シンリーは龍族の子に呪われた
魔族からの宣戦布告
ざわざわざわ。
――何かの、音がする。
ざわざわざわ。
ーー人の声。足音。土を耕す音?
その『生きている音』を聞いて私の全身を安堵が駆け巡った。
ーー体中、いたい。
起き上がろうとして体に力が入らない。
目を開けようとして痛みに悲鳴を上げる。いや、上げようとした。
喉からは声が出ない。
体が勝手に震えだす。
ーーなに? 何で? 私の体どうしちゃったの?
自分の体なのに、自分の思い通りに動かない。
ーー逃げなきゃ、逃げなきゃ……。
ガタガタと震える体を何とか前に動かし、脳から送られてくる『逃げろ』という生きるための命令に従おうとする。
「に、げる? なにから」
声はほとんど言葉になっていなかった。
ガツガツと歯の鳴る音が頭に響く。
必死に記憶を辿り、私は急速に全ての場面を思い出した。意識を失う前の出来事を。
「っやぁーーーー!!」
目の前で食い殺されていく友人たち。
町を襲った無数の獣。
「お、おい。何かいるぞ!」
「こっちだ」
「この下だ」
「気をつけろ、奴らの残りかもしれない」
複数の男の声がしたが、何を言ってるのかは聞き取れない。
ただ、自分の喉から言葉にもならない叫びが出続けた。
「子供だ! 生きてるぞ!」
「生存者がいたぞぉ!」
「よーし、もう大丈夫だ。大丈夫だよ。怖かったな」
男の一人が私を抱き上げた。
ゆっくりと背を叩かれ、強く抱きしめられ、生きている体温の心地よさに安心して、私はだんだんに落ち着きを取り戻した。
「助かったのはこの子だけか」
「他は全滅だ」
話し合う男達の声は暗く沈んでいた。
「獣族の国に一番近い町だったからな」
「それでも、ずっとおとなしくしてたのに。いきなり戦争を仕掛けてくるなんて」
ぎりっ、と誰かの歯ぎしりの音が聞こえた。
「その子供を、まずは治療所に連れてってやれ。全身汚れているし疲れ切っている。そのままでは可哀想だ」
誰かの声に、私を抱き上げた男がそのまま歩き出し、テンポよく揺れる体に、私は安らいだ心地でうとうととし始めた。
「この町はもうだめだ。必要な物資を持ったら撤退を始めるぞ、救護班は基地に戻れ、我が隊は戦線に合流する」
大きな音で聞こえてくる声は、私にはもう、意味を理解することはできなかった。
「獣国は名を変え魔族国となった。これより戦うのは今までの獣ではない。
獣族はどのような方法を使ってかその身を進化させた。
全身を金属や岩石で構築し、酸や溶岩を吐き出す『魔族』と称するものになった。
そして人間国に従属するよう求めてきた。
この町の蹂躙は奴らの宣戦布告だ。
我らはこれを良しとしない。
人類には知恵がある。知能がある。知識がある。協力し合ってこの難敵に立ち向かおう!」
「「「おおう!!!」」」
――目が覚めた時、私の知る世界は大きく変わっていた。
――何かの、音がする。
ざわざわざわ。
ーー人の声。足音。土を耕す音?
その『生きている音』を聞いて私の全身を安堵が駆け巡った。
ーー体中、いたい。
起き上がろうとして体に力が入らない。
目を開けようとして痛みに悲鳴を上げる。いや、上げようとした。
喉からは声が出ない。
体が勝手に震えだす。
ーーなに? 何で? 私の体どうしちゃったの?
自分の体なのに、自分の思い通りに動かない。
ーー逃げなきゃ、逃げなきゃ……。
ガタガタと震える体を何とか前に動かし、脳から送られてくる『逃げろ』という生きるための命令に従おうとする。
「に、げる? なにから」
声はほとんど言葉になっていなかった。
ガツガツと歯の鳴る音が頭に響く。
必死に記憶を辿り、私は急速に全ての場面を思い出した。意識を失う前の出来事を。
「っやぁーーーー!!」
目の前で食い殺されていく友人たち。
町を襲った無数の獣。
「お、おい。何かいるぞ!」
「こっちだ」
「この下だ」
「気をつけろ、奴らの残りかもしれない」
複数の男の声がしたが、何を言ってるのかは聞き取れない。
ただ、自分の喉から言葉にもならない叫びが出続けた。
「子供だ! 生きてるぞ!」
「生存者がいたぞぉ!」
「よーし、もう大丈夫だ。大丈夫だよ。怖かったな」
男の一人が私を抱き上げた。
ゆっくりと背を叩かれ、強く抱きしめられ、生きている体温の心地よさに安心して、私はだんだんに落ち着きを取り戻した。
「助かったのはこの子だけか」
「他は全滅だ」
話し合う男達の声は暗く沈んでいた。
「獣族の国に一番近い町だったからな」
「それでも、ずっとおとなしくしてたのに。いきなり戦争を仕掛けてくるなんて」
ぎりっ、と誰かの歯ぎしりの音が聞こえた。
「その子供を、まずは治療所に連れてってやれ。全身汚れているし疲れ切っている。そのままでは可哀想だ」
誰かの声に、私を抱き上げた男がそのまま歩き出し、テンポよく揺れる体に、私は安らいだ心地でうとうととし始めた。
「この町はもうだめだ。必要な物資を持ったら撤退を始めるぞ、救護班は基地に戻れ、我が隊は戦線に合流する」
大きな音で聞こえてくる声は、私にはもう、意味を理解することはできなかった。
「獣国は名を変え魔族国となった。これより戦うのは今までの獣ではない。
獣族はどのような方法を使ってかその身を進化させた。
全身を金属や岩石で構築し、酸や溶岩を吐き出す『魔族』と称するものになった。
そして人間国に従属するよう求めてきた。
この町の蹂躙は奴らの宣戦布告だ。
我らはこれを良しとしない。
人類には知恵がある。知能がある。知識がある。協力し合ってこの難敵に立ち向かおう!」
「「「おおう!!!」」」
――目が覚めた時、私の知る世界は大きく変わっていた。
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