ギレイの旅
ロームの遺跡1階1
ロームの遺跡は円錐形の塔の形をしている。
遺跡の中はほぼ一方通行で、1階は5部屋、2階は4部屋、というように、上の階に昇るほど部屋数が段々と減っていく。
最上階の5階は1部屋しかない。
塔の中央に螺旋系の階段があり、その階段以外に上に昇って行く方法はない。
外壁には特殊な加工がされていて、無理やり登ろうとする者をはじき落としてしまう。
儀礼達はまず、1階の1部屋目に入ったのだ。
「魔物が多いな。」
一体の魔物を切り伏せてシュリが呟いた。
入ってすぐからこれでは先が思いやられる。
塔の上階に上がれば、外へ逃げるという逃走手段がなくなるのだ。
休息を取るためには、その部屋にいる魔物を全て倒さなくてはならない。
「依頼書の内容通りだね。まぁ、トラップの解除は任せて。機械の方だけどね。」
次々と現れる魔物を、シュリ、獅子、カナルの3人で倒していく中、儀礼は一人、のんびりと床のトラップをいじくっていた。
のんびりと、しているように見えるが、儀礼はこれはこれで忙しい。
獅子が間違って発動させたトラップや、解除しなければ先に進めないトラップを戦いの邪魔にならないように効率よく解除していっているのだ。
儀礼の頭の中には、この遺跡のマップが入っている。
マップに印されてある魔法トラップの位置もしっかりと記憶しているので、儀礼はするすると先を進んでいるように見えて、まったくトラップに引っかからない。
「お前、魔法トラップの位置、分からないんだよなぁ?」
確認するようにシュリが聞く。
「うん。見えないものは分からないよ。でも、マップに印された物と、トラップが仕掛けられてそうな場所で、何もない場所ってのは分かるから。そこに魔法トラップが仕掛けられてるってことは分かってきた。」
儀礼は言う。
「実際、魔法トラップって、どういうものなの?」
首を傾げて儀礼は問う。
「どういうって……移転させられたり、魔物が飛び出してきたり、体の動きを封じたり、色々あるけど、基本は普通のトラップと変わらないぞ。」
シュリが魔物を切り払いながら答える。
「えーっと、そうじゃなくて。どういう風に仕掛けられてるのかなって。」
部屋の中のトラップを解除し終え、手の空いた儀礼は、ガン、ガン、と適当に間を空けながら3人の取りこぼした魔物を撃ち抜いていく。
「そうか、魔力探知してないから見えないのか。」
納得したように頷き、シュリは武器を片手に持ち替える。
そして、空いた方の手の平を近くの空間に向かってかざした。
黒い魔力がシュリの腕から放たれ、その何もなかった空間に、円形の魔法陣を出現させた。
黒く、宙に浮き出された縦型の魔法陣。複雑な紋様を描き出している。
「すごいっ!」
戦闘を忘れ、儀礼は黒い魔法陣に見入る。
「こらっ、戦闘中だ! 集中しろ!」
シュリが注意を促し、儀礼の背後の敵を屠る。
「トーラ。」
儀礼は一言呟いた。
それで、儀礼の身の安全は保証される。
薄い紫色の障壁によって。
「これは、どういう効果のトラップなの?」
宙に浮くトラップを興味深げに眺めて儀礼は聞く。
「今は無効化してるから、触っても大丈夫だけどな。本来なら、体の動きを鈍くする。」
「へぇ~!」
瞳を輝かせながら、儀礼はその魔法陣を見ている。
そして、その魔法陣をメモ用紙へと書き写し始めた。
のんびりとマイペースを貫く儀礼だが、残りの3人は戦闘、真っ最中である。
主に、先陣切って走り抜けていく獅子がまとめて多くの魔物を切り裂き、次いで、止まったまま次々に襲い来る魔獣を返り討ちにするのがカナル。
二人の攻撃から外れた、少数の魔物を拾うようにして、シュリが切り伏せている。
儀礼がいてもいなくても、この程度の敵が相手ならば、大して影響はないのだ。
むしろ、トラップを解除して、動ける範囲を増やした方が戦う3人のためになる。
いや、儀礼もたまには、トラップをいじって、魔物を行動不能に陥れたりはしている。
魔法トラップまで自在に操れるようになれれば、儀礼の戦法は大きく広がるのだが。
「これって、どうやって無効化してるの?」
黒い陣を見ながら、儀礼は問いかけるが、答えてくれるはずのシュリは大分忙しそうだ。
仕方なく、儀礼は戦闘を援護する。
周囲を飛び交っていた虫のような大量の魔物に狙いを定め、聖水効果のあるミサイルを撃ち放つ。
ミサイルは白い煙りを上げて部屋の中を飛び回る。
ポトポトと、攻撃範囲から逃れていた小さな魔虫が地面へと落ちる。
麻痺効果の針を持っているために、避けるのが面倒になっていた敵だ。
戦闘力はあるが、攻撃範囲が広く、細やかな動作に向かない3人には、動きにくくなる敵だった。
「で、シュリ。これって、どうやってトラップを無効化してるの?」
動きに余裕の出てきたシュリに再度儀礼は聞いてみる。
「魔法の無効化より、今のお前の攻撃が何だよ!?」
カナルが怒鳴るようにして儀礼に聞いた。
白い煙を3人とも被ったのだが、魔物を倒した攻撃にしては、何のダメージも感じていない。
「聖水を霧状化してかけただけだよ。」
なんでもないこととして、儀礼は言う。
事実、それにすでに慣れている獅子は、何事もなかった様にして残りの魔物と戦っている。
「聖水!?」
驚いたようにカナルが声を上げる。
確かに、部屋の中の空気が、清浄化されている気がした。
