ギレイの旅
岩場
請け負った仕事で岩場へとやってきた儀礼たち。
周りには何もない、本当に岩場。
植物も僅かにしかはえておらず、生き物も少なかった。
そして、相手の手違いによるものか、3日で送られてくるはずの食料が、届くのが遅れていた。
 
その状況を見かねたアーデスが食料を手に、儀礼達の元へとやってきた。
「これとこれは食べられる野草です。こっちはさっき取った鳥。これは小さな実ですが栄養があります。」
その手に乗せられているものは、完全に野生のものだった。
「鳥……?」
利香が首を傾げる。
見渡す限りに鳥の姿はない。
「10kmほど先に飛んでました。こんな場所でも案外いるものです。蛇やトカゲでしたらこういう岩の隙間によくいるのですが。」
アーデスは岩の裂け目に腕を突っ込み、中から細く小さな蛇を引っ張り出した。
「これではあまり食べでがありませんね。」
逃がすかどうかを儀礼に促す。
小さくとも毒蛇なので殺処分する。処分先は獅子の胃袋。
「アーデスがいると食べるには困らないね。」
儀礼が苦笑しながら言う。
「お前って、隠れ護衛かなんかじゃなかったか?」
拓が焚き火の様子を見ながら言った。
利香の後を追っていた拓は、利香と儀礼達が合流したすぐ後に姿を現した。
「私が出てこなくてもいい状況でいてくださればいいんです。」
アーデスがさらりと言う。が、嫌味。
ばきっと、拓の手の中の薪が折れた。
「儀礼、塩出せ。こんな味のないもの食えるか。」
何故自分に当たるのか、儀礼はため息を吐く。
ポケットから岩塩を出して渡すと拓は器用にナイフで削り鍋の中へ入れる。
「コショウ。」
と言われ、儀礼は2種類の小瓶を拓に渡す。
「おー、飴くれ。」
何を思ったか、思い出したように獅子が手を出す。
「獅子まで。」
小声で言いながら儀礼は数粒の飴を獅子に渡す。
すると、
「儀礼くん、喉乾いた。」
利香までが言い出す。
「まだあんまり溜まってないけど。」
と言いながら儀礼は背後にある機械から水を取り出す。
金属片を冷やして空気中の水分を集める機械だ。
「沸かしてからだよ。」
と、儀礼は小鍋に水を注ぎ火にかけた。
儀礼たちの水はすでに尽きたろうと思っていたアーデスが驚く。
どうりで鍋に入れる水があるわけだ。
「何でもあるんですね、ギレイ様は。」
「そんなわけないだろ。」
儀礼は呆れた顔をした。
「でもアーデス、どうせ離れた所から見てるなら、ここにいればいいじゃないか。見張りの手が増えるのは嬉しいよ。」
そう言いながら、儀礼は毛布を被った。
職権濫用で、儀礼は身代わりの見張りを手に入れたのだ。
儀礼の隣りに利香が潜り込み、あっという間に二人は夢の中に。
「おい、いいのか、これは。」
遠慮がちに問うアーデス。利香は獅子の婚約者になったはずだ。
いつもなら二人の拳がとんでいる。
「……しょうがねえか、ちびだしな。」
拓が武器を取り出し手入れを始める。
「無理させたか。ま、儀礼が寝るって言うなら今夜は大丈夫だろ。戦いは明日か。」
獅子が遠くを見定めるように立ち上がった。
「正直、利香のこと任せ切りだったからな。」
ドラゴンの目撃情報の多いこの岩場にやってくるまでも、来てからも、拓と獅子は周囲への警戒で手一杯だった。
飛行能力を持つドラゴンは、遠くからだって一瞬で飛んでやってきてしまう。
気を抜く暇はなかった。
なぜそんな所に利香を連れて来たのか。
仕事に向かう途中に現れて、付いてきてしまったのだから仕方がない。
さすがに儀礼の車、愛華も岩場には登れず置いてきてしまっている。
安全を確保するには、拓と獅子が周囲を見張るしかなかった。
そのため、儀礼が、岩場を登る利香の手助けをしていた。
儀礼にだって、体力があるわけではないので、それは大変だっただろう。
二人仲良く眠っている状況を、何も思わないわけではないが、儀礼に何かをする様子がないので、仕方なく許している。
