  のどかな国のごく普通の一般庶民。
  『マイペース』な人物らしい。
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エン
センヤの友人。
  小柄な少女。
  『鉄砲玉』のような人物らしい。
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小学6年生のセンヤは3階にある教室の窓から校庭を見下ろす。
3階から見る地面はかなりの距離があって、高い所の苦手なセンヤには一瞬目がくらみそうになったほどだった。
真っ直ぐ下にはレンガで囲われた花壇があって、球根から出た芽がずいぶん長い葉を茂らせている。
土は黒々としていて、水をまいたのだろう、よく湿っているようだ。
その先は遊歩道になっていて、柔らかいゴムのような素材で埋め尽くされていた。マラソンなどでよく走らされるものだ。
さらにその先が校庭。小さな砂利や、白っぽい砂で覆われている。
休み時間の今。
元気な小学生達が、給食も食べ終え静まることのない、はしゃぎ声と共に遊び回っている。
センヤはそれを眺めていた。
いや、眺めていたと言うより、視界の端には入っていたが、その喧騒をどこか遠くのものとして聞き流していた。
見ていたのはただ窓の外。この高い場所の下。地面。
仲のいい友達が二人、センヤの元へと駆けて来た。
「センヤ何してんの?」
窓から外を見るセンヤが暇そうに見えたのか、明るい調子で話しかけてくる。
小学校に入る前からの友人、センヤにとっては幼なじみとも言うのだろうか。
「……ここから落ちたらどうなるのかな? って」
センヤは素直に考えていたことを語った。
なんの含みもない、ただの疑問を。
「わー、センヤ怖い!」
友人はふざけたように笑いながらも、叫ぶように声をあげ、一緒に来た友達と、来た時のようにバタバタとどこかへと駆けて行った。
その足音と、後ろ姿を見ながらセンヤは首を傾げる。
(何が怖いんだろう……)
それがセンヤにはわからなかった。自分は何か怖いことを言っただろうか。
そう思い、心の中で首を傾げながらセンヤは再び窓の下に目線をうつす。
遊歩道と校庭の間には植え込みがあり、ハナミズキと言う木も植えられていた。
上から見ると低いけれど、下から見れば、センヤの背丈の二倍はありそうな木。
枝は十分に広がっている。
外を眺めていたセンヤの横に、一人のクラスメイトが寄って来た。
それほど仲のいいわけではないが、話さないほどでもなく、友達の、仲のいい友達という感じの子だ。
「何見てるの?」
遠慮がちにセンヤに問いかけてくる。
優等生タイプの彼女は、昼休みに一人でいるセンヤを気遣ってでも来たのかもしれない。
なかば、ぼーっとしながらセンヤは先程と同じように答える。
純粋な疑問を。
「ここから落ちたらどうなるのかな」
別に、答えに期待なんてしてなかった。
(怖いって逃げるならそれでもいい。一人で考えていたいし)
「ん~、この位の高さじゃ足骨折するとか腕折る位じゃない? よっぽど打ち所悪くないと死なないよ」
少女の返答に、センヤは目が覚めた気分だった。
改めて隣に立った少女を見る。
少女は、いたって真面目な表情でセンヤと同じように窓の下を見ている。
センヤは心の中に湧いてきた言葉を外に出した。
「うん。下、花壇だしね。煉瓦に頭打つとか?」
センヤは窓の下に視線を戻すと、花壇を囲う煉瓦に目を向ける。
逆さに、煉瓦目掛けて落ちる姿を想像すると、少し滑稽だ。
頭から赤い血が流れても、それは全然現実味がなかった。
「うん、土柔らかいもんね。木、越えて校庭の方にでも落ちないと」
校庭の端はコンクリートで補整されている。
「勢いつけなきゃだめだね」
少し遠い校庭の淵を見て、センヤは走り幅跳びを思い出していた。想像の中で勢いを付け、教室の中から3階の窓の外へ飛び出す。窓枠、手摺り、教室の椅子と机、走り抜けるには邪魔な物が多くて、どうしても途中で引っかかってしまう。
「だめだね。って何の話ししてるんだって、ね」
明るくなった少女の声とテンポにセンヤは窓から少女に意識と視線を戻す。
少女は笑っていた。
でもそれは否定じゃない、笑顔。
「……ね」
センヤもたぶん、笑い返した。笑えていたかはわからないが。
だけど、知りたかった答えが知れて、センヤの問いを理解してくれる人がいて、孤独ではないと感じられ、センヤが安堵した瞬間ではあった。
そるが、それまであまり話しもしなかった、これからずっと長い付き合いになる、センヤとエンの出会いだった。
流されやすい少年。
  のどかな国のごく普通の一般庶民。
