シンリーは龍族の子に呪われた

千夜ニイ

龍族の婚姻

 セーレンとの話を聞いていたセーレンの父親が髭を撫でながら私に確認する。

「龍族の婚姻の証を解くと、二度と龍の国には入れなくなるが良いのか?」

「孤絶した山頂にある龍国に入れなくなったってなんの問題も……って、コンインノアカシ?! 今聞き捨てならない事を聞いた気がするが?」

 セーレンの父親を見たまま、私は開いた口がふさがらない。

「命を同等にするのは龍族の能力の一つだ。強い者が弱い者を守り、最期の時まで一緒に過ごすための魔法だよ」

「片方が事故で死んだらどうするんだよ。完全に呪いじゃないか」

「死なないために、龍族はより強い者との婚姻を望む」

当然のことであるかのようにセーレンの父は頷いている。

「なんで、私がお前と婚姻したことになってるんだ!」

「えへっ」

 理解に苦しみセーレンを問い詰めれば、可愛いらしく笑って誤魔化す。

「ふざけるのも大概にしろ! 私の怒りも限界だっ、人の人生で遊ぶな。お前ら龍族にしたら一瞬なんだろうがな、こっちは必死に生きてんだよ。命を遊びに使うな!」


 恐怖のうちに死んでいった幼い友人達の顔が次々と頭に浮かんできて。
 怒りに任せ、気付いた時には私はセーレンの頰を殴りつけていた。

 その瞬間ズキリ、と激しい痛みが頰に走った。

「ぐあ」

 疼くほおを押さえれば口の中に血の味が広がった。まるで自分で自分を殴ったかの様だった。

「忘れたのか、俺とあんたは一心同体、運命共同体だ」

 痛そうに頰を押さえながらも、喜色を浮かせてセーレンは笑う。

「もういいから、こののろいを解けっ」

 殴りたくても殴れない、もどかしい怒りに私の息は荒くなるばかりだ。

(セーレンの護衛のエリカさん、底知れないほど尊敬するよ)

 私は、変態の相手はマジで辛いと実感した。

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