ギレイの旅
ロームの遺跡4階2部屋目
「本当にボスがいるんだとしたらどんなタイプだと思う?」
昼食のスープを飲みながら、儀礼はシュリに尋ねる。
4階2部屋目も攻略して、儀礼たちは一息ついているところだ。
今まで、このロームの遺跡に現れた魔物は統一性がない。
魔獣もいれば、魔虫もいたし、ゴーストタイプと呼ばれる実態のないタイプの魔物までいた。
そういう敵には獅子の光の剣が不思議とよく効いたのだ。
後は、シュリの攻撃魔法。
儀礼の銃弾は素通りした。
ちょっと、一度構造を調べてみたいと、儀礼は思った。
「同じタイプの魔物でも、強さが変わってきてたからな。何が出るのかは分からないが、Aランクの強さの魔物が出てきてもおかしくはないな。」
「Aランクか。」
獅子が楽しそうににやりと笑う。
「魔物召喚トラップは、早めに壊した方がいいよね。これ以上魔物が強くならないうちに。」
「魔物が増えないうちに、だろ。」
シュリが儀礼の言葉を訂正する。
「え? でも、魔物の数って、それほど多くなくなかった? 強さだけが上がってて、まるで魔力を吸い込んだみたいにさ。」
「魔力を吸い込む? お前、何を言ってるんだ?」
理解できないと言うように、シュリが眉を寄せる。
「だって、魔力って、魔物の力の源でしょう。魔力を吸収するほど強くなるんじゃないの?」
「……魔物の強さか。考えたことなかったな。ランクごとにある程度決まってるが、ここに出る魔物はランクよりも強い。」
断定するようにシュリは言う。
「うん。強かったでしょう。」
儀礼は頷く。
「精霊は魔力吸収して強くなるって、白が言ってたから、魔物もそうなのかなって。」
「精霊は特別だろ。どっちかと言うと、魔物とは正反対の存在だな。」
カナルが言う。
「そうなの?」
キョトンとする儀礼の顔は幼い。話を理解しているのかすら不安になってくる。
「あっ……。」
突然、儀礼が呟いた。そして頭を抱える。
「ごめん。魔物召喚トラップ、壊さないで保存、ってできる?」
困ったような顔で儀礼は聞いた。
「何だ? 突然。壊さずに封印すればいいってだけの話だろう。」
シュリが言う。
儀礼は今まで、朝月に頼んで、全てのトラップを破壊してきたが、シュリは確かに封印するとか、上書きするという方法があると、言っていた。
「実は僕、遺跡に入ってからずっと、情報屋とやり取りしてたんだけどね。最上階のそのトラップを研究したいって人がかなり出てきてるらしいんだ。」
手袋のキーを叩くのを一度やめて、儀礼はシュリたちに説明する。
昨日出会った、ハートリーたちの持ち帰った情報から、Bランクの遺跡に、Aランクの魔物を生み出す可能性のある魔法トラップという存在が知られたらしい。
これから、その依頼を受けて、他のパーティがこの遺跡にやってくる可能性があるが、今、一番その魔法陣に近い位置にいるのは儀礼達だ。
アナザーを通してなら、ここからその依頼を受けることができる。
「トラップを破壊せずに封印できたら、報酬が2倍になる。」
ニヤリと口の端を上げて儀礼は言う。
「いいな、それ。」
シュリがつられたようにして笑った。
「ただ、本当にAランクの強さを持った魔物がいた場合、そいつの相手をしながらトラップを封じないといけない。」
「作戦が必要だな。」
シュリが考え込むようにして、言う。
「相手の種類も分からないしな。」
カナルも腕を組んで考え込む。
「相手がどんな奴だろうが、倒すしかないだろう。あいつらなら、迷わずやるんだろうな。」
光の剣の柄に手をかけて、獅子が言った。
この場合の「あいつら」とは、アーデスや、ワルツやヒガなどの、上位Aランクの実力者たちを指しているのだろう。
獅子の言葉には迷いがない。
真っ直ぐに、まだ見ぬ敵を見据えているようだった。
「親父なら、迷いもしないだろうな。」
ぐだぐだと話し合いの場すら設けず、強敵へと挑む『黒鬼』、獅子倉重気の姿が見えた気がした。
