ギレイの旅
ロームの遺跡2階2
「助けて!」
獅子の姿を認めると、女性は叫ぶような声で助けを求める。
言われるまでもなく、獅子は女性を襲っている魔獣を切り伏せた。
「はっ、はっ、あ、ありがとうございます。」
荒い息と、震える声で女性は獅子に礼を言った。
「怪我してるね。応急処置しかできないけど。」
言いながら、儀礼は女性に近付き、傷口を洗い流して薬を塗る。
「あ、あのっ!」
それでも、その手当てに抗うように暴れながら、女性は獅子達に向かって何かを言おうとする。
「大丈夫だよ。もう魔獣はいないし。」
儀礼が安心させるように言うが、女性はつばを飲み込むようにしてから首を振る。
息が苦しくて、うまく言葉が出てこないのだろう。
「助けてください! 上の階にまだ仲間がいるんですっ!」
女性は必死な表情で、やっとその言葉を口に出すことができた。
「獅子!」
険しい儀礼の声を聞く前に、獅子はすでに走り出していた。
その後をカナルが追う。
「この人のことは僕に任せて、ここに出てくる魔物位、一人でなんとかできるよ。シュリも上に行って。」
女性と儀礼を見て、動きに迷っていたシュリに儀礼は上へ行くことを勧める。
この2階部分の攻略は残すところこの部屋だけ。
それよりも、3階の敵に襲われているらしい女性の仲間のことの方が気がかりだった。
「わかった。任せたぞ!」
それだけ言うと、シュリも階段を駆け上がり、3階部分へと昇っていった。
「安心してください。彼らのうち2人はAランクで、もう1人は有名な『黒獅子』ですから。」
にっこりと微笑んで、儀礼が女性を安心させるように言う。
儀礼の言葉にほっとしたのか、女性は大きな息を吐き、ようやく微笑んだ。
ロームの遺跡、2階部分4部屋目。
「まずはここを安全にしないとね。」
そう言い放って、儀礼は地面や壁のトラップを解除していく。
途中、襲い来る魔物はミサイルと改造銃で黙らせておく。
それから、ついでとでも言うように、腕輪の石を光らせて朝月に頼むと、儀礼は部屋中の魔法トラップを破壊してもらった。
さらに後から窓から入ってくる魔物は改造銃で撃ち倒す。
そうして、少し広めの部屋だが、朝月の結界を張ってしまえば、魔物の入り込めない安全な領域の確保だ。
魔力を多く使うために疲れるが、非常事態なので仕方がない。
しばらくすると、獅子達3人に連れられて、冒険者らしい男たちが3人、階段を下りてきた。
一人は腕に、一人は足に、深い傷を負っている。
「上の敵は大体倒した。とりあえず、この3人を下ろすために戻ってきたが――。」
「替わって。応急手当しかできませんが。」
男に肩を貸していた獅子との間に割り込むようにして儀礼が入り込む。
「傷の処置をします。少し痺れますが、5分で切れるんで安心してください。」
そう言って、儀礼は一番傷の深い男の首に左手の指輪の針を刺す。
チクリとすれば、男がその場に崩れ落ちる。
それを床に寝かせて、儀礼は男の腕の傷に消毒液をかけ、裂傷を縫っていく。
素早く処置を終わらせると、今度はもう一人の重傷者の腕に指輪の針を刺し、足の傷口を縫っていく。
その手際の良さに、冒険者達は目を見張っている。
シュリやカナルまでが驚いていた。
見慣れている獅子はいつものことと、平然としているが。
いつも縫われているのは獅子だったが。
最後の一人も、傷は軽いが一応、消毒と傷薬を塗り治療しておく。
「もしかして、お医者様ですか?」
儀礼の白衣を見て、納得したように女性が問いかける。
「いえ、ただの研究者です。」
にっこりと笑って儀礼は答える。
その瞬間に、辺りの空気がふっと和らいだように暖かくなり、助けられた冒険者たちがそれぞれ頬を赤く染めた。
5分が経ち、二人の男が動けるようになれば、さらに安心したように女性は微笑んだ。
「危ないところを助けていただき、本当にありがとうございました。私達はBランクのパーティです。一昨日の昼間にこのロームの遺跡に入って、2泊したんですが、4階まで上がったところ、急に魔物が強くなって。見てのとおり、2人が深手を追って、撤退するところでした。」
「俺達は動けないから、ハートリーに助けを呼びに行って貰ったんだ。」
足を怪我した男が言う。
「外に出れば、転移陣があるでしょう。あれで、どこかのギルドに入って助けを呼ぶつもりだったの。」
ハートリーと呼ばれた女性が言う。
その前に、ハートリーは魔獣に襲われ、絶体絶命のところで、運良く獅子達と出会えたというわけだ。
「そんなに急に魔物が強くなったの?」
Bランクのパーティと言う4人組。決して弱そうには見えない。
普段のロームの遺跡ならば、難なく攻略できていたことだろう。
「はい。4階に昇った途端に、魔物の強さが急に変わりました。この分だと、噂の魔物召喚トラップのある最上階にはさらに強い魔物がいるのではないかと思われます。」
ハートリーが不安そうに瞳を揺らす。
儀礼達の心配をしてくれているようだった。
「僕らも、無理せず行ける所まで行って戻ってくるよ。時間もあと1泊分残ってるし。」
にっこりと笑う儀礼に、ハートリーは安心したようだった。
その儀礼の笑みを見て、獅子達3人は思う。
(((お前、帰るつもりなんて、最初っからないだろう)))と。
