ギレイの旅
ユートラスの攻略
シュリは管理局本部の局長室へと、魔力切れの儀礼を担いで移転してきた。
「おい、アーデス。この荷物どこに置けばいいんだ?」
「そんな物騒な荷物はいらん」
シュリの肩に担がれ爆睡している少年をちらりと見て、アーデスはため息を吐く。
「何で出て行って数時間で、俺の敵が消えてユートラスが友好的になるんだ?」
偉業を成したとは思えない暢気な様子で眠る儀礼に、アーデスは苦虫を噛み潰した様な顔で笑う。
「こいつマジで人使い荒い。次々に移転先指定してきて、兵士と戦闘とか、怪我人の輸送とか」
「前からそう言ってるだろう」
満足気な儀礼をソファーに落とし、シュリは軽くなった体で伸びをする。
結局あの後、儀礼はユートラスの基地をいくつか巡り、管理局と同じ様に巨木で破壊した。
ユートラス精鋭兵の魔法攻撃を耐える植物が、本当にただの雑草だったとは思えないが、死亡者を出さずに軍隊を無力化した所が『蜃気楼』らしい。
『ああ、そうそう。あの種ね』
震えるユートラス将校達の前で、儀礼はふわりと微笑んだ。美しい顔で、悪意のない声で、恐ろしい事を告げようとする。
儀礼の言葉に、自分達に向けて無数に撃ち出されていた凶悪な物体を思い返し、将校達は顔から血の気をなくしていた。
『放っておいたら芽が出るんだけど』
ひぃぃ、と声を漏らしてユートラス将軍までもが涙目になる。あれだけの数の種が芽を出したなら、ユートラスという国は巨木の森に飲み込まれるだろう。
『火を通すと食べられるんだ。栄養価が高くて、美味しいよ』
にっこりと笑う少年の顔には、邪気と言うものが感じられなかった。ただ神々しいまでに美しく、人の目を引きつけて離さない魅力的な微笑。
『じゃあシュリ、やる事やったし帰ろう。僕眠いし』
そう言ってうつらうつらし始めたかと思えば、儀礼は直ぐに眠ってしまった。仕方なくシュリは儀礼を担いでこの管理局本部へとやってきたわけである。
コンコン。
「失礼します、『蜃気楼』様はこちらにいらっしゃいますか?」
ノックと共に、渋い男の声がした。アーデスが警戒しながら扉を開くと、そこには若干よれた軍服を着たユートラスの将軍が立っていた。
その後ろには兵士であろう者たちがずらりと控えている。妙な事に全員よれた軍服を着ていて、敵意は感じなかった。
「『蜃気楼』様はお休みだ、すぐに寝所を整えるのだ」
「「「はっ」」」
将軍の指揮の元、わらわらと兵士達が局長室に入り込み、その奥にある仮眠室へと向かう。
「管理局本部がこの様に人手不足では、誰が『蜃気楼』様のお世話をするのだ。ここは私が」
「ちょっと待て、将軍が国から離れてどうする。ここは娘が『蜃気楼』様の手の内に渡っているわしが残るのが一番良いだろう」
「将軍などと言っても、一番の問題が解決された今、どこにいたってやる事は同じだ。そうだお前、私の地位を狙っていただろう。今ここでくれてやるから、すぐにユートラスに帰れ。『蜃気楼』様のことは私に任せるのだ」
わははは、とユートラスの将軍と副将軍が、最高職の地位を押し付けあって笑っている。
まるで子供の様に瞳を輝かせて。
「何だ、こいつらは。まあ、見れば大体分かるが」
「ギレイが舌を回したらこうなった」
当の本人はこんな騒ぎが起こっているとも知らずに、気持ちよさそうに眠っている。
局長室の奥にある仮眠室では過去ないであろうほど綺麗にベッドメイクが施された。
誰が『蜃気楼』様を運ぶか、と女兵士達が腕をわきわきさせていたので、シュリはもう一度儀礼を抱えてベッドに放り出し、白衣を脱がす。
Sランク知識の詰め込まれたこれは、安易に他人に預けられる物ではない。
(本体はまあ、大丈夫だろう)
シュリは白衣だけを避難させる。