それは、ずいぶんと爽快な答えに感じた。
「どっちにしろ、行くしかないんだもんな。」
不安を拭い去ったかのような笑顔でシュリが言う。
「どんな敵だろうが、ぶっ飛ばすまでだ。」
大きなハンマーを一振りして、カナルが言った。
「魔物召喚トラップは最上階の階段を上がって、すぐのところにあるんだ。だから、起動しちゃった人たちも引っかかった。1部屋しかなく、魔物はどの位いるのか分からない。獅子とカナルは魔物を頼むね。シュリと僕はどうする?」
戦いに出たいと、表情が語っているシュリに、儀礼はにこりと微笑んで聞いてみる。
「お前に封印陣の使い方を教えておく。トラップは任せた。」
シュリが言う。
「封印陣? って、何?」
聞いたこともない、と答える儀礼の言葉に、若干の不安を覚えるシュリ。
「一昨日、言っただろう。魔法トラップを無効化する方法の一つだよ。」
そう言って、シュリはバッグから何枚かの紙の束を取り出した。
「この紙に描かれてる魔法陣は魔力を封じるものだ。これを魔法トラップに貼り付けることでトラップを無効化することができるんだ。」
封印陣を儀礼に手渡しながら、シュリは言う。
「ただし、Eランクのトラップなら1枚でいい封印陣も、トラップのランクが上がるごとに必要な枚数が増える。Bランクなら10枚。Aランクなら20枚程だ。」
儀礼が、渡された封印陣の枚数を数えてみれば、ちょうど20枚あった。
「これ、手描きだね。」
一枚一枚が、まったく同じ文様を描いているが、微妙な誤差があることを見て儀礼は言う。
「ああ。俺が作った。正確に陣を描いてから魔力を送り込むんだ。そうすれば、誰でも使えるようになる。管理局でも、ギルドでも売ってるぞ。値は張るがな。」
シュリが言う。
「へぇ。僕、初めて見た。」
(お前は、Sランクなんだろう!)と、シュリは叫びたくなった。
管理局の王が、管理局の初歩レベルの常識を知らない。
((こいつに任せて、本当に大丈夫だろうか。))
この後の戦闘に不安を覚えるシュリとカナルだった。
昼食のスープを飲みながら、儀礼はシュリに尋ねる。
4階2部屋目も攻略して、儀礼たちは一息ついているところだ。
今まで、このロームの遺跡に現れた魔物は統一性がない。
魔獣もいれば、魔虫もいたし、ゴーストタイプと呼ばれる実態のないタイプの魔物までいた。
そういう敵には獅子の光の剣が不思議とよく効いたのだ。
後は、シュリの攻撃魔法。
儀礼の銃弾は素通りした。
ちょっと、一度構造を調べてみたいと、儀礼は思った。
「同じタイプの魔物でも、強さが変わってきてたからな。何が出るのかは分からないが、Aランクの強さの魔物が出てきてもおかしくはないな。」
「Aランクか。」
獅子が楽しそうににやりと笑う。
「魔物召喚トラップは、早めに壊した方がいいよね。これ以上魔物が強くならないうちに。」
「魔物が増えないうちに、だろ。」
シュリが儀礼の言葉を訂正する。
「え? でも、魔物の数って、それほど多くなくなかった? 強さだけが上がってて、まるで魔力を吸い込んだみたいにさ。」
「魔力を吸い込む? お前、何を言ってるんだ?」
理解できないと言うように、シュリが眉を寄せる。
「だって、魔力って、魔物の力の源でしょう。魔力を吸収するほど強くなるんじゃないの?」
「……魔物の強さか。考えたことなかったな。ランクごとにある程度決まってるが、ここに出る魔物はランクよりも強い。」
断定するようにシュリは言う。
「うん。強かったでしょう。」
儀礼は頷く。
「精霊は魔力吸収して強くなるって、白が言ってたから、魔物もそうなのかなって。」
「精霊は特別だろ。どっちかと言うと、魔物とは正反対の存在だな。」
カナルが言う。
「そうなの?」
キョトンとする儀礼の顔は幼い。話を理解しているのかすら不安になってくる。
「あっ……。」
突然、儀礼が呟いた。そして頭を抱える。
「ごめん。魔物召喚トラップ、壊さないで保存、ってできる?」