淀んでいた魔力がなくなって、体が軽く動きやすくなったのだった。
遺跡の中はほぼ一方通行で、1階は5部屋、2階は4部屋、というように、上の階に昇るほど部屋数が段々と減っていく。
最上階の5階は1部屋しかない。
塔の中央に螺旋系の階段があり、その階段以外に上に昇って行く方法はない。
外壁には特殊な加工がされていて、無理やり登ろうとする者をはじき落としてしまう。
儀礼達はまず、1階の1部屋目に入ったのだ。
「魔物が多いな。」
一体の魔物を切り伏せてシュリが呟いた。
入ってすぐからこれでは先が思いやられる。
塔の上階に上がれば、外へ逃げるという逃走手段がなくなるのだ。
休息を取るためには、その部屋にいる魔物を全て倒さなくてはならない。
「依頼書の内容通りだね。まぁ、トラップの解除は任せて。機械の方だけどね。」
次々と現れる魔物を、シュリ、獅子、カナルの3人で倒していく中、儀礼は一人、のんびりと床のトラップをいじくっていた。
のんびりと、しているように見えるが、儀礼はこれはこれで忙しい。
獅子が間違って発動させたトラップや、解除しなければ先に進めないトラップを戦いの邪魔にならないように効率よく解除していっているのだ。
儀礼の頭の中には、この遺跡のマップが入っている。
マップに印されてある魔法トラップの位置もしっかりと記憶しているので、儀礼はするすると先を進んでいるように見えて、まったくトラップに引っかからない。
「お前、魔法トラップの位置、分からないんだよなぁ?」
確認するようにシュリが聞く。
「うん。見えないものは分からないよ。でも、マップに印された物と、トラップが仕掛けられてそうな場所で、何もない場所ってのは分かるから。そこに魔法トラップが仕掛けられてるってことは分かってきた。」
儀礼は言う。
「実際、魔法トラップって、どういうものなの?」
首を傾げて儀礼は問う。
「どういうって……移転させられたり、魔物が飛び出してきたり、体の動きを封じたり、色々あるけど、基本は普通のトラップと変わらないぞ。」
シュリが魔物を切り払いながら答える。
「えーっと、そうじゃなくて。どういう風に仕掛けられてるのかなって。」
部屋の中のトラップを解除し終え、手の空いた儀礼は、ガン、ガン、と適当に間を空けながら3人の取りこぼした魔物を撃ち抜いていく。
「そうか、魔力探知してないから見えないのか。」
納得したように頷き、シュリは武器を片手に持ち替える。
そして、空いた方の手の平を近くの空間に向かってかざした。
黒い魔力がシュリの腕から放たれ、その何もなかった空間に、円形の魔法陣を出現させた。
黒く、宙に浮き出された縦型の魔法陣。複雑な紋様を描き出している。
「すごいっ!」
戦闘を忘れ、儀礼は黒い魔法陣に見入る。
「こらっ、戦闘中だ! 集中しろ!」
シュリが注意を促し、儀礼の背後の敵を屠る。
「トーラ。」
儀礼は一言呟いた。
それで、儀礼の身の安全は保証される。
薄い紫色の障壁によって。
「これは、どういう効果のトラップなの?」
宙に浮くトラップを興味深げに眺めて儀礼は聞く。
「今は無効化してるから、触っても大丈夫だけどな。本来なら、体の動きを鈍くする。」
「へぇ~!」
瞳を輝かせながら、儀礼はその魔法陣を見ている。
そして、その魔法陣をメモ用紙へと書き写し始めた。
のんびりとマイペースを貫く儀礼だが、残りの3人は戦闘、真っ最中である。
主に、先陣切って走り抜けていく獅子がまとめて多くの魔物を切り裂き、次いで、止まったまま次々に襲い来る魔獣を返り討ちにするのがカナル。
二人の攻撃から外れた、少数の魔物を拾うようにして、シュリが切り伏せている。
儀礼がいてもいなくても、この程度の敵が相手ならば、大して影響はないのだ。
むしろ、トラップを解除して、動ける範囲を増やした方が戦う3人のためになる。
いや、儀礼もたまには、トラップをいじって、魔物を行動不能に陥れたりはしている。
魔法トラップまで自在に操れるようになれれば、儀礼の戦法は大きく広がるのだが。
「これって、どうやって無効化してるの?」
黒い陣を見ながら、儀礼は問いかけるが、答えてくれるはずのシュリは大分忙しそうだ。
仕方なく、儀礼は戦闘を援護する。
周囲を飛び交っていた虫のような大量の魔物に狙いを定め、聖水効果のあるミサイルを撃ち放つ。
ミサイルは白い煙りを上げて部屋の中を飛び回る。
ポトポトと、攻撃範囲から逃れていた小さな魔虫が地面へと落ちる。
麻痺効果の針を持っているために、避けるのが面倒になっていた敵だ。
戦闘力はあるが、攻撃範囲が広く、細やかな動作に向かない3人には、動きにくくなる敵だった。
「で、シュリ。これって、どうやってトラップを無効化してるの?」
動きに余裕の出てきたシュリに再度儀礼は聞いてみる。
「魔法の無効化より、今のお前の攻撃が何だよ!?」
カナルが怒鳴るようにして儀礼に聞いた。
白い煙を3人とも被ったのだが、魔物を倒した攻撃にしては、何のダメージも感じていない。
「聖水を霧状化してかけただけだよ。」
なんでもないこととして、儀礼は言う。
事実、それにすでに慣れている獅子は、何事もなかった様にして残りの魔物と戦っている。
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