ギレイの旅
グラハラアのギルド
グラハラアの国のとある冒険者ギルドに一人の男が入ってきた。
身長は180cmに近く、体の幅は扉を塞ぎそうな程に大きい。
この男はこの体格でまだ15歳の少年だった。
この辺りでは名の知れている冒険者、カナル・ノーグと言う、大槌を操る戦士だ。
その後ろから入ってきたのは同じくらい背丈のある少年で、しかし体はカナルに比べると細身に見えるが、かなり引き締まった筋肉を纏っているのがわかる。
黒髪に黒い瞳。背中に装備された白い剣は間違いなく光の剣。
だとすればこの少年は噂の『黒獅子』に他ならない。
黒獅子の後からギルドに入ってきたのは二人よりは小柄な体だが、しっかりと体の引き締まった少年。
彼もここでは名の知れた冒険者だ。
バクラム・ノーグの長男で、カナルの兄であるシュリ・ノーグ。
最近手に入れた強い武器と鎧のお陰で実力が急浮上中だ。
そのシュリの背後からさらに一回り小さくしたような少女が一人、ギルドの中へと入り込む。
場違いに感じるような研究職を示す真っ白な白衣。
耳にかかるような長さの輝くような金髪に、美しい整った顔立ち。
ギルド中の視線が一瞬、少女に集中した。
少女は戸惑ったように色付きの眼鏡を目深くかけて表情を隠す。
「今日はどうしたんだ? 可愛いお嬢さんを連れて。」
ギルドのマスターがカナルへと問いかける。
馴染みであるように気安い感じだった。
「遺跡に行こうと思ってな。いい依頼はあるか? できればBランク以上の。」
カナルが答える。
「Bランクだって? まさか、そこのお嬢さんも行くのか?」
心配するようにマスターは眉をしかめた。
もう慣れた、いつもの反応に儀礼はため息を吐き、獅子とカナルはケラケラと笑う。
「マスター、こいつ男だよ。」
カナルがギルド中の冒険者たちの勘違いを払拭する。
「はあ?! 男?」
マスターはすっとんきょうな声を上げた。
儀礼はふてくされたように唇を尖らせて眼鏡をより深く掛け直す。
「それなら……尚更、そんな弱そうな子供、遺跡に入れるわけにはいかないだろう。」
当然と言わんばかりに、マスターはカナルを説得する。
Bランクの遺跡に入る条件は、冒険者ランクのBが必要になる。
「パーティランクはBだ。」
獅子が、儀礼とのパーティライセンスを示す。
その記されたBランクの文字に、しぶしぶと納得したようにマスターは遺跡の依頼を探し始める。
「なあ。思ったんだけど……。」
遠慮がちに、声を小さくしてシュリが儀礼の耳へと囁く。
「お前の管理局ライセンス見せれば話が早いんじゃないか? と言うか、どうしてこいつら誰も気付かないんだ?」
ギルド中の連中が、儀礼のことをカナルや黒獅子たちのお荷物だと言う目で儀礼のことを見ている。
その刺さるような視線は中々に痛い。
「バクラムの長男」、「カナルの兄」、そう見られていた間のシュリも似たような経験がある。
小さな体のせいで、随分実力を軽んじて見られていた。
「じゃあ、『蜃気楼』って言ったら、どういうイメージ?」
首を小さく傾げて、儀礼も小声でシュリに返す。
「『蜃気楼』? そうだな、金髪に、茶色の瞳に、白い衣、色付き眼鏡だろ。」
見たままの儀礼の姿を言い指して、シュリは答える。
「それじゃあ、管理局のSランクって言ったら、どんなイメージ?」
いたずらをするような、ニッとした笑みで儀礼は問いかける。
「管理局のSランク……。」
シュリは頭の中にSランクと言われる人物たちを思い浮かべる。
「よぼよぼのじいさん、ばあさんだな。」
苦い笑いのようなものを浮かべてシュリは答えた。
「そう。管理局のSランクなんて、そんなイメージなんだよ。だから、僕に結び付くのは難しいんだ。僕の前の最年少Sランクの記録って知ってる? 52歳だよ。僕の15歳って情報は51の間違いじゃないかって言われてるくらい。」
くすくすとおかしそうに儀礼は笑う。
「でも、Sランクなら、対応が変わってくるんじゃないか?」
周りの、とシュリは言う。
お荷物として蔑まれるよりも、尊重され、敬われるのが本来の『蜃気楼』の立場だ。
「命狙われる確率のが高いから。」
肩をすくめて、何でもないことのように儀礼は言う。
命を狙われる。その言葉は、シュリには重たいものだった。
「魔物は多くてもいいから、魔法トラップの少ない所ありますか? 機械トラップは問題ないので。」
儀礼がカナルとマスターのやり取りに口を挟む。
その様子はまだ見ぬ遺跡にわくわくと瞳を輝かせているただの子供だ。
「しかし、Bランクで魔物が多かったら、機械トラップなんて解除してる暇ないぞ?」
眉間にシワを寄せて難しい顔でマスターは言う。
「掛かりませんから。」
にっこりと儀礼は笑う。
その笑みには余裕が伺える。
「それに、掛かったとしてもこの3人が居れば何とでもなります。トラップの解除は得意なんですよ。」
儀礼が微笑みながら言えば、マスターはタジタジと後ろへと身を引いた。
「ラーシャちゃんの友達かい?」
声を潜めマスターはカナルへと聞く。
「いや、まあ、友達だけど俺らとも友達だって。男だって言っただろ。」
まだ儀礼が少女であると疑ってかかるマスターに、呆れるカナル。
確かに、顔立ちは可愛らしいのだが、この少年、やることが突飛すぎる。
カナルの父親バクラムや、最強と言われる冒険者のアーデス達が一目置く存在だ。
