ギレイの旅
防衛戦
予告なく突然行われた『蜃気楼』の管理局内での他者実験体禁止宣言。
それが始まった瞬間に世界中が慌ただしく動き出していた。
ある者は歓喜し、ある者は恐怖し、ある者は憎悪を抱いた。
その宣言が世界に認められる前に、全ての元凶を絶つ。
儀礼のいる管理局の周囲には一面を覆い尽くすほどの多数の移転魔法陣が現れていた。
厳重に封じられているドルエドへの魔法行使が、数を頼りにその戒めを突破したのだ。
世界中から集められた悪意。
 うおぉぉお!
死を覚悟した者達の雄叫びが、王都の空気を震わせる。
「マフレ、結界を強化。クガイ、一般人の避難を完了させろ。ラン、好きなだけ暴れろ」
仲間へと指示を出すと、自らも双振りの剣を一つに合わせクリームは砂神の力を起動する。
「『揺れよ』」
ヴンと空気が鳴り、歌のような音楽が流れ出す。
砂神と奏でる、戦場の神楽。
「誰を守り、誰を助けるのか。私はもう決めた。儀礼に付かなかったこと、生きて後悔しろ」
クリームの振るう剣に触れた者は武器や鎧、そして手足を砂塵化していく。
そのすぐ近くではオレンジ色の髪の少女が1人2人、次は3人と数多の敵を斬り伏せていく。
「ふふっ。お仕事、いっぱい」
ふわりと微笑むランジェシカ。
その長い髪に結ばれたリボンはこれだけの乱戦においても少しの汚れもつけてはいない。
「持って帰っていいって」
嬉しそうに少女は笑う。
地に伏せ、呻き声を上げるしかできなくなった者達を恍惚の瞳で見つめて。
「移転魔法陣の出現位置、極北の地下に書き換えます!」
木製の杖を掲げ、白い魔法陣を王都一帯へと広げていくヤン。
王都へと現れた魔法陣は、行き先を極北のアーデスの敷地の地下へと変更させられる。
「あそこか、恐ろしいな。ご愁傷様」
抜け出すことのできない地獄に落ちた生者達を思い、軽薄な笑みを浮かべてコルロは両腕に付けた腕輪を光らせる。
埋め尽くすほどにいた襲撃者が減り、怖気付き逃げに走った討ち漏らしを連撃魔法の乱打が見舞う。
「ブローザ・ジェイ二の所の連中は全員捕縛した。こちらは完了だ」
黒い巨大な槌を持ったバクラムとワルツ、獅子、白が管理局前へと集合した。
「後は、アーデスが上手くやるかだが。心配はいらないな」
その槌を背中へと戻してバクラムは小型のマイクを受け取り『受諾』の音を告げる。
『グラハラア、受諾する』
バクラムに続くようにバクラムの所属国、グラハラアが受諾を表明した。
グラハラアの管理局は『魔剣』を作れるバクラムを逃したくない。
いずれSランクに名を連ねるであろう重要人物を。
だから認める。
バクラムが賛同する新しい管理局の在り方を。
その頃、ユートラスのとある都市にて。
「『双璧』のアーデスがこの国の管理局に何の用だ?」
受付の男が警戒心露わに訝しむ。
ユートラス最大の管理局でアーデスは全身を鎧に包んでいた。
周囲の警備兵達は警戒し、殺気を放っている。
「二十五年前に消えた小さな村の戸籍を確認したい」
複数の書類を出し、アーデスは緊張した様子もなく佇む。
「二十五年前だと? 何だってそんな昔の……」
眉をひそめる受付の男が書類に目を通していると、突如ラジオやパソコンが異音を発する。
ピーッという高音。
そして流れ出したのは『蜃気楼』の信じられない宣言。
管理局内での了承を得ない他者への実験を禁ずる。故意、事故を問わず。
「なんだ、これ。どうなっちまうんだ?」
管理局内の者達の反応は様々だったが、受付の男はただ右往左往し戸惑っているだけのようだった。
「手続きは自分でする」
時間を惜しんだアーデスは受付内へと押し入り、書類の手続きを進めた。
ピーッと再びラジオが鳴り、ドルエド国王からの受諾の表明が始まった。
その音をきっかけに、我を取り戻した受付の男がアーデスへと掴みかかる。
「ここを出ろ、『双璧』! 警備、捕らえろ!」
管理局は命を張ってでも守りきらねばならない。
「フッ」
その者達を軽くあしらい、アーデスはパソコンを操作する。
モニターに表示された『アーデス(3)死亡と推測』という個人情報に、『双璧』のアーデスのデータを同期する。
流れ込む情報。
パソコンがいくつもの警鐘を鳴らす。
緊急事態を察した軍部から、警備兵が続々と送り込まれてくる。
「急いでるんだがな」
仕方ないという風に息を吐いて、アーデスは腕を構える。
管理局内は武器の使用禁止。
管理局の安全を守るために必要なことなのだが、これは面倒だ。
その時、転移陣のある方の通路が俄かに騒がしくなった。
「グオ」「ウベ」といった呻き声が相次いであがる。
「アーデスぅ、可愛い剣士が来てあげたわよ!」
魔法のステッキを手に、全身フリルの女性が、周囲の兵士を足蹴にして受付の台の上へと跳び上がる。
「相変わらずの神出鬼没振りだ」
アーデスは片方の眉を上げる。
「呼ばれたら飛び出るのが剣士の役目! あなたと私の仲でしょう、遠慮なんてしなくていいわ」
「どんな仲だか」
不敵に笑うフリルの女性にアーデスは肩を竦める。
「共に死線を潜り抜けた仲でしょ」
女性はするりとアーデスの背後へと周り、背中合わせに魔法のステッキを掲げる。
「『幻惑の剣士』、管理局ランク"S"『双璧』のアーデスの護衛、喜んで承ります」
それが始まった瞬間に世界中が慌ただしく動き出していた。
ある者は歓喜し、ある者は恐怖し、ある者は憎悪を抱いた。
その宣言が世界に認められる前に、全ての元凶を絶つ。
儀礼のいる管理局の周囲には一面を覆い尽くすほどの多数の移転魔法陣が現れていた。
厳重に封じられているドルエドへの魔法行使が、数を頼りにその戒めを突破したのだ。
世界中から集められた悪意。
 うおぉぉお!
