ギレイの旅
黒獅子への挑戦者
儀礼がアルタミラーノとカイダルの資料に夢中になっている頃。
獅子の元には、一人の男が現れていた。
パサパサとした茶色の髪、日に焼けた肌、恰幅のいい身体。
幅の広い剣を持った、大きな男。
金属製の胸当てや、肩当を装着しており、歴戦の戦士というような風格を持っていた。
「お前が『黒獅子』だな。」
黒い髪と黒い瞳、それに見るだけで分かるほど有名な装飾も美しい『光の剣』。
確認するように言いながらも、男はニヤリと自信ありげに笑う。
「ああ。リョウ・シシクラだ。」
獅子は大きな男に名乗る。光の剣を抜き放ちながら。
「お前のような小僧に、そんな立派な剣はもったいない。俺のような実力者が持ってこそ、真の力を発揮するというものだ。」
にやにやと小ばかにしたような笑いを浮かべて、男は獅子を挑発する。
しかし、獅子は冷静に剣に闘気を込める。
光の剣が白い輝きを放つ。
「俺の名は『集剣』のエルニソン・ジマーニ。」
幅の広い剣を一振りして、男は名乗った。
鋭い風圧が獅子の元へと襲い掛かる。
その風の刃を、剣を薙ぐようにして獅子は払った。
光の剣はドーム状に白い光の結界のようなものを張っていた。
「同じ村で育ったんだ。儀礼にできて、俺にできないわけがない。」
嬉しそうな、獰猛な笑みを浮かべて、獅子はさらに光の剣を構えた。
ジマーニは同じ様に笑うと、次々と風圧の刃を切り出し、そして、ついには本物の刃で獅子に切りかかった。
その剣を獅子は受け止める。
獅子の元に剣を奪いにやってくる者はこれが初めてではない。
儀礼の元へ、刺客や間者が現れるように、獅子の元へは剣を狙う冒険者たちや、雇われてきた傭兵等が訪れていたのだ。
それらを獅子は全て返り討ちにしてきた。
でなければ、光の剣はとっくに別の者の手に渡ってしまっている。
獅子はいつでも負けるわけにはいかないのだ。
次々と速い速度で襲い掛かってくる刃を、獅子は受ける。
右、左、正面、斜め、息をつく暇もないほどに速く、ジマーニは剣を振るってくる。
刃同士がぶつかり合う度に火花が散り、大きな金属音が辺りに響く。
風圧が、いつしか闘気の渦を巻き起こし、周囲を暴風が襲う。
しかし、今の獅子には余裕があった。
今までにもあった、何度もの戦い。
クリームや、ワルツや、シュリたちとの戦い。
この男は、ワルツやアーデスよりも弱い。
確かに獅子は、そう感じ取っていた。
闘気の渦もしだいに獅子を中心に、主と認めたがごとく、光の剣の意思のままに動いてゆく。
ヒガと戦った時よりも、獅子はずっと成長している。
余裕を持って勝てる戦いに見えた。
ジマーニが苦境の中で獅子の闘気に押されながら、にやりと口の端を上げるまでは――。
いやらしく上がったジマーニの口元。
何かある、と獅子が身構えた時だった。
ザシュッ。
何かが、背後から獅子の体の一部を貫いた。
誰もいないはずの後ろから襲ってきたそれらに、獅子は避けるのが遅れた。
獅子の腕を、体を、貫いたもの。それは先程から、いや、戦いの初めからジマーニが放っていた闘気の刃だった。
「知らなかったようだな。俺の使う剣の名は『集刃剣』。撃ち放った闘気の刃を再び集め自在に操ることができるのだ。」
ふははは、と笑い、ジマーニは傷付いた獅子へと向かってさらに闘気の刃を操って向かわせる。
獅子に有利に見えていた戦局が、一転してジマーニへと勝機が流れてしまっていた。
獅子の体からは赤い血が流れ落ちていく。
敵に対しての知識不足。
それが、獅子にとってあだになった。
ジマーニは次々に闘気の刃を放っては、一気に集めて獅子へと襲わせる。
何十本もの剣を一度に相手にするようなものだった。
避けることも難しく、全ての刃は無効化できない。
「ぐあぁ。」
再び刺さった闘気の刃に、獅子は呻き声を漏らした。
刃の一部が、体の中心をかすっていた。
ぐらりと一瞬、獅子の体が揺れる。
それでも、一人で戦いに出て、負けて帰るわけにはいかない。
宿には、今、儀礼だけでなく利香も一緒に待っているのだ。
光の剣を杖のように支えにして、獅子は立ち上がった。
「さぁ、お前の力などその程度だ。剣を使いこなすことすらできない。もったいない。もったいないだろう。天下の『光の剣』が。その剣は、俺のような武器を使いこなせる者が持ってこそ真の力を発揮する。さぁ、その剣を俺によこせ!」
魔剣、『集刃剣』を操って、ジマーニは獅子の背後から刃が襲うように仕向ける。
獅子にとって背後からの攻撃を避けることはわけがない。
しかし、この攻撃は手数が多すぎた。
全てを捌くことができない。
それに魔剣の力なのか、その闘気の刃は、普通の剣のように確かな硬さと質量を持っていた。
鋭い刃が、獅子の腕や足を切り、かすめてゆく。
光の剣の張る結界の、弱い部分を見抜いたかのように、刃は障壁を貫いて獅子を攻撃してくるのだ。
「くっそぉ……。」
流れていく血を気にも留めず、獅子はさらに闘気を練る。
(負けるわけにはいかない。)