いつのまにか増えた使用人服を着た女性達に、服を脱がされ、寝間着を着せられ、甲斐甲斐しく世話をされても、儀礼はぐっすりと眠っている。
「役職上ここは俺の部屋なんだが……」
あっという間に模様替えされてしまった部屋に、アーデスは引きつった笑みを浮かべる。
「ユートラスは此度の件より『蜃気楼』様を国の英雄と認める。はっはっは」
将軍と副将軍の宣言に兵士達が一斉に、わあーと歓声をあげる。その様子を見て、アーデスの頰はさらに引きつる。
「ギレイの奴、何してきたって?」
「ユートラス本部を一時的に森に変えて、食糧事情全部奪ってきた」
「根が地中深くの水脈を掘り当て、夏でも水が枯れる事なく、一年中、そう冬でも実る植物を与えてくださった。この方は長年飢饉に苦しむ我が国の救い、『蜃気楼』様は天の使いだ!」
苦しかった過去を思い返してか、むせび泣く男達に、手を取り合って踊る女達。
自国が豊かになれば、他国の恵みを無理矢理に奪う必要はない。
ユートラスに住む人間は皆、殺伐としていて、堅い人間ばかりだと思われていた。
環境が変わるだけで、人はこんなにも愉快になれるのか。
その後、騒がしいばかりで落ち着かないので、アーデスは説得して、ユートラスの者達に自国に帰ってもらった。
翌朝。ふわぁ、とあくびをして儀礼は目を覚ました。
「ん〜、これでアルバドリスクの危険は減ったかな」
霞む目をこすり室内を見てみると、殺風景だった局長室の仮眠室が華やかになっている。カーテンの色が変わり、シーツや布団カバーの品質が上がり、大きな花瓶で花まで飾られている。
何があったんだ、と首を傾げながら儀礼は執務室へと足を運んだ。
そこには執務机に向き合って座るアーデスとシュリの姿があった。朝から、小山の書類に目を通している。
「おはよう。これとこれは、もらってく。こっちはヤンさんに送ってね。この辺の書類は確認だけしたらエーダさんのとこ持ってけば処理してくれるよ。これはバクラムさんだから、はい、シュリに渡しとく」
パラパラと書類を見た儀礼は小山をいくつかに分け、自分の分の書類を持つと置いてあった白衣を抱え扉へと手を掛けた。
「シュリ、昨日はありがとう! じゃあ僕、白をアルバドリスクまで送ってくから。僕のサインが必要な書類はデータにしてパソコンに送ってね〜」
ひらひらと手を振り、儀礼は局長室を出て行った。
書類の山は、それぞれが三十分ほどかければ終わる量に調整されている。
「書類滞ってる所にあいつ派遣するか」
「信奉者増やして帰ってくんじゃないの?」
通りすがりの一瞬で行った出来事に気を取られ、儀礼が寝間着のまま出ていった事を、二人は呆然と見送った。
儀礼はドルエド王都の宿へと戻り、出発を告げた。
「白、湖行かない?」
「湖?」
「よし、行こう。利香、了、水着を買いに行くぞ」
儀礼が煌びやかな寝間着で現れた事と、突然の言葉に首を傾げる白と、誰よりも先に立ち上がる拓。
「王都を出て東に行くとね、湖の底に小さな遺跡があるんだ。探し尽くされた遺跡だけど、自分の目で見たくて」
キラキラと瞳を輝かせて儀礼が言う。
「水の中だから今まで探索に行けなかったけど、白と一緒なら行けるでしょ?」
期待の眼差しを向けられて、白は水の精霊シャーロットを見る。
《あなたが望むなら、力を貸すわ》
くすくすとシャーロットが笑う。白が出会った時よりも、ずっと表情が豊かになった白の守護精霊。
青く透き通った光に包まれた彼女は、透明な羽を動かして白の前まで飛んでくる。
儀礼によく似た、美しい顔が微笑んでいる。
「えっと、私の精霊が出来るって」
若干、顔を赤くして白は儀礼に答える。
にっこりと嬉しそうに笑った儀礼を見て、白はさらに赤くなった顔を俯けた。
「お前、なんでそんな派手な格好してんだ?」