少し、一緒に過ごせばわかる。
この少年の中には、普通でないものが詰め込まれているのだ。
身長は180cmに近く、体の幅は扉を塞ぎそうな程に大きい。
この男はこの体格でまだ15歳の少年だった。
この辺りでは名の知れている冒険者、カナル・ノーグと言う、大槌を操る戦士だ。
その後ろから入ってきたのは同じくらい背丈のある少年で、しかし体はカナルに比べると細身に見えるが、かなり引き締まった筋肉を纏っているのがわかる。
黒髪に黒い瞳。背中に装備された白い剣は間違いなく光の剣。
だとすればこの少年は噂の『黒獅子』に他ならない。
黒獅子の後からギルドに入ってきたのは二人よりは小柄な体だが、しっかりと体の引き締まった少年。
彼もここでは名の知れた冒険者だ。
バクラム・ノーグの長男で、カナルの兄であるシュリ・ノーグ。
最近手に入れた強い武器と鎧のお陰で実力が急浮上中だ。
そのシュリの背後からさらに一回り小さくしたような少女が一人、ギルドの中へと入り込む。
場違いに感じるような研究職を示す真っ白な白衣。
耳にかかるような長さの輝くような金髪に、美しい整った顔立ち。
ギルド中の視線が一瞬、少女に集中した。
少女は戸惑ったように色付きの眼鏡を目深くかけて表情を隠す。
「今日はどうしたんだ? 可愛いお嬢さんを連れて。」
ギルドのマスターがカナルへと問いかける。
馴染みであるように気安い感じだった。
「遺跡に行こうと思ってな。いい依頼はあるか? できればBランク以上の。」
カナルが答える。
「Bランクだって? まさか、そこのお嬢さんも行くのか?」
心配するようにマスターは眉をしかめた。
もう慣れた、いつもの反応に儀礼はため息を吐き、獅子とカナルはケラケラと笑う。
「マスター、こいつ男だよ。」
カナルがギルド中の冒険者たちの勘違いを払拭する。
「はあ?! 男?」
マスターはすっとんきょうな声を上げた。
儀礼はふてくされたように唇を尖らせて眼鏡をより深く掛け直す。
「それなら……尚更、そんな弱そうな子供、遺跡に入れるわけにはいかないだろう。」
当然と言わんばかりに、マスターはカナルを説得する。
Bランクの遺跡に入る条件は、冒険者ランクのBが必要になる。
「パーティランクはBだ。」
獅子が、儀礼とのパーティライセンスを示す。
その記されたBランクの文字に、しぶしぶと納得したようにマスターは遺跡の依頼を探し始める。
「なあ。思ったんだけど……。」
遠慮がちに、声を小さくしてシュリが儀礼の耳へと囁く。
「お前の管理局ライセンス見せれば話が早いんじゃないか? と言うか、どうしてこいつら誰も気付かないんだ?」
ギルド中の連中が、儀礼のことをカナルや黒獅子たちのお荷物だと言う目で儀礼のことを見ている。
その刺さるような視線は中々に痛い。
「バクラムの長男」、「カナルの兄」、そう見られていた間のシュリも似たような経験がある。
小さな体のせいで、随分実力を軽んじて見られていた。
「じゃあ、『蜃気楼』って言ったら、どういうイメージ?」
首を小さく傾げて、儀礼も小声でシュリに返す。
「『蜃気楼』? そうだな、金髪に、茶色の瞳に、白い衣、色付き眼鏡だろ。」
見たままの儀礼の姿を言い指して、シュリは答える。
「それじゃあ、管理局のSランクって言ったら、どんなイメージ?」
いたずらをするような、ニッとした笑みで儀礼は問いかける。
「管理局のSランク……。」
シュリは頭の中にSランクと言われる人物たちを思い浮かべる。
「よぼよぼのじいさん、ばあさんだな。」
苦い笑いのようなものを浮かべてシュリは答えた。
「そう。管理局のSランクなんて、そんなイメージなんだよ。だから、僕に結び付くのは難しいんだ。僕の前の最年少Sランクの記録って知ってる? 52歳だよ。僕の15歳って情報は51の間違いじゃないかって言われてるくらい。」
くすくすとおかしそうに儀礼は笑う。
「でも、Sランクなら、対応が変わってくるんじゃないか?」
周りの、とシュリは言う。
お荷物として蔑まれるよりも、尊重され、敬われるのが本来の『蜃気楼』の立場だ。
「命狙われる確率のが高いから。」
肩をすくめて、何でもないことのように儀礼は言う。
命を狙われる。その言葉は、シュリには重たいものだった。
「魔物は多くてもいいから、魔法トラップの少ない所ありますか? 機械トラップは問題ないので。」
儀礼がカナルとマスターのやり取りに口を挟む。
その様子はまだ見ぬ遺跡にわくわくと瞳を輝かせているただの子供だ。
「しかし、Bランクで魔物が多かったら、機械トラップなんて解除してる暇ないぞ?」
眉間にシワを寄せて難しい顔でマスターは言う。
「掛かりませんから。」
にっこりと儀礼は笑う。
その笑みには余裕が伺える。
「それに、掛かったとしてもこの3人が居れば何とでもなります。トラップの解除は得意なんですよ。」
儀礼が微笑みながら言えば、マスターはタジタジと後ろへと身を引いた。
「ラーシャちゃんの友達かい?」
声を潜めマスターはカナルへと聞く。
「いや、まあ、友達だけど俺らとも友達だって。男だって言っただろ。」
まだ儀礼が少女であると疑ってかかるマスターに、呆れるカナル。
確かに、顔立ちは可愛らしいのだが、この少年、やることが突飛すぎる。
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