困ったような顔で儀礼は聞いた。
「何だ? 突然。壊さずに封印すればいいってだけの話だろう。」
シュリが言う。
儀礼は今まで、朝月に頼んで、全てのトラップを破壊してきたが、シュリは確かに封印するとか、上書きするという方法があると、言っていた。
「実は僕、遺跡に入ってからずっと、情報屋とやり取りしてたんだけどね。最上階のそのトラップを研究したいって人がかなり出てきてるらしいんだ。」
手袋のキーを叩くのを一度やめて、儀礼はシュリたちに説明する。
昨日出会った、ハートリーたちの持ち帰った情報から、Bランクの遺跡に、Aランクの魔物を生み出す可能性のある魔法トラップという存在が知られたらしい。
これから、その依頼を受けて、他のパーティがこの遺跡にやってくる可能性があるが、今、一番その魔法陣に近い位置にいるのは儀礼達だ。
アナザーを通してなら、ここからその依頼を受けることができる。
「トラップを破壊せずに封印できたら、報酬が2倍になる。」
ニヤリと口の端を上げて儀礼は言う。
「いいな、それ。」
シュリがつられたようにして笑った。
「ただ、本当にAランクの強さを持った魔物がいた場合、そいつの相手をしながらトラップを封じないといけない。」
「作戦が必要だな。」
シュリが考え込むようにして、言う。
「相手の種類も分からないしな。」
カナルも腕を組んで考え込む。
「相手がどんな奴だろうが、倒すしかないだろう。あいつらなら、迷わずやるんだろうな。」
光の剣の柄に手をかけて、獅子が言った。
この場合の「あいつら」とは、アーデスや、ワルツやヒガなどの、上位Aランクの実力者たちを指しているのだろう。
獅子の言葉には迷いがない。
真っ直ぐに、まだ見ぬ敵を見据えているようだった。
「親父なら、迷いもしないだろうな。」
ぐだぐだと話し合いの場すら設けず、強敵へと挑む『黒鬼』、獅子倉重気の姿が見えた気がした。
それは、ずいぶんと爽快な答えに感じた。
「どっちにしろ、行くしかないんだもんな。」
不安を拭い去ったかのような笑顔でシュリが言う。
「どんな敵だろうが、ぶっ飛ばすまでだ。」
大きなハンマーを一振りして、カナルが言った。
「魔物召喚トラップは最上階の階段を上がって、すぐのところにあるんだ。だから、起動しちゃった人たちも引っかかった。1部屋しかなく、魔物はどの位いるのか分からない。獅子とカナルは魔物を頼むね。シュリと僕はどうする?」
戦いに出たいと、表情が語っているシュリに、儀礼はにこりと微笑んで聞いてみる。
「お前に封印陣の使い方を教えておく。トラップは任せた。」
シュリが言う。
「封印陣? って、何?」
聞いたこともない、と答える儀礼の言葉に、若干の不安を覚えるシュリ。
「一昨日、言っただろう。魔法トラップを無効化する方法の一つだよ。」
そう言って、シュリはバッグから何枚かの紙の束を取り出した。
「この紙に描かれてる魔法陣は魔力を封じるものだ。これを魔法トラップに貼り付けることでトラップを無効化することができるんだ。」
封印陣を儀礼に手渡しながら、シュリは言う。
「ただし、Eランクのトラップなら1枚でいい封印陣も、トラップのランクが上がるごとに必要な枚数が増える。Bランクなら10枚。Aランクなら20枚程だ。」
儀礼が、渡された封印陣の枚数を数えてみれば、ちょうど20枚あった。
「これ、手描きだね。」
一枚一枚が、まったく同じ文様を描いているが、微妙な誤差があることを見て儀礼は言う。
「ああ。俺が作った。正確に陣を描いてから魔力を送り込むんだ。そうすれば、誰でも使えるようになる。管理局でも、ギルドでも売ってるぞ。値は張るがな。」
シュリが言う。
「へぇ。僕、初めて見た。」
(お前は、Sランクなんだろう!)と、シュリは叫びたくなった。
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