獅子が思った疑問を口にする。儀礼の趣味とは思えない、金ぴかに輝く滑らかな布地に、細かく刺繍の施された高級そうな寝間着だ。
ことりと儀礼が首を傾げる。
「あれ? 何だこの服、僕のじゃない」
「だから、お前はどこで何をしてきてんだ」
拓は儀礼の注意力不足に頭を抱える。知らない内に他人の服を着せられているとか、自分の地位や立場を理解しているのか、こいつはと。
直ぐに拳が出なくなった分、拓と儀礼の関係は向上したのだろう。
「うーん? 眼鏡美女達の特別接待受けてきた」
「おい、了、シエンに危害が及ぶ前にこいつ殺そう」
ぽんと手のひらを叩く儀礼を、殺意のこもった目で睨み、拓は腰の剣に手を掛ける。
キョトンと首を傾げる、自分以外の四人に拓は歯噛みする。はあー、と大きなため息を吐くと拓は剣から手を離し、苛立たしげに自分の額を抑える。
「自分の口には気を付けろ、儀礼」
「ここでは気を抜くだけ」
ジロリと睨む拓に、儀礼はくすりと笑う。その悪意の無さにもう一度息を吐いて、拓は出発準備を開始した。
王都を出てすぐに、儀礼は最愛の車、愛華の元へと駆け出した。
「愛華、お待たせ!」
数日、置きっ放しにしていたにも関わらず、砂ぼこりすら付いていないピカピカの車体に儀礼は頬ずりをする。
そのボンネットの上に並んで座る二人の精霊を、白の瞳は捉えた。
一人は儀礼の車に宿る風の精霊、愛華。その隣に座っているのは黄色の体に影のような縞模様のある虎耳の精霊。以前、儀礼が雷の魔石を買った時に見かけた精霊だ。
《また会えたわね》
嬉しそうに笑う愛華の隣で、虎耳の精霊はキョトンと首を傾げている。まだ言葉を話せるほどに成長していないらしい。
小さな精霊が並んだ姿はとても愛らしい。
「アイカ、またよろしくね。雷の精霊さんもよろしく!」
可愛らしい精霊二人の座る愛華の本体に、儀礼に続き白も突撃したのだった。
「おい、アーデス。この荷物どこに置けばいいんだ?」
「そんな物騒な荷物はいらん」
シュリの肩に担がれ爆睡している少年をちらりと見て、アーデスはため息を吐く。
「何で出て行って数時間で、俺の敵が消えてユートラスが友好的になるんだ?」
偉業を成したとは思えない暢気な様子で眠る儀礼に、アーデスは苦虫を噛み潰した様な顔で笑う。
「こいつマジで人使い荒い。次々に移転先指定してきて、兵士と戦闘とか、怪我人の輸送とか」
「前からそう言ってるだろう」
満足気な儀礼をソファーに落とし、シュリは軽くなった体で伸びをする。
結局あの後、儀礼はユートラスの基地をいくつか巡り、管理局と同じ様に巨木で破壊した。
ユートラス精鋭兵の魔法攻撃を耐える植物が、本当にただの雑草だったとは思えないが、死亡者を出さずに軍隊を無力化した所が『蜃気楼』らしい。
『ああ、そうそう。あの種ね』
震えるユートラス将校達の前で、儀礼はふわりと微笑んだ。美しい顔で、悪意のない声で、恐ろしい事を告げようとする。
儀礼の言葉に、自分達に向けて無数に撃ち出されていた凶悪な物体を思い返し、将校達は顔から血の気をなくしていた。
『放っておいたら芽が出るんだけど』
ひぃぃ、と声を漏らしてユートラス将軍までもが涙目になる。あれだけの数の種が芽を出したなら、ユートラスという国は巨木の森に飲み込まれるだろう。
『火を通すと食べられるんだ。栄養価が高くて、美味しいよ』
にっこりと笑う少年の顔には、邪気と言うものが感じられなかった。ただ神々しいまでに美しく、人の目を引きつけて離さない魅力的な微笑。
『じゃあシュリ、やる事やったし帰ろう。僕眠いし』
そう言ってうつらうつらし始めたかと思えば、儀礼は直ぐに眠ってしまった。仕方なくシュリは儀礼を担いでこの管理局本部へとやってきたわけである。