  『マイペース』な人物らしい。
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エン
センヤの友人。
  小柄な少女。
  『鉄砲玉』のような人物らしい。
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小学6年生のセンヤは3階にある教室の窓から校庭を見下ろす。
3階から見る地面はかなりの距離があって、高い所の苦手なセンヤには一瞬目がくらみそうになったほどだった。
真っ直ぐ下にはレンガで囲われた花壇があって、球根から出た芽がずいぶん長い葉を茂らせている。
土は黒々としていて、水をまいたのだろう、よく湿っているようだ。
その先は遊歩道になっていて、柔らかいゴムのような素材で埋め尽くされていた。マラソンなどでよく走らされるものだ。
さらにその先が校庭。小さな砂利や、白っぽい砂で覆われている。
休み時間の今。
元気な小学生達が、給食も食べ終え静まることのない、はしゃぎ声と共に遊び回っている。
センヤはそれを眺めていた。
いや、眺めていたと言うより、視界の端には入っていたが、その喧騒をどこか遠くのものとして聞き流していた。
見ていたのはただ窓の外。この高い場所の下。地面。
仲のいい友達が二人、センヤの元へと駆けて来た。
「センヤ何してんの?」
窓から外を見るセンヤが暇そうに見えたのか、明るい調子で話しかけてくる。
小学校に入る前からの友人、センヤにとっては幼なじみとも言うのだろうか。
「……ここから落ちたらどうなるのかな? って」
センヤは素直に考えていたことを語った。
なんの含みもない、ただの疑問を。
「わー、センヤ怖い!」
友人はふざけたように笑いながらも、叫ぶように声をあげ、一緒に来た友達と、来た時のようにバタバタとどこかへと駆けて行った。
その足音と、後ろ姿を見ながらセンヤは首を傾げる。
(何が怖いんだろう……)
それがセンヤにはわからなかった。自分は何か怖いことを言っただろうか。
そう思い、心の中で首を傾げながらセンヤは再び窓の下に目線をうつす。
遊歩道と校庭の間には植え込みがあり、ハナミズキと言う木も植えられていた。
上から見ると低いけれど、下から見れば、センヤの背丈の二倍はありそうな木。
枝は十分に広がっている。
外を眺めていたセンヤの横に、一人のクラスメイトが寄って来た。
それほど仲のいいわけではないが、話さないほどでもなく、友達の、仲のいい友達という感じの子だ。
「何見てるの?」
遠慮がちにセンヤに問いかけてくる。
優等生タイプの彼女は、昼休みに一人でいるセンヤを気遣ってでも来たのかもしれない。
なかば、ぼーっとしながらセンヤは先程と同じように答える。
純粋な疑問を。
「ここから落ちたらどうなるのかな」
別に、答えに期待なんてしてなかった。
(怖いって逃げるならそれでもいい。一人で考えていたいし)
「ん~、この位の高さじゃ足骨折するとか腕折る位じゃない? よっぽど打ち所悪くないと死なないよ」
少女の返答に、センヤは目が覚めた気分だった。
改めて隣に立った少女を見る。
少女は、いたって真面目な表情でセンヤと同じように窓の下を見ている。
センヤは心の中に湧いてきた言葉を外に出した。
「うん。下、花壇だしね。煉瓦に頭打つとか?」
センヤは窓の下に視線を戻すと、花壇を囲う煉瓦に目を向ける。
逆さに、煉瓦目掛けて落ちる姿を想像すると、少し滑稽だ。
頭から赤い血が流れても、それは全然現実味がなかった。
「うん、土柔らかいもんね。木、越えて校庭の方にでも落ちないと」
校庭の端はコンクリートで補整されている。
「勢いつけなきゃだめだね」
少し遠い校庭の淵を見て、センヤは走り幅跳びを思い出していた。想像の中で勢いを付け、教室の中から3階の窓の外へ飛び出す。窓枠、手摺り、教室の椅子と机、走り抜けるには邪魔な物が多くて、どうしても途中で引っかかってしまう。
「だめだね。って何の話ししてるんだって、ね」
明るくなった少女の声とテンポにセンヤは窓から少女に意識と視線を戻す。
少女は笑っていた。
でもそれは否定じゃない、笑顔。
「……ね」
センヤもたぶん、笑い返した。笑えていたかはわからないが。
だけど、知りたかった答えが知れて、センヤの問いを理解してくれる人がいて、孤独ではないと感じられ、センヤが安堵した瞬間ではあった。
そるが、それまであまり話しもしなかった、これからずっと長い付き合いになる、センヤとエンの出会いだった。
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