と、言うか、一瞬で深い眠りに落ちるとは、儀礼も利香も相当疲れていたのだろう。
「お前、本当に残るのか?」
若干、嫌そうに眉をしかめて拓がアーデスに問う。
「護衛だからな。」
気にした風もなく、さらりとアーデスは答える。
すでに存在がばれた以上、隠れている必要はないのだ。
「明日の討伐にも参加するのか?」
今度は獅子が聞く。
それによって、戦力が大分変わってくる。
「いや、それは必要ないだろう。」
笑うようにアーデスは言う。
もともと、儀礼と獅子だけで受けた依頼だ。
アーデスが手を貸すのは無粋というものだろう。
「それとは別でやることがあるからな。」
静かに眠っている儀礼の寝顔を見つめて、アーデスは邪悪な笑みを浮かべる。
この場所へ、本来来るはずだった補給の部隊が来ていない。
本当にただの手違いなのか、故意なのか、儀礼が関わっているだけに、調べないわけにはいかない。
そういう仕事が、今までやってきたアーデス達の仕事なのだ。
獅子、拓、アーデスが交代で見張りを務めた翌朝、空の彼方に、一点の影が見えた。
「来たな。」
獅子はためらわず光の剣を抜く。
「利香ちゃんはこれ持ってて。」
儀礼は紫色の宝石、トーラを利香へと手渡す。
これで、利香の安全は絶対に確保された。
それでも、利香と儀礼がこのまま近くにいては、獅子の戦闘の邪魔になる。
「利香ちゃん、岩の切れ目に入ってよう。この辺の隙間なら、大きいから隠れてられるよ。獅子の邪魔になるのは嫌だろう。」
儀礼は近くの岩の切れ目に利香を押し込む。
そうして、自分も一緒にその隙間に入り込んだ。
中には少し広い空間があった。
上部からは狭いながらも岩の切れ目から、青い空が見えている。
少し、洞窟の様にも感じられる空間だ。
「グオォォォー!」
空の上の方から、唸るようなドラゴンの鳴き声が聞こえてきた。
高い崖の上に登った獅子と拓に警戒を表して、咆えているようだった。
周りには何もない、本当に岩場。
植物も僅かにしかはえておらず、生き物も少なかった。
そして、相手の手違いによるものか、3日で送られてくるはずの食料が、届くのが遅れていた。
 
その状況を見かねたアーデスが食料を手に、儀礼達の元へとやってきた。
「これとこれは食べられる野草です。こっちはさっき取った鳥。これは小さな実ですが栄養があります。」
その手に乗せられているものは、完全に野生のものだった。
「鳥……?」
利香が首を傾げる。
見渡す限りに鳥の姿はない。
「10kmほど先に飛んでました。こんな場所でも案外いるものです。蛇やトカゲでしたらこういう岩の隙間によくいるのですが。」
アーデスは岩の裂け目に腕を突っ込み、中から細く小さな蛇を引っ張り出した。
「これではあまり食べでがありませんね。」
逃がすかどうかを儀礼に促す。
小さくとも毒蛇なので殺処分する。処分先は獅子の胃袋。
「アーデスがいると食べるには困らないね。」
儀礼が苦笑しながら言う。
「お前って、隠れ護衛かなんかじゃなかったか?」
拓が焚き火の様子を見ながら言った。
利香の後を追っていた拓は、利香と儀礼達が合流したすぐ後に姿を現した。
「私が出てこなくてもいい状況でいてくださればいいんです。」
アーデスがさらりと言う。が、嫌味。
ばきっと、拓の手の中の薪が折れた。
「儀礼、塩出せ。こんな味のないもの食えるか。」
何故自分に当たるのか、儀礼はため息を吐く。
ポケットから岩塩を出して渡すと拓は器用にナイフで削り鍋の中へ入れる。
「コショウ。」
と言われ、儀礼は2種類の小瓶を拓に渡す。
「おー、飴くれ。」
何を思ったか、思い出したように獅子が手を出す。
「獅子まで。」
小声で言いながら儀礼は数粒の飴を獅子に渡す。
すると、
「儀礼くん、喉乾いた。」
利香までが言い出す。