コンコン。
「失礼します、『蜃気楼』様はこちらにいらっしゃいますか?」
ノックと共に、渋い男の声がした。アーデスが警戒しながら扉を開くと、そこには若干よれた軍服を着たユートラスの将軍が立っていた。
その後ろには兵士であろう者たちがずらりと控えている。妙な事に全員よれた軍服を着ていて、敵意は感じなかった。
「『蜃気楼』様はお休みだ、すぐに寝所を整えるのだ」
「「「はっ」」」
将軍の指揮の元、わらわらと兵士達が局長室に入り込み、その奥にある仮眠室へと向かう。
「管理局本部がこの様に人手不足では、誰が『蜃気楼』様のお世話をするのだ。ここは私が」
「ちょっと待て、将軍が国から離れてどうする。ここは娘が『蜃気楼』様の手の内に渡っているわしが残るのが一番良いだろう」
「将軍などと言っても、一番の問題が解決された今、どこにいたってやる事は同じだ。そうだお前、私の地位を狙っていただろう。今ここでくれてやるから、すぐにユートラスに帰れ。『蜃気楼』様のことは私に任せるのだ」
わははは、とユートラスの将軍と副将軍が、最高職の地位を押し付けあって笑っている。
まるで子供の様に瞳を輝かせて。
「何だ、こいつらは。まあ、見れば大体分かるが」
「ギレイが舌を回したらこうなった」
当の本人はこんな騒ぎが起こっているとも知らずに、気持ちよさそうに眠っている。
局長室の奥にある仮眠室では過去ないであろうほど綺麗にベッドメイクが施された。
誰が『蜃気楼』様を運ぶか、と女兵士達が腕をわきわきさせていたので、シュリはもう一度儀礼を抱えてベッドに放り出し、白衣を脱がす。
Sランク知識の詰め込まれたこれは、安易に他人に預けられる物ではない。
(本体はまあ、大丈夫だろう)
シュリは白衣だけを避難させる。
いつのまにか増えた使用人服を着た女性達に、服を脱がされ、寝間着を着せられ、甲斐甲斐しく世話をされても、儀礼はぐっすりと眠っている。
「役職上ここは俺の部屋なんだが……」
あっという間に模様替えされてしまった部屋に、アーデスは引きつった笑みを浮かべる。
「ユートラスは此度の件より『蜃気楼』様を国の英雄と認める。はっはっは」
将軍と副将軍の宣言に兵士達が一斉に、わあーと歓声をあげる。その様子を見て、アーデスの頰はさらに引きつる。
「ギレイの奴、何してきたって?」
「ユートラス本部を一時的に森に変えて、食糧事情全部奪ってきた」
「根が地中深くの水脈を掘り当て、夏でも水が枯れる事なく、一年中、そう冬でも実る植物を与えてくださった。この方は長年飢饉に苦しむ我が国の救い、『蜃気楼』様は天の使いだ!」
苦しかった過去を思い返してか、むせび泣く男達に、手を取り合って踊る女達。
自国が豊かになれば、他国の恵みを無理矢理に奪う必要はない。
ユートラスに住む人間は皆、殺伐としていて、堅い人間ばかりだと思われていた。
環境が変わるだけで、人はこんなにも愉快になれるのか。
その後、騒がしいばかりで落ち着かないので、アーデスは説得して、ユートラスの者達に自国に帰ってもらった。
翌朝。ふわぁ、とあくびをして儀礼は目を覚ました。
「ん〜、これでアルバドリスクの危険は減ったかな」
霞む目をこすり室内を見てみると、殺風景だった局長室の仮眠室が華やかになっている。カーテンの色が変わり、シーツや布団カバーの品質が上がり、大きな花瓶で花まで飾られている。
何があったんだ、と首を傾げながら儀礼は執務室へと足を運んだ。
そこには執務机に向き合って座るアーデスとシュリの姿があった。朝から、小山の書類に目を通している。
「おはよう。これとこれは、もらってく。こっちはヤンさんに送ってね。この辺の書類は確認だけしたらエーダさんのとこ持ってけば処理してくれるよ。これはバクラムさんだから、はい、シュリに渡しとく」