儀礼はもちろん、その最上階の魔法トラップを壊すことを目的でこの遺跡にやってきたのだ。
獅子の姿を認めると、女性は叫ぶような声で助けを求める。
言われるまでもなく、獅子は女性を襲っている魔獣を切り伏せた。
「はっ、はっ、あ、ありがとうございます。」
荒い息と、震える声で女性は獅子に礼を言った。
「怪我してるね。応急処置しかできないけど。」
言いながら、儀礼は女性に近付き、傷口を洗い流して薬を塗る。
「あ、あのっ!」
それでも、その手当てに抗うように暴れながら、女性は獅子達に向かって何かを言おうとする。
「大丈夫だよ。もう魔獣はいないし。」
儀礼が安心させるように言うが、女性はつばを飲み込むようにしてから首を振る。
息が苦しくて、うまく言葉が出てこないのだろう。
「助けてください! 上の階にまだ仲間がいるんですっ!」
女性は必死な表情で、やっとその言葉を口に出すことができた。
「獅子!」
険しい儀礼の声を聞く前に、獅子はすでに走り出していた。
その後をカナルが追う。
「この人のことは僕に任せて、ここに出てくる魔物位、一人でなんとかできるよ。シュリも上に行って。」
女性と儀礼を見て、動きに迷っていたシュリに儀礼は上へ行くことを勧める。
この2階部分の攻略は残すところこの部屋だけ。
それよりも、3階の敵に襲われているらしい女性の仲間のことの方が気がかりだった。
「わかった。任せたぞ!」
それだけ言うと、シュリも階段を駆け上がり、3階部分へと昇っていった。
「安心してください。彼らのうち2人はAランクで、もう1人は有名な『黒獅子』ですから。」
にっこりと微笑んで、儀礼が女性を安心させるように言う。
儀礼の言葉にほっとしたのか、女性は大きな息を吐き、ようやく微笑んだ。
ロームの遺跡、2階部分4部屋目。
「まずはここを安全にしないとね。」
そう言い放って、儀礼は地面や壁のトラップを解除していく。
途中、襲い来る魔物はミサイルと改造銃で黙らせておく。
それから、ついでとでも言うように、腕輪の石を光らせて朝月に頼むと、儀礼は部屋中の魔法トラップを破壊してもらった。
さらに後から窓から入ってくる魔物は改造銃で撃ち倒す。
そうして、少し広めの部屋だが、朝月の結界を張ってしまえば、魔物の入り込めない安全な領域の確保だ。
魔力を多く使うために疲れるが、非常事態なので仕方がない。
しばらくすると、獅子達3人に連れられて、冒険者らしい男たちが3人、階段を下りてきた。
一人は腕に、一人は足に、深い傷を負っている。
「上の敵は大体倒した。とりあえず、この3人を下ろすために戻ってきたが――。」
「替わって。応急手当しかできませんが。」
男に肩を貸していた獅子との間に割り込むようにして儀礼が入り込む。
「傷の処置をします。少し痺れますが、5分で切れるんで安心してください。」
そう言って、儀礼は一番傷の深い男の首に左手の指輪の針を刺す。
チクリとすれば、男がその場に崩れ落ちる。
それを床に寝かせて、儀礼は男の腕の傷に消毒液をかけ、裂傷を縫っていく。
素早く処置を終わらせると、今度はもう一人の重傷者の腕に指輪の針を刺し、足の傷口を縫っていく。
その手際の良さに、冒険者達は目を見張っている。
シュリやカナルまでが驚いていた。
見慣れている獅子はいつものことと、平然としているが。
いつも縫われているのは獅子だったが。
最後の一人も、傷は軽いが一応、消毒と傷薬を塗り治療しておく。
「もしかして、お医者様ですか?」
儀礼の白衣を見て、納得したように女性が問いかける。
「いえ、ただの研究者です。」
にっこりと笑って儀礼は答える。
その瞬間に、辺りの空気がふっと和らいだように暖かくなり、助けられた冒険者たちがそれぞれ頬を赤く染めた。
5分が経ち、二人の男が動けるようになれば、さらに安心したように女性は微笑んだ。
「危ないところを助けていただき、本当にありがとうございました。私達はBランクのパーティです。一昨日の昼間にこのロームの遺跡に入って、2泊したんですが、4階まで上がったところ、急に魔物が強くなって。見てのとおり、2人が深手を追って、撤退するところでした。」
「俺達は動けないから、ハートリーに助けを呼びに行って貰ったんだ。」
足を怪我した男が言う。
「外に出れば、転移陣があるでしょう。あれで、どこかのギルドに入って助けを呼ぶつもりだったの。」
ハートリーと呼ばれた女性が言う。
その前に、ハートリーは魔獣に襲われ、絶体絶命のところで、運良く獅子達と出会えたというわけだ。
「そんなに急に魔物が強くなったの?」
Bランクのパーティと言う4人組。決して弱そうには見えない。
普段のロームの遺跡ならば、難なく攻略できていたことだろう。
「はい。4階に昇った途端に、魔物の強さが急に変わりました。この分だと、噂の魔物召喚トラップのある最上階にはさらに強い魔物がいるのではないかと思われます。」
ハートリーが不安そうに瞳を揺らす。
儀礼達の心配をしてくれているようだった。
「僕らも、無理せず行ける所まで行って戻ってくるよ。時間もあと1泊分残ってるし。」
にっこりと笑う儀礼に、ハートリーは安心したようだった。
その儀礼の笑みを見て、獅子達3人は思う。
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