「まだあんまり溜まってないけど。」
と言いながら儀礼は背後にある機械から水を取り出す。
金属片を冷やして空気中の水分を集める機械だ。
「沸かしてからだよ。」
と、儀礼は小鍋に水を注ぎ火にかけた。
儀礼たちの水はすでに尽きたろうと思っていたアーデスが驚く。
どうりで鍋に入れる水があるわけだ。
「何でもあるんですね、ギレイ様は。」
「そんなわけないだろ。」
儀礼は呆れた顔をした。
「でもアーデス、どうせ離れた所から見てるなら、ここにいればいいじゃないか。見張りの手が増えるのは嬉しいよ。」
そう言いながら、儀礼は毛布を被った。
職権濫用で、儀礼は身代わりの見張りを手に入れたのだ。
儀礼の隣りに利香が潜り込み、あっという間に二人は夢の中に。
「おい、いいのか、これは。」
遠慮がちに問うアーデス。利香は獅子の婚約者になったはずだ。
いつもなら二人の拳がとんでいる。
「……しょうがねえか、ちびだしな。」
拓が武器を取り出し手入れを始める。
「無理させたか。ま、儀礼が寝るって言うなら今夜は大丈夫だろ。戦いは明日か。」
獅子が遠くを見定めるように立ち上がった。
「正直、利香のこと任せ切りだったからな。」
ドラゴンの目撃情報の多いこの岩場にやってくるまでも、来てからも、拓と獅子は周囲への警戒で手一杯だった。
飛行能力を持つドラゴンは、遠くからだって一瞬で飛んでやってきてしまう。
気を抜く暇はなかった。
なぜそんな所に利香を連れて来たのか。
仕事に向かう途中に現れて、付いてきてしまったのだから仕方がない。
さすがに儀礼の車、愛華も岩場には登れず置いてきてしまっている。
安全を確保するには、拓と獅子が周囲を見張るしかなかった。
そのため、儀礼が、岩場を登る利香の手助けをしていた。
儀礼にだって、体力があるわけではないので、それは大変だっただろう。
二人仲良く眠っている状況を、何も思わないわけではないが、儀礼に何かをする様子がないので、仕方なく許している。
と、言うか、一瞬で深い眠りに落ちるとは、儀礼も利香も相当疲れていたのだろう。
「お前、本当に残るのか?」
若干、嫌そうに眉をしかめて拓がアーデスに問う。
「護衛だからな。」
気にした風もなく、さらりとアーデスは答える。
すでに存在がばれた以上、隠れている必要はないのだ。
「明日の討伐にも参加するのか?」
今度は獅子が聞く。
それによって、戦力が大分変わってくる。
「いや、それは必要ないだろう。」
笑うようにアーデスは言う。
もともと、儀礼と獅子だけで受けた依頼だ。
アーデスが手を貸すのは無粋というものだろう。
「それとは別でやることがあるからな。」
静かに眠っている儀礼の寝顔を見つめて、アーデスは邪悪な笑みを浮かべる。
この場所へ、本来来るはずだった補給の部隊が来ていない。
本当にただの手違いなのか、故意なのか、儀礼が関わっているだけに、調べないわけにはいかない。
そういう仕事が、今までやってきたアーデス達の仕事なのだ。
獅子、拓、アーデスが交代で見張りを務めた翌朝、空の彼方に、一点の影が見えた。
「来たな。」
獅子はためらわず光の剣を抜く。
「利香ちゃんはこれ持ってて。」
儀礼は紫色の宝石、トーラを利香へと手渡す。
これで、利香の安全は絶対に確保された。
それでも、利香と儀礼がこのまま近くにいては、獅子の戦闘の邪魔になる。
「利香ちゃん、岩の切れ目に入ってよう。この辺の隙間なら、大きいから隠れてられるよ。獅子の邪魔になるのは嫌だろう。」
儀礼は近くの岩の切れ目に利香を押し込む。
そうして、自分も一緒にその隙間に入り込んだ。
中には少し広い空間があった。
上部からは狭いながらも岩の切れ目から、青い空が見えている。
少し、洞窟の様にも感じられる空間だ。
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