獅子に有利に戦いが進んでいても、不気味にあったジマーニの余裕は、この戦い方によるものだったのだ。
獅子の元には、一人の男が現れていた。
パサパサとした茶色の髪、日に焼けた肌、恰幅のいい身体。
幅の広い剣を持った、大きな男。
金属製の胸当てや、肩当を装着しており、歴戦の戦士というような風格を持っていた。
「お前が『黒獅子』だな。」
黒い髪と黒い瞳、それに見るだけで分かるほど有名な装飾も美しい『光の剣』。
確認するように言いながらも、男はニヤリと自信ありげに笑う。
「ああ。リョウ・シシクラだ。」
獅子は大きな男に名乗る。光の剣を抜き放ちながら。
「お前のような小僧に、そんな立派な剣はもったいない。俺のような実力者が持ってこそ、真の力を発揮するというものだ。」
にやにやと小ばかにしたような笑いを浮かべて、男は獅子を挑発する。
しかし、獅子は冷静に剣に闘気を込める。
光の剣が白い輝きを放つ。
「俺の名は『集剣』のエルニソン・ジマーニ。」
幅の広い剣を一振りして、男は名乗った。
鋭い風圧が獅子の元へと襲い掛かる。
その風の刃を、剣を薙ぐようにして獅子は払った。
光の剣はドーム状に白い光の結界のようなものを張っていた。
「同じ村で育ったんだ。儀礼にできて、俺にできないわけがない。」
嬉しそうな、獰猛な笑みを浮かべて、獅子はさらに光の剣を構えた。
ジマーニは同じ様に笑うと、次々と風圧の刃を切り出し、そして、ついには本物の刃で獅子に切りかかった。
その剣を獅子は受け止める。
獅子の元に剣を奪いにやってくる者はこれが初めてではない。
儀礼の元へ、刺客や間者が現れるように、獅子の元へは剣を狙う冒険者たちや、雇われてきた傭兵等が訪れていたのだ。
それらを獅子は全て返り討ちにしてきた。
でなければ、光の剣はとっくに別の者の手に渡ってしまっている。
獅子はいつでも負けるわけにはいかないのだ。
次々と速い速度で襲い掛かってくる刃を、獅子は受ける。
右、左、正面、斜め、息をつく暇もないほどに速く、ジマーニは剣を振るってくる。
刃同士がぶつかり合う度に火花が散り、大きな金属音が辺りに響く。
風圧が、いつしか闘気の渦を巻き起こし、周囲を暴風が襲う。
しかし、今の獅子には余裕があった。
今までにもあった、何度もの戦い。
クリームや、ワルツや、シュリたちとの戦い。
この男は、ワルツやアーデスよりも弱い。
確かに獅子は、そう感じ取っていた。
闘気の渦もしだいに獅子を中心に、主と認めたがごとく、光の剣の意思のままに動いてゆく。
ヒガと戦った時よりも、獅子はずっと成長している。
余裕を持って勝てる戦いに見えた。
ジマーニが苦境の中で獅子の闘気に押されながら、にやりと口の端を上げるまでは――。
いやらしく上がったジマーニの口元。
何かある、と獅子が身構えた時だった。
ザシュッ。
何かが、背後から獅子の体の一部を貫いた。
誰もいないはずの後ろから襲ってきたそれらに、獅子は避けるのが遅れた。
獅子の腕を、体を、貫いたもの。それは先程から、いや、戦いの初めからジマーニが放っていた闘気の刃だった。
「知らなかったようだな。俺の使う剣の名は『集刃剣』。撃ち放った闘気の刃を再び集め自在に操ることができるのだ。」
ふははは、と笑い、ジマーニは傷付いた獅子へと向かってさらに闘気の刃を操って向かわせる。
獅子に有利に見えていた戦局が、一転してジマーニへと勝機が流れてしまっていた。
獅子の体からは赤い血が流れ落ちていく。
敵に対しての知識不足。
それが、獅子にとってあだになった。
ジマーニは次々に闘気の刃を放っては、一気に集めて獅子へと襲わせる。
何十本もの剣を一度に相手にするようなものだった。
避けることも難しく、全ての刃は無効化できない。
「ぐあぁ。」
再び刺さった闘気の刃に、獅子は呻き声を漏らした。
刃の一部が、体の中心をかすっていた。
ぐらりと一瞬、獅子の体が揺れる。
それでも、一人で戦いに出て、負けて帰るわけにはいかない。
宿には、今、儀礼だけでなく利香も一緒に待っているのだ。
光の剣を杖のように支えにして、獅子は立ち上がった。
「さぁ、お前の力などその程度だ。剣を使いこなすことすらできない。もったいない。もったいないだろう。天下の『光の剣』が。その剣は、俺のような武器を使いこなせる者が持ってこそ真の力を発揮する。さぁ、その剣を俺によこせ!」
魔剣、『集刃剣』を操って、ジマーニは獅子の背後から刃が襲うように仕向ける。
獅子にとって背後からの攻撃を避けることはわけがない。
しかし、この攻撃は手数が多すぎた。
全てを捌くことができない。
それに魔剣の力なのか、その闘気の刃は、普通の剣のように確かな硬さと質量を持っていた。
鋭い刃が、獅子の腕や足を切り、かすめてゆく。
光の剣の張る結界の、弱い部分を見抜いたかのように、刃は障壁を貫いて獅子を攻撃してくるのだ。
「くっそぉ……。」
流れていく血を気にも留めず、獅子はさらに闘気を練る。
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