死を覚悟した者達の雄叫びが、王都の空気を震わせる。
「マフレ、結界を強化。クガイ、一般人の避難を完了させろ。ラン、好きなだけ暴れろ」
仲間へと指示を出すと、自らも双振りの剣を一つに合わせクリームは砂神の力を起動する。
「『揺れよ』」
ヴンと空気が鳴り、歌のような音楽が流れ出す。
砂神と奏でる、戦場の神楽。
「誰を守り、誰を助けるのか。私はもう決めた。儀礼に付かなかったこと、生きて後悔しろ」
クリームの振るう剣に触れた者は武器や鎧、そして手足を砂塵化していく。
そのすぐ近くではオレンジ色の髪の少女が1人2人、次は3人と数多の敵を斬り伏せていく。
「ふふっ。お仕事、いっぱい」
ふわりと微笑むランジェシカ。
その長い髪に結ばれたリボンはこれだけの乱戦においても少しの汚れもつけてはいない。
「持って帰っていいって」
嬉しそうに少女は笑う。
地に伏せ、呻き声を上げるしかできなくなった者達を恍惚の瞳で見つめて。
「移転魔法陣の出現位置、極北の地下に書き換えます!」
木製の杖を掲げ、白い魔法陣を王都一帯へと広げていくヤン。
王都へと現れた魔法陣は、行き先を極北のアーデスの敷地の地下へと変更させられる。
「あそこか、恐ろしいな。ご愁傷様」
抜け出すことのできない地獄に落ちた生者達を思い、軽薄な笑みを浮かべてコルロは両腕に付けた腕輪を光らせる。
埋め尽くすほどにいた襲撃者が減り、怖気付き逃げに走った討ち漏らしを連撃魔法の乱打が見舞う。
「ブローザ・ジェイ二の所の連中は全員捕縛した。こちらは完了だ」
黒い巨大な槌を持ったバクラムとワルツ、獅子、白が管理局前へと集合した。
「後は、アーデスが上手くやるかだが。心配はいらないな」
その槌を背中へと戻してバクラムは小型のマイクを受け取り『受諾』の音を告げる。
『グラハラア、受諾する』
バクラムに続くようにバクラムの所属国、グラハラアが受諾を表明した。
グラハラアの管理局は『魔剣』を作れるバクラムを逃したくない。
いずれSランクに名を連ねるであろう重要人物を。
だから認める。
バクラムが賛同する新しい管理局の在り方を。
その頃、ユートラスのとある都市にて。
「『双璧』のアーデスがこの国の管理局に何の用だ?」
受付の男が警戒心露わに訝しむ。
ユートラス最大の管理局でアーデスは全身を鎧に包んでいた。
周囲の警備兵達は警戒し、殺気を放っている。
「二十五年前に消えた小さな村の戸籍を確認したい」
複数の書類を出し、アーデスは緊張した様子もなく佇む。
「二十五年前だと? 何だってそんな昔の……」
眉をひそめる受付の男が書類に目を通していると、突如ラジオやパソコンが異音を発する。
ピーッという高音。
そして流れ出したのは『蜃気楼』の信じられない宣言。
管理局内での了承を得ない他者への実験を禁ずる。故意、事故を問わず。
「なんだ、これ。どうなっちまうんだ?」
管理局内の者達の反応は様々だったが、受付の男はただ右往左往し戸惑っているだけのようだった。
「手続きは自分でする」
時間を惜しんだアーデスは受付内へと押し入り、書類の手続きを進めた。
ピーッと再びラジオが鳴り、ドルエド国王からの受諾の表明が始まった。
その音をきっかけに、我を取り戻した受付の男がアーデスへと掴みかかる。
「ここを出ろ、『双璧』! 警備、捕らえろ!」
管理局は命を張ってでも守りきらねばならない。
「フッ」
その者達を軽くあしらい、アーデスはパソコンを操作する。
モニターに表示された『アーデス(3)死亡と推測』という個人情報に、『双璧』のアーデスのデータを同期する。
流れ込む情報。
パソコンがいくつもの警鐘を鳴らす。
緊急事態を察した軍部から、警備兵が続々と送り込まれてくる。
「急いでるんだがな」
仕方ないという風に息を吐いて、アーデスは腕を構える。
管理局内は武器の使用禁止。
管理局の安全を守るために必要なことなのだが、これは面倒だ。
その時、転移陣のある方の通路が俄かに騒がしくなった。
「グオ」「ウベ」といった呻き声が相次いであがる。
「アーデスぅ、可愛い剣士が来てあげたわよ!」
魔法のステッキを手に、全身フリルの女性が、周囲の兵士を足蹴にして受付の台の上へと跳び上がる。
「相変わらずの神出鬼没振りだ」
アーデスは片方の眉を上げる。
「呼ばれたら飛び出るのが剣士の役目! あなたと私の仲でしょう、遠慮なんてしなくていいわ」
「どんな仲だか」
不敵に笑うフリルの女性にアーデスは肩を竦める。
「共に死線を潜り抜けた仲でしょ」
女性はするりとアーデスの背後へと周り、背中合わせに魔法のステッキを掲げる。
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