パラパラと書類を見た儀礼は小山をいくつかに分け、自分の分の書類を持つと置いてあった白衣を抱え扉へと手を掛けた。
「シュリ、昨日はありがとう! じゃあ僕、白をアルバドリスクまで送ってくから。僕のサインが必要な書類はデータにしてパソコンに送ってね〜」
ひらひらと手を振り、儀礼は局長室を出て行った。
書類の山は、それぞれが三十分ほどかければ終わる量に調整されている。
「書類滞ってる所にあいつ派遣するか」
「信奉者増やして帰ってくんじゃないの?」
通りすがりの一瞬で行った出来事に気を取られ、儀礼が寝間着のまま出ていった事を、二人は呆然と見送った。
儀礼はドルエド王都の宿へと戻り、出発を告げた。
「白、湖行かない?」
「湖?」
「よし、行こう。利香、了、水着を買いに行くぞ」
儀礼が煌びやかな寝間着で現れた事と、突然の言葉に首を傾げる白と、誰よりも先に立ち上がる拓。
「王都を出て東に行くとね、湖の底に小さな遺跡があるんだ。探し尽くされた遺跡だけど、自分の目で見たくて」
キラキラと瞳を輝かせて儀礼が言う。
「水の中だから今まで探索に行けなかったけど、白と一緒なら行けるでしょ?」
期待の眼差しを向けられて、白は水の精霊シャーロットを見る。
《あなたが望むなら、力を貸すわ》
くすくすとシャーロットが笑う。白が出会った時よりも、ずっと表情が豊かになった白の守護精霊。
青く透き通った光に包まれた彼女は、透明な羽を動かして白の前まで飛んでくる。
儀礼によく似た、美しい顔が微笑んでいる。
「えっと、私の精霊が出来るって」
若干、顔を赤くして白は儀礼に答える。
にっこりと嬉しそうに笑った儀礼を見て、白はさらに赤くなった顔を俯けた。
「お前、なんでそんな派手な格好してんだ?」
獅子が思った疑問を口にする。儀礼の趣味とは思えない、金ぴかに輝く滑らかな布地に、細かく刺繍の施された高級そうな寝間着だ。
ことりと儀礼が首を傾げる。
「あれ? 何だこの服、僕のじゃない」
「だから、お前はどこで何をしてきてんだ」
拓は儀礼の注意力不足に頭を抱える。知らない内に他人の服を着せられているとか、自分の地位や立場を理解しているのか、こいつはと。
直ぐに拳が出なくなった分、拓と儀礼の関係は向上したのだろう。
「うーん? 眼鏡美女達の特別接待受けてきた」
「おい、了、シエンに危害が及ぶ前にこいつ殺そう」
ぽんと手のひらを叩く儀礼を、殺意のこもった目で睨み、拓は腰の剣に手を掛ける。
キョトンと首を傾げる、自分以外の四人に拓は歯噛みする。はあー、と大きなため息を吐くと拓は剣から手を離し、苛立たしげに自分の額を抑える。
「自分の口には気を付けろ、儀礼」
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ジロリと睨む拓に、儀礼はくすりと笑う。その悪意の無さにもう一度息を吐いて、拓は出発準備を開始した。
王都を出てすぐに、儀礼は最愛の車、愛華の元へと駆け出した。
「愛華、お待たせ!」
数日、置きっ放しにしていたにも関わらず、砂ぼこりすら付いていないピカピカの車体に儀礼は頬ずりをする。
そのボンネットの上に並んで座る二人の精霊を、白の瞳は捉えた。
一人は儀礼の車に宿る風の精霊、愛華。その隣に座っているのは黄色の体に影のような縞模様のある虎耳の精霊。以前、儀礼が雷の魔石を買った時に見かけた精霊だ。
《また会えたわね》
嬉しそうに笑う愛華の隣で、虎耳の精霊はキョトンと首を傾げている。まだ言葉を話せるほどに成長していないらしい。
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